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小野伸二さんを支えたトレーナー

  • 2023年12月15日

やる気!元気!渡邉美希です。今回は、元日本代表で、北海道コンサドーレ札幌で現役を引退した小野伸二さんについてです。今月3日のJ1最終戦が現役最後の試合となりました。

今シーズンで現役を引退した小野伸二さん。最後のプレーでは、笑顔を見せて小野さんがこれまで言ってきたサッカーを楽しむ姿がありました。その小野さんの体のケアを担当し、最も近くで支え続けたひとりがトレーナーの佐川和寛さんです。試合や練習では決して見せなかった姿に向き合い、ともに最終戦を迎えました。

佐川和寛さんがトレーナーを志したのは、高校生の時。高校時代に野球をしていましたが、ヘルニアのため1年間リハビリを行いました。その際に出会ったトレーナーの方に憧れて、同じ道を目指すようになったといいます。

佐川さん
「先が見えない状況で気持ち的にも落ちてしまっていて、その中でも寄り添ってくれて、1つの明るい兆しを見せてくれた。すごさを感じて自分もこんな人になりたいと思いました」

トレーナーを志した佐川さんは、専門学校を卒業後、目標にしていたトレーナーが務めていたセレッソ大阪で一緒に働き始めました。自身がトレーナーに支えてもらったように、佐川さんは「選手に寄り添い 選手のために一生懸命支える」。そんなトレーナーを目指したといいます。

コンサドーレに入ったのは2002年。小野さんの体のケアは2014年、小野さんの1回目のクラブ加入時から担当してきました。当時の小野さんについて佐川さんは。

佐川さん
「最初は大きなけがはほとんど抱えておらず、コンサドーレでは、スタメンで出ていた時もありました。最初は本当に順調でしたが、そのあとにちょっとけがが積み重なってしまいました」

小野さんは、ことし9月27日。44歳の誕生日に引退を表明しました。

しかし、佐川さんにはそれよりも前に引退を覚悟した瞬間があったといいます。
それは、ことし6月の天皇杯2回戦。札幌厚別公園競技場で行われた試合で、小野さんの今シーズン初の公式戦出場でした。

佐川さん
「正直ピッチに立てる状況ではありませんでした。(試合の後)伸二が『佐川さん、ちょっと厳しいっすわ』と一言で。自分の中でちょっと(引退を)察してはいたんですよね」

悩ませてきた左足首のけが

小野さんを悩ませ続けたのは、左足首のけがです。小野さんは痛みを抱え続け、ことし2月に手術を受ける決断をしました。

佐川さん
「熊本キャンプに入ってから急激に悪くなった。もともと痛みはありましたが、急激でした。痛みが消えるような感じはなく、自分の感覚的にはやばいなと。少しでも痛みが取れるのであればということで、手術に踏み切った。左足首の軟骨といって関節のクッションになるようなものがありますが、それがすり減ってなくなってしまう。クッションがないので骨同士が歩くたびに“ガンガンガン”と。正直この手術でだめだったら引退するよという感じで受け取っていました」

しかし、手術後も小野さんの左足首の痛みは消えることはなく、プレーに影響し続けました。

佐川さん
「日常生活でも痛みがありますし、毎回練習前も痛み止めの薬をドクターから処方してもらって毎日飲んでいるんですよ。本当に寄り添ってあげるしかないなと」

引退表明後、小野さんは練習でけがのそぶりは見せず、笑顔でピッチに立っていました。
佐川さんは小野選手の状態を常に見て、最終戦のピッチに立てるように寄り添って体のケアに最善を尽くしました。

小野さん
「足の状態はどうだと、必ず聞いてくださってそれに対して痛みがあれば痛み止めをくれたりとか、練習前に必ずいちばん最初に相談にきてくれました」

そして、迎えたJ1最終戦。
小野さんは今シーズン初めて先発で出場し、現役最後のピッチで、全力でプレーしました。小野さんらしい巧みなパスで見せ場も作りました。

そして、試合後に行われた引退会見では、小野さんは佐川さんへの思いも話しました。

引退会見で語ったのは

小野さん
「(クラブに)入った当初から自分の足のことも含めて、いろいろなことを気遣ってくれて、最後の最後でちゃんとピッチに立つ状況を作ってくれたので、本当に今までの苦労も含めて大きく感謝しています」

佐川さん
「僕の方がベンチで緊張して見ていたのですが、特に大きなけがもなく終えることができたので、本当に良かったです。『ありがとう』と言ってくれたので、本当にうれしかった。『お疲れ様でした』と、その一言ですね」

試合後、佐川さんの柔らかく安堵した表情が印象的でした。
取材中、私にも寄り添ってコミュニケーションをとっていただき、ありがとうございました。

引退後の取材で語ったのは

引退後、現役を終えた小野伸二さんにインタビューする機会がありました。

選手生活では、けがを抱える日々が多かった小野さんですが、“サッカーが好き”という原動力のもと、チームのために変わらず思い続けたことがあったといいます。

小野さん
「チームがいい状態で試合に臨めるように、みんなで必死にトレーニングをする中で、自分は試合に出られないとわかっている中で、自分の役割としてはみんなを励ましながら言い準備ができるようにとやっていました」

小野さんが話したように、練習中は、先頭に立ってトレーニングに参加するだけでなく、チームメートに駆け寄ってアドバイスをする姿や、指導者や選手と意見交換する姿が多く見られました。選手に話を聞くと、「伸二さんはベテランだからといって、決して威厳を漂わせることはなく、誰にでも平等に接してくれて、成長につながる意見をくれた」と感謝の思いを話していました。

人々を魅了するプレーを見せ、コンサドーレにも大きな影響をもたらした小野さん。
選手としてはチームを退きましたが、今後どのようにサッカー界や北海道に関わっていくのか、注目です。

(インタビューの最後に、北海道の一番好きなところを聞くと、答えは“人の温かさ”でした。)

小野さん、26年のプロ生活 お疲れ様でした。

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