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食の宝庫 北海道!フードロスを減らそう

  • 2024年1月26日

1月11日の北海道まるごとラジオのテーマは「フードロスを減らそう」でお送りしました。ゲストは俳優、タレントの千堂あきほさん。北海道漁協女性部応援大使として、道内の漁港をまわり、漁協女性部の方たちとその土地の美味しいお魚を使った料理を紹介する活動をしています。そんな千堂さんと共に、食の宝庫である北海道で進むフードロスを減らす取り組みについてお伝えしました。

リリースしていたイワシに価値をつける!函館のアンチョビ 

北海道近海で獲れなかった魚が最近多く獲れるようになっています。函館では、特産のイカが獲れなくなって、代わりにマイワシが網にかかるようになっています。スルメイカの漁獲量は、2012年におよそ23000トンだったのが、2022年にはおよそ2600トンあまりまで減少。一方でマイワシは10年で漁獲量がなんと25倍に増加して1万トン以上獲れるようになっています。

函館で漁業を営む熊木祥哲さんによると

「僕も含めて北海道の人って、マイワシをなかなか食べる文化がない。骨がある小さい魚だからあまり食べない。網にかかったマイワシを市場まで持っていけば、ガソリン代がかかりますし、競りでやっぱり場所代もかかるし手数料もかかるし、氷使ったら氷もかかるし、売れないって言ったらただマイナスになるだけです。今までは網にマイワシがかかってるとがっかりしてたんですよ。もうどうしようもないと」

そういった魚を活用しようと、今回函館でアンチョビづくりが始まりました。

発売開始から1年で累計6000個と、想定以上の売り上げだそうです。

このアンチョビを作り始めたのは、函館市内の商業施設を経営する岡本啓吾さん。
岡本さんに作り始めたきっかけについて聞きました。

「漁業について収益の見通しがたたず、どんどん高齢化と廃業が進んでいる話を聞いたときに、すごい危機感を覚えました。漁師の皆さんがいなくなったら、僕らは魚を食べられなくなるし、観光のまちって言ったって魚がなかったらどうするのって話。貴重な食の資源だし、マイワシでもどうにか価値を高めていくことができないかなって思ったのが、活用しようと思った経緯ですね」

水産加工会社でつくるアンチョビは、水洗いしてうろこをとったイワシを袋にいれて、塩を加え、 空気を抜いてから口を縛って、あとは2,3か月おいておくだけ。常温で発酵が進むそうです。

そして、瓶詰の作業は、市内の就労支援施設で行っています。就労支援施設の責任者、中塚里美さんは「利用者の皆さんにとっても、自分たちも地元で社会参加しているという意識が芽生えて、自信につながっていると思います。」と話していました。

千堂さんも「地域の物づくりを形にしていくというのは大事なことだと思います。私も道内でいろいろなお母さんたちとお話ししますけど、それぞれの地域で、特産の物を使ったこういうものを作ってみたい!という話はよく聞きます。でもそれをどう加工して、どこに持っていけばいいのか、やっぱりなかなか前に進まないんですよね。そこを取り持って形にできるようになると、北海道ってもっともっと良くなるな、って感じます。」と話していました。

脱脂粉乳を活用!生フロランタン

岡本さんたちの取り組みは、魚の活用だけにとどまりません。「生フロランタン」も作りました。

高級感のあるしっとり柔らかい食感。そのしっとり感は、「おから」を使って出しているそうです。さらにもう一つ使っているのが脱脂粉乳。おからと脱脂粉乳は、どちらも栄養価は高いけれどなかなか利用が進んでいない食材です。脱脂粉乳を使うのも、岡本さんたちが、飼料の高騰などに 悩む道内の酪農家と話したのがきっかけだったそうです。

コロナ禍で生乳の消費が低迷しているときに、バターや脱脂粉乳といった長期保存できるものに加工する動きが進みました。そんな中、バターは売れるけれど脱脂粉乳の在庫は増えてしまったそうです。そこで脱脂粉乳を使うきっかけにならないかとお菓子を作り始めました。
岡本さんたちの活動に関わっている酪農家によると、お菓子を通して、脱脂粉乳を使おうとする人が増えたり酪農が置かれている状況に目を向けるきっかけになったりすると嬉しいと話していました。

北海道大学が開発!プラチナ触媒とは

続いてはフードロスを減らすことにつながる画期的な物質についてです。
北海道大学によると、日本のフードロスの量は年間で600万トン余り。そのうち少なくとも100万トンは青果物に関わるロスだそうです。青果物の鮮度を長く保つことができれば、フードロス削減に大きくつながる、ということで開発したのがこちらの物質。

野菜や果物の熟成が進む原因となるのは、「エチレン」という物質です。エチレンは、野菜や果物から少しずつ空気中に放出されます。そのエチレンが再び、野菜や果物につくとさらに熟成が進んでやがて腐敗していきます。このプラチナ触媒は、エチレンを除去して野菜などにつかないようにしてくれる物質。つまり野菜、果物の劣化を防いでくれるものです。

ではどれくらい効果がでるものなのか。
北海道大学ではレタスとリンゴで保存期間にどの程度の差が出るのか実験をしました。常温でレタスとリンゴをケースに入れて、片方はプラチナ触媒を入れ、もう片方は何も入れずそのままにしました。開発した北海道大学の福岡淳教授の話です。

「常温にもかかわらず触媒が入っている方は10日経っても食べることができました。自分で実食したので、よく分かりました。」とのことです。

これには千堂さんもビックリ。

「実験後のリンゴとレタス、持ってきてもらわないと信じられない~!」

一部の冷蔵庫メーカーでは野菜室に標準装備されていて、160万台以上販売されています。
尽きない疑問の数々…。福岡教授に聞きました。

・肉や魚への効果は?
熟成・腐敗が進むメカニズムが青果物と違うので、一概には語れないとのことです。ただ福岡教授と一緒に共同研究をしている会社によると、一部に効果がある実験結果がでているとのことです。

・生身の人間にも効果はある?
アンチエイジング的な効果は今のところ無さそうです(笑)。ただ、原理上、体臭を減らす効果はあるそうで、今後検証していきたいとのことです。ちなみに間違って食べても人体に影響はないそうです。

・値段は高いの?
1キロで数十万円。流通用の大きな倉庫だと1キロくらい必要ですが、一般的な冷蔵庫ではほんの少し、数粒あれば効果が出るとのことです。

高校生たちも実験!活用アイデアを探る!

果物や野菜の劣化を防ぐ、プラチナ触媒。より幅広く活用していきたい!ということで、若いひとたちのアイデアを生かす取り組みも進んでいます。それが「フードロス削減アイデアコンテスト」。
道内の高校生や専門学校生を対象にプラチナ触媒活用のアイデアや、実際の実験結果を募集するコンテストで、今回が3回目です。前回大会で、最高賞に輝いた夕張高校では、先輩たちの研究を後輩たちが引き継いで続けています。

夕張高校2年生のみなさんは特産の夕張メロンで保存実験を行いました。
冷蔵、常温の状態でそれぞれプラチナ触媒がある、無しで熟成の具合がどう変わるかを検証しました。冷蔵庫内だと触媒を使用することで、使用しなかった場合と比べて日持ちが2週間伸びて、トータル45日も日持ちするようになったそうです。

この結果についてプロジェクトリーダーの夕張高校2年生、三浦寧音さんは「プラチナ触媒って本当に効果でるのかな、程度に思っていたんですけど、思った以上に効果が出て、これだったらもっと期待できるなと思いました。海外への輸出ももっと行けるようになると思うので、夕張メロンをより多くの地域の人に知ってもらえるような実験にもなったかな」と話してくれました。
同じく2年生で、コンテスト用の動画制作を担当した舟橋悠那さんは「今回のコンテストでもし何かいい結果が出たら、夕張市全体が盛り上がってくれる気がしています。実際に商品化したら夕張市の業者さんにも使ってもらいたいなって思います。」と力強く話してくれました。

千堂さんは「やっぱりこのこういう発想ができるのが若い年代の人たちだと思います。すごいね!高校生!で終わるのではなくて、その言葉を拾って、次につなげるということを大人たちがどんどんしていくことが大事だなと思いますよね。」と話していました。

夕張高校では、自分たちで育てたメロン以外にも、農協から品質の揃ったメロンを提供してもらって、実際に食べながら研究したそうです。地域が協力して実験を行っているということもすごく大切だと取材をしていて感じました。
また、福岡教授も高校生たちのアイデアのユニークさと熱量にすごく刺激を受けて、面白いと思うだけでなく、実際に過去最高賞を取った高校生たちと一緒に共同研究を続けているものもあります。まだまだアイデア段階のものや実験段階のものも多いので、今後どんな結果が出てくるのか本当に楽しみです!

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