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木彫りのふくろうのルーツは?

  • 2023年10月11日

今回は滝川市の26歳の男性から「木彫りの熊は八雲が発祥と聞きますが、木彫りのふくろうはどこが発祥でしょうか」という質問をいただきました。
木彫りの熊はおなじみですが、木彫りのふくろうも土産物店で見かけたことがありますよね。関係者を取材し、そのルーツを探りました。(札幌局記者  小田切健太郎) 

まずは、木彫りの熊の発祥とされる八雲町の方の話を聞くことにしました。八雲町木彫り熊資料館で木彫りの熊を研究する大谷茂之学芸員です。

八雲町木彫り熊資料館  大谷学芸員
「木彫りのふくろうがいつ誕生したのかはわからないです。明確な記録はないと思います。でも、木彫り熊の第2次ブームが終わった後に作られたというのは聞いたことがあります」

木彫りの熊の第2次ブーム?木彫りのふくろうのルーツを探るには、まずは木彫りの熊の歴史を知る必要がありそうです。

大谷さんによると、木彫りの熊の最初のブームは昭和10年ごろ。戦前の北海道観光の盛り上がりで、お土産として人気になりました。しかし、この第1次ブームは戦争の激化とともに下火になっていきます。

第2次ブームの始まりは、昭和30年代の高度経済成長期と重なります。再び、北海道観光が人気となり、サケをくわえた木彫りの熊のイメージもこの頃定着しました。
第2次ブームは昭和末期から平成初期にかけて長く続いたそうですが、時代の変化とともに、売り上げが落ちていったと言います。

八雲町木彫り熊資料館  大谷学芸員
「ブームが終わった一番大きい理由はお土産品のしこうの変化です。10個入りとかのお菓子を配ることが多くなっていきました。あとは床の間の減少といった住宅事情の変化もあり、木彫りの熊を飾る場所がなくなったこともあるかもしれません。ほかによく言われるのが、テレビが薄くなったことで置く場所がなくなったという話もあります」

では、本題の木彫りのふくろうが広まったきっかけが、木彫りの熊の第2次ブームの終わりごろというのは、どういうことなのでしょうか?

八雲町木彫り熊資料館  大谷学芸員
「木彫りの技術を生かして、熊じゃない何かを彫る時に、ふくろうが北海道にもいる動物だというのが理由になったと聞いたことがあります。昔から作っている人はいたと思いますが、たくさんの人が作ったというのは、平成になってからと伺っていました」

大谷学芸員からは、当時を知る木彫家に取材をすると何かヒントが得られるかもしれないとアドバイスをいただきました。
そこで取材班は、古くから盛んに木彫りが行われている旭川市へ向かいました。

訪ねたのは、旭川木彫・工芸品協会会長の菅野秀雄さん(80)と、会員の上西捷敏さん(80)です。2人とも木彫家として50年以上の大ベテランです。

記者
「木彫りのふくろうが昭和末期から平成初期に広まったと聞いたのですが、お2人のご記憶としてはどうでしょうか?」

木彫家  上西さん
「まさにその通りだと思うね。木彫りの熊も時代とともに住宅事情も変わってきて、売れにくくなったということが理由だった」

木彫家  菅野さん
「それでね、熊以外の動物に挑戦してみようかという職人さんが増えてきたんだよね」

2人によると、木彫りの熊の第2次ブームの終わりに、道内各地の木彫家が彫り始めたふくろうなどのさまざまな動物が店頭に並ぶようになったと言います。

中でも「福を呼び込む」や「苦労しない=不苦労」の意味で人気になったのが、ふくろうでした。

上西さんが初めてふくろうを彫ったのも昭和の終わり。当時、参考とする作品も少なかったため、作るのは簡単ではなかったと言います。

木彫家  上西さん
「やっと苦労して彫ったふくろうを娘に見せたら、これすずめかい?って、言われてしまって。それからふくろうの剥製を買ってきたり、動物園行ってふくろう見たりして、勉強した。観光地に出しても恥ずかしくないふくろうだなと思える形を作るのには、1年以上かかったね」

こうした木彫家の努力もあり、ふくろうは道内に広く定着していきました。
そして今は、木彫りの熊からふくろうに派生したように、木彫りの作品は進化を続けていると言います。

木彫りの熊がテニスをしていたり、スキーをしていたり、はたまた釣りをしていたりと、ユニークな作品が多く生み出されています。

木彫家  菅野さん
「ありきたりの熊ではなくて、“こういうのもあるんだ”とお客さんがびっくりするような作品を作るのがおもしろいんじゃないかなと思います。それを見たお客さんが喜んでくれるのが、作り手として一番やりがいがあります」

八雲町木彫り熊資料館の大谷学芸員によると、今はアートなどとして木彫りの熊の第3次ブームが来ている“かもしれない”ということで、SNSを中心に盛り上がっているそうです。この機会に皆さんもお気に入りを見つけてみてはいかがでしょうか?

2023年10月11日

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