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「ふるさとでメガホンを」~えりも岬の緑化事業を描く~

  • 2023年6月28日

「いつか北海道で撮影がしたいと思っていました」、そう笑いながら話すのは日高の浦河町出身の映画監督、田中光敏さん。現在、えりも町など4つの町と協力して、えりも岬の緑化事業をテーマにした映画の準備を進めています。ふるさとでメガホンを取る思いを取材しました。
(浦河支局 井坂美保子) 

地域を元気づける映画を

映画は、地域の活性化につなげようと、日高のえりも町、様似町、浦河町、それに十勝の広尾町の4つの町が企画しました。テーマはえりも岬の「緑化事業」。現在は緑が生い茂る岬ですが、明治の終わりから昭和初期にかけて燃料として使用するために伐採が進み、「えりも砂漠」と呼ばれるほどの荒野となっていました。このため、赤土が風に飛ばされて舞い上がり、海を茶色に染め、地元の漁業者の生活の糧である昆布に深刻な影響を及ぼしたのです。そこで、1953年(昭和28年)に漁師たちが中心となって始めたのが緑化事業でした。地道な植樹を行うなどして、徐々にえりも岬の緑はよみがえりました。この取り組みは今も引き継がれています。

メガホンは地元出身の監督に

この映画のメガホンを託されたのが、浦河町出身の田中光敏監督。2002年(平成14年)に公開された「化粧師」で監督デビューし、2013年(平成25年)の「利休にたずねよ」は、「モントリオール世界映画祭」で芸術性の高い作品に贈られる最優秀芸術貢献賞を受賞しました。俳優・三浦春馬さんの最後の主演映画となった2020年(令和2年)の「天外者」など、これまで多くの話題作を手がけてきましたが、北海道を舞台にした映画は今回が初めてです。田中監督は生まれ育った故郷での撮影に強い意欲を示していました。

田中監督
「やっぱり僕のふるさとは北海道の浦河だし、いつも映画を作る時って、高校までいた日高の風景が自分の中の風景の基本になっているというか、心の中にふるさと北海道っていうのはやっぱりあるんですよね。いつか北海道で映画を撮りたいっていう思いはありました」

映画製作に向け準備開始

2023年(令和5年)4月、田中監督の姿はふるさとの浦河町にありました。映画の準備の一環で日高地方の風景の撮影を始めたのです。この日は、見頃を迎えたおよそ3キロの桜並木をドローンを使って上空から撮影しました。今後も四季折々の北海道の姿を定期的に記録していくことにしています。

田中監督
「牧草が広がっていて、馬がいて、奥には雪をかぶった日高山脈があるっていうのは、不思議と心に残っている風景なんです。普段見られない、この日高や十勝の美しい風景を映画の中には入れていきたいなと思っています」

また、町の職員と意見交換をしたり、周辺の施設を巡ったりしながら、俳優を交えての撮影に向けた場所の選定も進めています。5月には、緑化事業の70周年を記念して行われた植樹祭にも参加しました。みずからも苗木を植えて、先人たちの苦労に思いをはせました。そして、集まったおよそ600人を前に、この取り組みを伝えていくことの大切さを訴えました。

田中監督
「森が豊かになれば海が豊かになる。そして、海が豊かになり、森が豊かになると、私たちの生活が豊かになる。そういうことを教えてくれた本当に大切な物語が、史実がこのえりもにあります」

クランクインは2024年に

6月、田中監督は4つの町の町長と記者会見を行い、年内を目指していたクランクインが2024年(令和6年)の夏以降になるとの見通しを明らかにしました。新型コロナウイルスの影響で、3億5000万円の製作費の調達などに時間がかかっていて、映画に関わるスタッフを受け入れるための準備が遅れているためです。ただ、多少時間がかかっても、いい環境で本格的な撮影を開始したいと説明しました。

田中監督
「スタッフは少なくとも100人になるかと思うので、その移動手段なども考えていく必要があります。自治体が中心となって映画作りに参加していることや、町の人たちが前向きにやってくれているのは珍しいと思うんですよね。それだけに、私としては万全の体制でクランクインしたいという思いがあります」

映画の公開は2025年(令和7年)を目指しています。ふるさとの人たちの大きな思いを背負っているだけにプレッシャーも感じているという田中監督。ただ、緑化事業への理解を深める中で、現代にも通じるメッセージがあると考えていて、作品に強い意欲と自信を見せています。

田中監督
「えりもの大地に植林をしている漁師たちがいた。今日見ると、本当に緑がよみがえって美しい大地になっていて、どんなに小さな力であっても1つ1つたくさんの力を合わせて続けていけば、それは奇跡というか、必ず叶うこと。胸を張って、こんなに素晴らしい人たちが北海道にいたんだっていう生きざまが見える、そんな作品になると思っています。ぜひ、楽しみにお待ちください。よろしくお願いします」

2023年6月28日

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