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生成AIを考える 人はどう向き合う

  • 2023年9月20日

最近よく耳にする「生成AI」。インターネット上にある膨大なデータを学習し、人間の指示にしたがって自動で文章や画像などをつくり出す人工知能です。将来ますます身近な存在になりそうですが、一方で様々な問題も指摘されています。私たちはどう付き合っていけばいいのでしょうか。小学校の授業でAIに触れている子どもたちからそのヒントを探ります。

生成AIの授業

函館市にある市立万年橋小学校。6年生の教室をのぞいてみると、生成AIを使った授業が行われていました。この日の授業のテーマは「AIの良い点と悪い点」や「使用する場合」について考えること。子どもたちがモニタ-越しに見ていたのは、AIに「猫と花」など指示をして自動で描かれたものの、よく見ると「不自然なか所がある画像」です。さらに、子どもたちはよく知っているけれどAIに聞いてみるとあきらかに「間違い」がある回答も。

子どもたちからはさまざまな意見が出されました。

子どもたちの意見
「知らない知識や技術を教えてくれる」
「自分たちの職業や価値が奪われてしまう」
「わかりやすく大量の情報をくれるのでこれがないと生きていけないと思うくらい大事」
「便利だけど頼りすぎはよくない」
「どういう文章を送ったらいいかわからないときに相談したい」
「悪用する人がいる」 「支配されそうで怖い」 
「言葉だけで絵にするのって実際は難しい。新しい発想ももらえそう」

授業を行っているのは担任の藤原友和教諭。この日、授業の終盤で「あること」を明かしました。
実はこの日の授業の内容、藤原教諭が条件を入れて生成AIがつくったものだったのです。
藤原教諭は「すごく考えたという人、この生成型AIに考えさせられているかもしれない。
それって幸せ?」と呼びかけます。

さらに、子どもたちが出した意見を使って、AIにこの日の授業を評価してもらうと…。

AIの評価
「みなさんAIについてよく考えていて素晴らしいです。AIは便利なツールですが使い方によっては問題が起こる可能性もあります。AIに頼りすぎると人間の能力や個性が失われたり、間違った情報に惑わされたりするかもしれません。
AIは人間がつくったものですから、人間が責任を持って使わなければなりません。AIのメリットとデメリットを理解して自分の判断力や想像力を高めることが大切です。

きょうの学習の成果としては以下の点が挙げられます
・AIの機能や特徴について理解を得た
・AIの利点や欠点について自分の意見を述べた
・AIの社会的な影響や倫理的な問題について考えた
・AIと人間の関係や未来について創造した


これらのことはAI時代に必要な思考力や表現力を育むことにつながります。今後もAIに関する学習を続けて自分の考えを深めていって下さい。お疲れ様でした。」

「判断するのは人間なんだから。私も含めて皆さんも判断力を高めていく必要があるという授業でした」

生成AIに触れながら学びを深めてきた子どもたち。取り組んでいるのは、ことし6月に修学旅行で訪れた青森と地元函館を比較するレポートの作成です。

AIだけでは足りない

子どもだけでの使用が制限されている生成AI。事前に学校の授業で情報を得てから、テーマごとにレポートを書き始めました。子どもたちはどのように書き進めていったのでしょうか。

6年生の澤田朱莉さん。青森と函館の美術館の比較をテーマにレポートを制作しています。
事前にAIが教えてくれたのは美術館の場所や所蔵している作品などで、澤田さんは実際に美術館に足を運びました。

さらに休日に向かったのは市内の図書館です。函館の美術館で興味を持った道南の書道家、金子鴎亭について調べていました。「個性的な漢字を書いていていいなと思って。ここだともっと詳しく分かるかなと思って来た」という澤田さん。本を片手にメモをとっていきます。
そして自宅に帰ると早速、レポートにとりかかりました。

澤田さんは手軽に情報が得られる一方で、AIの力だけでは足りないと考えていました。

澤田朱莉さん
「作品の迫力が感じられるので実際に足を運んだ方がいいと思います。生成AIは原点というかやってみようってなる資料を届けてくれるからそこから自分で調べたりできる。AIは間違うこともあるので、基本的なことを教えてもらって自分たちで深く調べるといいと思います」

AIにできないこと

レポートの完成を間近に控えたこの日。
子どもたちは実際に足を運んで調べたことや書籍からの情報を引用しながら、作業に取りかかっていました。藤原教諭も児童がうまく書けない所などを一緒に考え、サポートします。

藤原友和 教諭
「あらかじめ子どものつまずきがわかっていて、それに最適な指導法がわかっていればAIが効率的に活用できると思うんです。ただ、人間が人間を見ているわけで、これまでこういうふうに生活してこういうふうに学習してきたな、今回これをやろうとしている、ここにちょっと何かつまずきがあるみたいだなってなったときに、こう教えてみようとか、あの友達と相談させてみようとかっていうのは、現段階ではやっぱり人間の仕事だろうなと思います」

こうして完成したレポート。100ページを超える大作で、函館と青森の美術館、縄文遺跡群や祭りなどを比較。子どもたちの感想もさまざまでした。

澤田さんはこのレポートがきっかけで、夏休みの自由研究に書道を選びました。実際に書くのは難しく書道家はすごいと改めて感じたそう。美術や書道など興味の幅が広がってレポートを書いてよかったと話していました。

澤田朱莉さん
「レポートにみんなの個性が出ていていいなって思いました。AIに書かせると個人の感想がなくなってしまうのでそれは人間がやった方がいい。人間が失敗してしまうような大変な危険な作業はAIにやってもらうといいと思います。
ただ、AIに支配されすぎると人間の居場所がなくなってしまうので人間も自ら行動するようにしないとAIに奪われちゃう」

レポートはAIだけでなく、グループに分けてクラスメイトと一緒に相談しながら書きました。こうしたなか、藤原教諭は人と人との関わりの中で成長する子どもたちの姿を見て、この環境はAIのようなバーチャルなものでは代用するのは難しいと感じていました。そして生成AIはあくまで「きっかけ」だとしていて、生の体験に勝るものはなく、そして興味が広がることや子どもたち自身の考えを大切にしてほしいと話します。

藤原友和 教諭
「心が動いて書いたものっていうのは生成AIが書いたものに全く引けを取らないというかむしろ凌駕しているなという気がしました。生成AIの限界やリスクも踏まえて判断したうえで使うという、将来使い始めたときの判断の基準となる経験をいま子どもたちは体験しているんだろうと思います。
生成AIのように新しいテクノロジーがどんどん出てくるなかで、どう使っていいかわからないものをどう使えば自分が幸せになれるのかという価値観を育てていってほしいです」

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