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Do!|#05 Han Gakuto

  • 2022年10月31日

なぜその番組を作ったのか?コンテンツに込めたメッセージとは?NHK北海道の職員、作り手たちの情熱や想いに迫るインタビューシリーズ「Do!」 第5回では、ほっかいどうが「立候補の理由、教えてください」を担当した班ディレクターに話を聞きました。 

〔Photo By 出羽 遼介〕 
〔聞き手 富浦 麻穂(NHK札幌拠点放送局 広報)〕
 ※感染対策を十分にとったうえで撮影しています

■ほっかいどうが「立候補の理由、教えてください」
11月27日(土)夜10:55~11:10<総合・北海道ブロック>
※番組タイトルや放送日時は変更になることがあります。


――入局何年目ですか?

4年目です。初任地は東京で、2020年9月に札幌に異動してきました。

――これまで担当した番組を教えてください。

東京で最初に担当したのは国際番組です。BSの国際報道や、日本に住んでいる海外の方を取材したリポートなどを作っていました。その後は政治番組を担当し、札幌に来てからは「小さな旅」という番組でニセコの紅葉を取材したり、2021年3月には国内初の判決となった同性婚裁判の取材を行い、「北海道道」で放送しました。

――11月27日(土)放送予定の「ほっかいどうが(※)『立候補の理由、教えてください』」の担当ですね。これはどんな番組ですか?

選挙に出る候補者たちの、普段ニュースで見るような姿とは違う肩の力を抜いた時の話をお届けできたらと思っています。政治家というよりも、等身大の一人の人間としてその人たちが何を考えているのかを伝える番組です。

ほっかいどうが……2021年8月から始まった新番組。テーマや形式は自由で、若手ディレクターが今伝えたいことを深堀してお届けする。放送は不定期で1回の放送時間は15分。

――具体的にはどんな人をとりあげるのでしょう。

2021年10月31日に行われた衆院選、北海道3区で出馬した3名(高木宏寿氏・荒井優氏・小和田康文氏)に密着取材しました。

――なぜその3名を?

北海道の全選挙区の中から候補を探したので、人選は悩みました。新人や選挙の経験があまり多くない人、あとは率直に話をしてくれる人が良いなと思い、ある程度絞った中で何名かにお会いして、最終的にこの3名に決めました。

――率直に話してくれる人……それは、どういう時にそう感じたのでしょうか?

初めは取材ではなく普通に会って話をしたり、選挙に関係のないイベントなどにも参加してみた中でそう感じました。

――3区は今回かなり接戦でしたね。

そうですね。人選の際に、接戦になりそうな地区の候補者を取り上げたいなという思いもありました。

――選挙は結果を伴うものですし、その期間に密着するというのは嫌がられそうな気もしますが。

嫌がられるかな、という思いはありました。ただ、選挙が終わった後に放送するということと、今回は政党や政策の話題というよりは候補者の人生のこれまでの歩みや、どういう道をたどってきたかということに着目した番組だということをお伝えしたところ、取材を受けて頂けました。

――取材期間はどのくらいですか?

最初に候補者たちにお会いしたのは7月頃ですね。撮影期間は約3週間です。

――番組を作ろうと思ったのはいつ頃?

2020年12月に「ほっかいどうが」の提案募集があって、構想を考え始めたのはその時期です。当初は2021年4月の補欠選挙を取り上げたいと思っていましたが、それには間に合わず、今回の衆院選のタイミングになりました。

――なぜこの番組を作ろうと思ったのでしょうか?

東京にいた時に政治番組を担当していたので、国会に出入りすることが多かったのですが、政治家って何を考えているのだろうと関心を持つようになりました。表に出てくるのはどうしても形式的な部分が多いので、普段考えていることがよくわからないなと。政治家の素顔に迫る番組はなかなかないのではないかと思い、「ほっかいどうが」は自由にテーマを決められるので、候補者の素顔に迫る番組を提案しました。

――確かに、政治家の素顔ってなかなかイメージしづらいですね。

選挙に出るというのは相当大変だろうし、自分だったら出る勇気はないので、政治家になりたい人たちはいったいどんな人たちなのだろうと気になりました。

――選挙に出るには費用もかかりますし、負担も大きい。それでも出馬する理由というのはどこにあると思いますか。

やはり一度出ると決めると、「周りの支援者の応援に応えないといけない」と後には引けない思いもあると思います。でもそれだけではなく、選挙に出て、政治活動を通じて候補者自身にとってのテーマと向き合っているということも感じました。今までは政党や政策のために選挙に出ているイメージが強かったのですが、候補者一人一人の人生、たどってきた道があって、その延長線上にそれぞれの目的意識や志があるんだなと気づきました。

――選挙期間中の取材はかなり緊張感もあったと思います。

そうですね。取材相手も疲れているので、できる限り過剰な負担にはならないようにというのは心がけました。ただ、選挙期間中は候補者は15分おきに移動するような過密スケジュールだったので、ゆっくり落ち着いて話してもらえる時間をとることが大変でした。特に3区は接戦だったので、どの候補者も疲れや緊張が見えていて。その中でいつアプローチするかというのは難しかったです。

――他に取材時に気をつけていたことはありますか?

通常の選挙取材とは違うということを相手に理解してもらわなければ、という思いはありました。堅い話になってしまっては本音を引き出せないので、リラックスして話をしてもらえるように、私自身も堅くなりすぎず、服装もあえてスーツを着ないなど工夫しました。

――密着取材は相手との距離感のとりかたが難しそうですが、そのあたりは如何ですか?

確かに難しいですね。相手のストレスをなるべく減らすように、堅い話ばかりしないように意識しましたが、一方で聞くべきことは聞かないといけません。相手にとって嬉しくないこと、葛藤のようなことを聞くこともあります。そうした話は、リラックスして話せる雰囲気をつくり出さないとなかなか聞けない部分でもあります。

――相手にリラックスしてもらうために意識していたことは何かありますか?

カメラを回さない時にも事務所にお邪魔して、候補者だけでなく事務所のスタッフたちとも積極的にコミュニケーションをとって、その場にいても自然な雰囲気をつくり出すことを心がけました。ただ、その雰囲気をつくるだけでも2~3か月はかかりましたね。

――3人の候補者を取材してみて、どんな印象を受けましたか?

自分と向き合いながら選挙をしているなと感じました。やりたいことがあるのと同時に、自分との対話をしているなと。例えば荒井氏は政治家の世襲が自身の一つのテーマになっていて、「父を超えられるか」ということをとても意識していたように感じました。
他の方も非常に率直だったり、まじめだったり。時には「よくここまで話してくれるな」とこちらが驚くくらいで、そうした部分はすごいなと思いますね。3人とも選挙に人生を懸けていて、選挙が彼らの人生の大事な一コマになっているという印象を受けました。

――選挙を通して自分自身と向き合っている?

そうですね。候補者たちは周りの人に対して、自分のために動いてもらうということをしなければいけない人たちなので、言葉や行動に納得性を持たせるためにも自分自身やこれまでの人生と向き合わざるを得ないのだと思います。

――話を聞く中で一番注力した点は?

選挙に出るまでの歩み・葛藤を、辛い過去も含めて聞くということに注力しました。選挙活動の中で漏れ出てくる本音を拾う――そこを大事にしました。そういった部分で他の政治番組とは違うものにしようと思いました。

――「ほっかいどうが」は15分と尺(放送時間)が短いですが、短いからこその難しさもありますか?

尺がない分、細かいニュアンスを伝える間(ま)がないので難しいです。簡潔にストレートに伝えていかないといけないので、本当にこの人たちが思っていることは何か、大事なポイントはどこか、1カット1カット考えながら編集作業にあたりました。

――候補者3人の共通点は何かありますか?

3人とも父親の影響が大きいように感じました。「父を超える」とか「父の背中を見て」という部分が少なからずあると思います。父親が議員で、父の言う通りにはしたくないと思いながらも今回選挙に出たという候補者もいます。あと感じたのは、3人とも必ずしも選挙が好きで出馬しているわけではないということですかね。

――選挙が好きではないというのは意外でした。それなのにどうして出るの? と率直に気になりますが……。

自分の名前を売ったり、自分自身を商品のように見せないといけない部分があるので、それが慣れなくて苦手だ、嫌だと話していた候補者もいました。ただ、実際は好きと嫌いが混じっているように感じました。選挙はペーパー試験ではないので、どうしてもそうした活動をする必要がありますし、自分の知識や経験を活かすために選挙に出ているので、いろんな思いを抱えながら選挙活動をされていました。

――3人の中で一番印象に残ったのは?

小和田氏ですね。彼の率直さには本当に驚きました。

――率直というのは、具体的には?

自分の人生でうまくいかなかったことをストレートに話していて、それが印象的でした。今まで私自身こうした取材の経験が少ないということもありますが、政治家が自分の挫折を話すというイメージがあまりなかったので。そういう意味では、3人は候補者ではありましたが、それぞれ自分の葛藤を率直に話してくれました。

――取材を通して、記憶に残っているエピソードはありますか?

選挙中盤はみなさん夜遅くまで活動されていて、とても話しかけられる雰囲気ではありませんでした。その時にたまたま候補者の一人が自転車で地域を回る機会があって、走って追いかけながら色々と話を聞いたこともありました。一緒に長い距離を走りながら話したからこそ聞けた話もありました。
他にも駅で辻立ちをしている時に、ある高校生が候補者に声をかけてきて、「いま色々大変で苦しいけれど、アルバイトを頑張って進学しようと思っています」といった話をしていたのも印象に残っています。選挙に出ることによって、候補者たちは普段話さないような人たちの話を聞く機会を持つことができるんだなと思いました。

――特に若い世代にとって選挙は距離が遠いということもよく言われますが、それについてはどう思いますか?

投票率があがることももちろん大事ですが、まずは政治について知る機会がもっと増えたら良いのかなと思います。ニュースだけではなく、ドキュメンタリーでもバラエティーでもドラマでも、様々な形で政治を楽しめる機会があれば良いんじゃないかなと。選挙や政治の“人間模様”というのはとても人間臭い部分があるので、そうした観点で見ると面白いと思います。

――取材してみて、ご自身の中で選挙の見方が変わった部分はありますか?

ある意味選挙というのはすごく熱いなと思いました。候補者もその周りの関係者もすごく熱い。ただ、それは今回近い距離で取材をしたからこそ感じることで、一歩引いて見てみると自分の生活しているところとはまだ距離があるなと思います。

――距離や壁を感じている人は他にも多くいると思います。そこを近づけるにはどうしたら良いと思いますか。

選挙をする側も、自分の周りだけで盛り上がっていないか、果たして他の人々と繋がることができているのかということは常に考える必要があると思います。それと今回感じたのは、意外と選挙に出る人たちはフレンドリーな人が多いと感じました。普通はなかなか難しいかもしれませんが、遠巻きに見るのではなく、自分たちと同じところにいる人たちだ、と感じられたら政治や選挙が身近になるかもしれません。

――政治の話はどうしても自分たちとは違う世界という感覚がありますよね。今回の「ほっかいどうが」などを通して、より一個人としての素顔がクローズアップされるとその距離感が近づくきっかけになるかもしれません。

候補者たちは政治の世界に踏み出すまでに紆余曲折があったり、必ずしも元から政治家であるわけではありません。みなさんと同じ“普通の人”で、「選挙に出る」という一歩を踏み出した人たちという違いだと思います。

――今回の番組、特にこういう人に見てもらいたいというのはありますか?

選挙や政治の番組ではないつもりで作っているので、あくまで一人の人間の人生の1コマの話だと思って見て頂きたいです。選挙や政治に関心がない、よくわからないと感じる、もしくは政治の世界って嫌だなと思っている人にこそ見てもらえたらと思います。

――ちなみに、班さんはもともと学生時代から政治に関心があったのでしょうか?

大学院で国際関係や公共政策の勉強をしていたので、関心はありました。学生時代は特に紛争問題に興味があって、戦争を進める人たちはいったいどういうことを考えているのだろうということが気になっていたので、そういう意味では、同じように国の政治に携わっている人は何を考えて何を決めているのか、ということには興味がありました。

――大学院に進む前は理系だったそうですね。

学部では宇宙工学の勉強をしていました。当初はパイロット志望だったのですが、その次に関心があったのが国際関係でした。

――NHKを志望したのはなぜ?

大学の先生がNHKの元ディレクターで、授業の一環でよくNHKの番組を見ていました。イラクやパレスチナなどを取材した番組、犯罪被害者をとりあげた番組などを見る中で、国内・国外問わず色々な立場の人から話を聞くことができる仕事だなと思ったのがきっかけです。

――実際にNHKに入局してみてどうでした?

思ったより自由だなという印象です。提案次第で実現できることも多いと感じました。一番最初に作ったリポートがパレスチナとイスラエルの若者たちの対話だったのですが、とても刺激的でした。
ディレクターの先輩方はみんな多種多様で、関心が本当に人それぞれで。こういうのが好きとか、こういうことをやってみたいというのがそれぞれテーマがはっきりしているのがすごいなと思いました。

――いま最も関心があるテーマは何ですか?

もともと関心があってわくわくするのは国際関係ですね。でも入局前は自然の番組や大河ドラマも好きでしたし、科学系の番組も見るので、色々と関心があります。特に今は国際関係と科学技術に惹かれます。

――科学の番組を作った経験は?

まだちゃんと作ったことはないのですが、ちょうど今ロケットの開発をしている企業の取材を行っているところです。

――北海道には宇宙産業に携わっている会社がいくつかありますよね。

そうなんです。赴任先である北海道で、自分のやりたいテーマに関われるというのは本当にラッキーです。

――今後どんな番組を作りたいですか?

エンジニアに密着してみたいです。私自身工学部だったので、技術のことで四苦八苦している泥臭い部分を伝えたいです。他には、北海道に絡んだ国際的なテーマなども取り上げてみたいですね。

――最後に、今回の「ほっかいどうが」の見どころを教えてください。

言葉の息遣いをぜひ見て頂きたいです。候補者一人一人の発する言葉の雰囲気やイントネーション、間(ま)に注目して見てもらえたら嬉しいです。


■ほっかいどうが「立候補の理由、教えてください」

11月27日(土)夜10:55~11:10<総合・北海道ブロック>
※番組タイトルや放送日時は変更になることがあります。

班 学人 -Han Gakuto-
2018年入局。札幌拠点放送局 放送部 ディレクター(2020年~)
岡山県出身。以前は、報道局国際番組部(2018年)、政治番組部(2019年)。
北海道にいる間、登山とスキーをたくさんしたいです。

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