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国政選挙は比例代表もおもしろい 参議院選挙北海道では…

  • 2022年6月29日

補欠選挙や再選挙を除く国政選挙では、選挙区に加えて比例代表の投票も行われます。
候補者個人の事情に左右される選挙区と違って、政党どうしの争いとなる比例代表は各党の“地力”が選挙区以上にみえやすいともいえます。
国政選挙は比例代表もおもしろいんです。さて、参議院選挙では?

比例代表の争いでは…

まず、直近の国政選挙として、去年、2021年(令和3年)の衆議院選挙でNHKが行った出口調査をみてみます。
北海道全体の集計で、選挙区(小選挙区)の投票先ごとに比例代表の投票先をみますと、▽選挙区で自民党の候補者に投票した層では、比例代表で、67%は自民党、14%は公明党に投票していましたが、野党側の立憲民主党に4%、共産党に2%が投票していました。選挙区で与党に投票しても、比例代表は野党に投票した層が一定程度存在したわけです。
一方、▽選挙区で立憲民主党の候補者に投票した層では、比例代表で、57%は立憲民主党、14%は共産党に投票していましたが、7%は自民党、3%は公明党でした。
また、▽選挙区で共産党の候補者に投票した層では、比例代表で、59%は共産党、11%は立憲民主党に投票していましたが、8%は公明党、5%は自民党でした。
このように、選挙区と比例代表は、かならずしも投票先は一致しません。
特定の政党へのコアな支持層を除けば、選挙区と比例代表で投票先を変える、票を「使い分ける」有権者も少なくないのです。その選挙を正確に知るためには、選挙区だけを分析すればよいというわけではありません。
通常は選挙区の戦いが早く決着して、比例代表の当落判明は遅くなります。比例代表を含めた全議席が固まるのは、衆議院選挙も参議院選挙もたいてい、投票日翌日にずれ込み、朝までかかることも珍しくありません。
深夜、あるいは朝まで続く比例代表の戦いもまた、「熱い」のです。

当選者はどう決まる?

では、比例代表の当選者はどのように決まるのでしょうか?
衆参いずれの国政選挙でも、まず、得票数に応じて“ドント式”と呼ばれる計算方法で、各党の獲得議席数が決まります。
各党に議席を割り振った場合、その1議席あたりに反映される票の多い順に当選にしようというもので、具体的には各党の得票を整数で割ってその商の大きい順に議席を得ていきます。

たとえば、6議席をめぐって4党で争い、A党が1万2000票、B党が9000票、C党が5000票、D党が3500票を得たとします。
A党については、得票を1で割ると1万2000、2で割ると6000、3で割ると4000、4で割ると3000となります。
ほかの3党についても同様に計算します。この商を大きい順に並べると…。

①A党の1議席目、②B党の1議席目、③A党の2議席目、④C党の1議席目、⑤B党の2議席目、⑥A党の3議席目の順になります。
結果、A党は3議席、B党は2議席、C党は1議席を得ることになります。
なお、この次、次点はD党の1議席目で、最終の6議席目はA党とD党が争っていたことになります。
では、その議席を誰が得るのか?当選者がどのように決まるかを次にみていきます。
ここは、衆議院選挙と参議院選挙で大きく異なります。

このうち、衆議院選挙の比例代表は全国が11のブロックに分けられ、北海道だけで1つのブロックを構成しています。北海道ブロックの議席数は8です。
衆議院選挙は、そのブロックで候補者名簿を届け出た政党・政治団体の名前を投票用紙に書いて投票します。各党の名簿では、候補者に順位がつけられています。基本的にはこの順位に従って当選者が決まっていきます。
ただし、衆議院選挙の場合、選挙区と比例代表のいずれにも立候補する「重複立候補」が認められています。この重複立候補者は、選挙区で当選した場合、比例代表の名簿から外れます。
一方、選挙区で議席を得ることができなかった場合、比例代表で「復活当選」する場合があります。
比例代表の名簿では、重複立候補者を同じ順位に設定することも可能です。
選挙区で当選できず、比例代表の名簿で同じ順位で並んでいる重複立候補者の復活当選は「惜敗率」で決まります。選挙区で当選者にどれくらい迫ったかの指標で、この惜敗率の高い順に当選者が決まります。
ただ、比例代表で復活当選するためには、選挙区で有効投票総数の10分の1の得票が必要で、これに満たなかった場合は名簿から外され、当選の資格がなくなります。
このように復活当選に向けては、選挙区での“負けっぷり”が問われます。ここが衆議院選挙比例代表の特徴です。

参議院選挙の比例代表は全国が1つのブロックです。つまり北海道から沖縄県まで、候補者名簿は同じです。(※かつての「全国区」の流れをくみます)
今回の選挙では、比例代表は50議席をめぐって争われます。
有権者は、▽政党・政治団体の名前(政党名票)か、▽各党が届け出た名簿に記載された候補者名(個人名票)を投票用紙に書いて投票します。
各党では政党名票と個人名票の合計が得票数となり、これに応じて前述の“ドント式”に従って議席が配分されます。
各党で実際の当選者は得票順、つまり、個人名票の多い順に決まります。
これを「非拘束名簿式」といい、2001年(平成13年)の19回選挙から導入されました。前回・2019年(令和元年)の25回選挙からは特定の候補者に名簿で順位をつけることができるようになり、この「特定枠」の候補者は得票数に関係なく、決められた順位に従って優先的に当選することができます。

参院選比例代表 ライバルは身内に

非拘束名簿式は今回の選挙で8回目です。
この非拘束名簿式では、原則として名簿で候補者に順位はついていません。裏を返せば、各党内で、より票を集めた候補者が当選できるのです。つまり、候補者の“集票力”が問われる仕組みです。

このため、全国で争われる参議院選挙の比例代表は、強固な組織票に支えられる業界団体や労働組合といった組織が擁立した候補者のほか、全国区の知名度があるタレントやスポーツ選手が候補者になるケースが目立っています。
また、計算上2%前後の得票率があれば党として1議席を得ることができることから、全国区ではなくても、元衆議院議員や元市長など特定の地域で知名度や強固な地盤がある人物が立候補するケースもみられます。全国でまんべんなく得票できなくても、特定の地域で票を伸ばすことで当選できるのです。

非拘束名簿式が導入される以前は、衆議院選挙のように名簿で順位がつけられていましたが、前回の選挙から部分的にこれが復活するかたちになりました。それが前述の特定枠です。
前回・2019年(令和元年)の25回選挙では3つの政党と政治団体が特定枠を活用し、自民党とれいわ新選組のそれぞれ2人が当選しています。特定枠の候補は、選挙事務所を設けたり選挙カーを使ったりするなど個人としての選挙運動は認められていません。選挙の結果、特定枠の候補者の名前が書かれた票は、党の有効票となります。

参議院選挙の比例代表では、特定枠以外の当選者はあくまでも政党・政治団体ごとに個人名票の多い順に決まるため、党によっていわゆる当選ラインは違ってきます。
たとえば、前回の25回選挙で19議席を得た自民党は、最下位当選の候補者は13万票余りの得票でしたが、3議席を得た国民民主党では19万票余りを得た候補者が次点で落選しています。
また、前回の選挙で4議席を得た共産党では、最下位当選者と次点の落選者の票差はわずか1300票余りでした。全国で5000万人を超える投票者の中での1300票余りの差ですから、当選確実の見極めにはかなり時間がかかり、この最下位当選者の当選確実が出たのは午前7時を回っていました。

支持者に投票用紙で政党名票を書かせるのか、それとも特定の個人名票を書かせるのか。各党で“戦術”には違いがあり、当選者の得票は党によって大きく異なります。
ライバルは身内に…。参議院選挙の比例代表は、各党の獲得議席数争いに加えて、その党内での候補者間の争いも見どころになっています。

得票からみえる各党の“地力”

最後に、最近の国政選挙の比例代表で、各党が北海道で得た票数をみていきます。
まず、北海道だけで1つのブロックとなる衆議院選挙。
最近5回の結果は次のとおりです。

歴史的な政権交代が起きた2009年(平成21年)の45回選挙は民主党が得票1位でした。民主党の得票数は134万票余りと得票率は40%を超えました。このときの獲得議席数は4で、北海道ブロックの定員8の半数を占めました。
その後、自民党が政権を取り戻した2012年(平成24年)の46回選挙以降は、自民党が得票1位となっています。
ただ、民主党が強かった時代ほど“圧勝”しているわけではなく、自民党の得票数でいえば、実はいまの小選挙区比例代表並立制となってからは、2005年(平成17年)に行われた44回選挙の94万票余りが党としての最多記録です。

続いて、参議院選挙の比例代表の結果です。

全国の得票順に並べたため、ところどころで得票数の逆転がみられます。
たとえば、自民党が政権を取り戻したあと、最初の国政選挙となった2013年(平成25年)の23回選挙。新党大地は北海道では得票4位でしたが、全国では得票9位でした。つまり、北海道で票を伸ばしたかたちとなっています。このように、全国との対比からは、北海道の“地域性”もみえてきます。
一方、衆議院選挙同様、民主党は“勢い”のあった時代は得票が100万票を超えていました。その後、自民党政権下の23回選挙以降は得票1位は自民党となっています。
そして前回、2019年(令和元年)の25回選挙は、自民党が76万票余り、立憲民主党が49万票余りでした。得票率では11ポイント余りの差で、自民党と野党第1党の差は広がっていました。一方、前回の選挙では、立憲民主党と共産党は北海道を地盤とする候補者がいたこともあり、北海道の得票率は全国の得票率よりも高くなっていました。

衆参過去5回ずつ、得票率の推移を整理したのが上のグラフです。この間、比例代表に参戦し続けた政党について推移を示しています。民主党については、その流れをくむ民進党や立憲民主党などを同列に扱っています。
自民党は、多少のデコボコはあるものの、得票率の推移で大きな変動はみられません。
一方、民主党とその流れをくむ各党はデコボコが目立ちます。そのときどきの“風”の影響を受けているともいえます。
このように、投票率にも左右される得票数と違って、得票率は各党の“地力”の推移がみえやすくなります。
一方、組織票が強固な政党は、得票率は比較的安定して推移しています。
政党への支持はかつてほど強固ではなく、最近は選挙のたびに投票先を判断する、「ふわっとした」支持が多くなっているとの指摘もあります。
つまり、“勢い”があれば爆発的に票を伸ばす一方、ひとたび支持を失うと急激に票が減る、“大勝”か“大敗”か、いわば振り子のように勝ち負けがはっきりする選挙が目立っています。

さて、今回の参議院選挙ー。
“地力”の指標となる比例代表の争いで、各党がここ北海道でどのように得票するのかも注目です。

取材 札幌放送局・岡崎琢真
2017年入局 札幌局で経済取材を担当
国政選挙では5度の投票経験。いずれも投票先が選挙区と比例代表で一致していない

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