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倶知安町が生んだ洋画家 小川原脩の世界

  • 2022年7月5日

こんにちは!「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」道央担当リポーターの坂井里紗です。7月に入り、ことしも半分が過ぎてしまいました。2022年後半も暑さやコロナに負けず、楽しいおいしい情報をたくさんお届けします♪みなさんも暑い日が続いていますが、健康に気を付けてお過ごしくださいね!

さて道央・胆振日高70市町村の魅力をお伝えする今回の「ななまるMAP」では、倶知安町に伺いました。みなさんは小川原脩という人物をご存知でしょうか。倶知安町で生まれ、91歳で亡くなるまでさまざまな作品を生みだした北海道を代表する洋画家です。ことしは小川原さんが亡くなって20年になります。倶知安町の「小川原脩記念美術館」ではその画業を知ってもらおうと、代表作などを集めた展覧会が開かれています。

小川原さんは明治44年に倶知安町で生まれ、今の東京藝術大学、当時の東京美術学校に進学して油彩画、西洋画を学びました。その後、終戦直前に倶知安に戻り、全道美術協会の創立に携わるなど道内の美術文化の発展をけん引しました。

没後20年に合わせて企画した展覧会「私の中の原風景」では、小川原さんが昭和6年から平成4年にかけて描いた25点の作品を展示しています。大胆な色使いで描いたニセコアンヌプリや晩年にアジアを旅した時に見たチベットの風景をモチーフにした作品などを見ることができます。

小川原さんはどのような画家だったのか、学芸員の沼田絵美さんに伺いました。

小川原脩記念美術館 学芸員 沼田絵美さん
「『君、いま絵を描いているか?』と訪ねてくるなど、師弟関係というよりは一緒に絵を描く仲間としてフラットに接する画家だったようです。また、70年の画業の間、10年足らずで作風を変えていっています。自分自身の絵をまねした絵を描きたくない、常に新しいものを取り入れて自分の絵を描いていきたいという風に真剣に絵と向き合っていたことが分かります。世界のいろいろな絵の流行を敏感に取り入れながら絵を描いていました」

こちらは昭和8年、小川原さんが東京にいた時に制作した「納屋」です。この作品で学生ながら大きな公募展で入賞する快挙を成し遂げました。小川原さんが倶知安町に帰省した時に、近くの石倉倉庫で働くいとこをモデルに描きました。

小川原脩記念美術館 学芸員 沼田絵美さん
「この作品はフォービズム、当時、日本に入ってきた世界の芸術の流れのひとつに強く影響を受けていて、野太い線で描いたり、野菜の色鮮やかさ、白いシャツにも明るい水色が使われていたりと、豊かな色彩で描かれています。この力強い働く人の腕、この一歩踏み出した足、この姿勢が描けた時にこの絵は決まったと思ったそうです」

絵画を通して自分の心情を写し出した作品もあります。昭和52年に描いた「群れ」という作品です。ちょっと悲しげに見える手前の犬は小川原さんが「自分自身だ」と語っています。自分を取り巻く画家仲間や人間社会を自分と対比した集団として描いていると言います。

小川原脩記念美術館 学芸員 沼田絵美さん
「小川原脩はかつて戦争時代に戦争記録画を描くという経験をしていまして、そういった戦争への協力を戦後、画家仲間たちから責められる経験をしています。かつての仲間たち、そして今一人の自分、そういったものを犬の姿を借りて描いています。小川原脩は自分や周りの人たちを動物に置き換える作品をたくさん描いています」

小川原さんは終戦直前に故郷に戻り、2002年に91歳で亡くなるまで、倶知安町で創作を続けました。沼田さんはこの展覧会で小川原さんがたどった人生や画業を知ってほしいと話しています。

小川原脩記念美術館 学芸員 沼田絵美さん
「小川原脩の作品はそれぞれ時代によって画風も変わってくるんですけど、根底にはやはり倶知安の風景や倶知安の空気があります。ぜひ倶知安の風景と一緒に小川原脩の作品を楽しんでほしいなと思います」

倶知安町が生んだ偉大な画家、小川原脩。彼の画業を伝える作品展はきょう5日(火)午後6時40分からの「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」でお伝えする予定です。ぜひご覧ください♪

取材後記

小川原さんの作品には倶知安町や北海道を舞台に描かれた作品がたくさんあります。沼田さんは「東京に行って自分の強み、個性を出す時にはふるさとの風景や見てきたものを積極的に作品にしたようです」と話していました。小川原さんの作品は時代によって画風や描き方が変化しますが、どれも倶知安や北海道の自然の美しさや力強さを感じられました。
この展覧会は8月に作品を入れ替えて11月27日まで行われます。次はどんな画風の作品があるのか、再び足を運びたいと思いました。ぜひ、その時代の絵の流行を感じるのはもちろん、当時の小川原さんの心情を想像しながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。

道央いぶりDAYひだか
坂井里紗
2022年7月5日

前回紹介したのは千歳市の自然を撮影するフォトグラファー、吉田尚幸さんの写真展です。身近なところに広がる豊かな自然が写し出されていて、思わず自然を探しに外に出たくなりました。こちらも併せてどうぞ!
千歳市の豊かな自然を伝える写真展

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