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“滑り止めの砂”は、どう作る?

  • 2023年1月26日

今回、調べたのは「砂」についてです。
冬の間、交差点などに置かれた砂箱に入っている滑り止めの砂。この砂について、こんな投稿が寄せられました。

「札幌市内の横断歩道に、必ずこの季節にある滑り止めの砂の製造工程を見てみたい」

取材をしてみると、ただの砂ではないことがわかりました。滑り止め専用に作られる特別な“砂”の製造工程を取材しました。 (函館放送局  吉田翔カメラマン)


滑り止めの砂 札幌市では…

ツルツルの路面を歩くときに役立つ滑り止めの砂。歩行者や車が雪道を安全に通行できるよう、札幌市内にはおよそ4000か所に砂箱が設置されています。
札幌市では、市民が自由にまける砂のほか、散布車で車道にまくものや、作業員が歩道にまくものなども含めると年間で7000トンから8000トンの砂が使われていて、およそ1億5000万円の費用がかかっています。

滑り止めの砂はどうやって作られているのか。まずは砂を設置している札幌市の雪対策室を訪ねました。

札幌市建設局雪対策室 事業課  井上実 課長
「道路にまくためにおいておりますので、誰でも自由に使っていただいて問題ない砂となっておりまして、製造メーカーさんから購入して調達しております」


製造の現場を見てきました

今回は散布車でまく砂を札幌市に販売している小樽市の会社に砂の製造の現場を見せてもらいました。
初めに案内してもらったのは、札幌市手稲区にある砕石プラントです。

ここで、砂の材料となる安山岩を採掘しています。安山岩はマグマが冷えて固まった火山岩で、硬くて丈夫なのが特徴です。電車の線路に敷く石などにも使われています。

採掘した安山岩は、全長50メートルの巨大な施設で3回にわたって砕いて小さくしていきます。

5ミリ以下の大きさになるまで岩を砕いたら、小樽市の工場で砂を水洗いして、ほこりを落とし、ふるいにかけます。

滑り止めの砂になるのは、大きさが2.5ミリから5ミリにかけての粒だけです。これより小さいと風で飛ばされてしまい、大きすぎると踏みつけたとき歩きづらくなります。この大きさがもっとも適したサイズなんです。


最後の「ひと手間」が大切なんです

これで完成かと思いきや、まだまだ作業は続きます。
今度は、およそ300度に熱した「ロータリーキルン」という回転する窯の中で、直火で焼いていきます。砂に付着した水分が凍ってしまわないように、乾燥させるこの「ひと手間」が大事なんです。最後に屋外で砂を冷ませたあと、袋詰めをして、できあがりです。

滑り止めの砂はよくみると、角張っていて表面はざらざらとしています。角張った部分が氷の路面に突き刺さることで、滑り止めの効果を発揮します。多くの工程を経て作られていることがわかりました。


滑り止めの砂 どこにまけばよい?

では、砂をまいたほうがいい滑りやすい場所はどこなのか。雪道の転倒事故の原因や対策を研究しているウインターライフ推進協議会の永田泰浩さんに伺いました。

永田さんによりますと

✅横断歩道
✅地下鉄や駅の出入り口
✅バスの乗降場所
✅ロードヒーティングがある場所と雪道の境目

などが滑りやすい場所としてあげられるということです。

屋内から外へ出るとき、温められた靴底が雪の表面をとかしたり、靴底についている水が雪の表面についたりします。とけた雪道がまた凍るのを繰り返すことで、徐々に路面が滑りやすいツルツルな路面に変化していくということです。雪のないところと雪道の境目に砂をまけば、効果的に滑り止めになります。

昨シーズン(令和3年11月から令和4年3月まで)札幌市内では雪道で転ぶなどして救急搬送された人はおよそ1300人にのぼります。転倒を防ぐためにも、積極的に砂をまいてほしいと永田さんはいいます。

ウインターライフ推進協議会  永田泰浩 幹事
「まいてもらえればあなた自身だけじゃなくて、その後ろを歩いてくる人、皆さんの転倒防止ということになりますので、ぜひ砂箱の砂は皆さんで活用してほしい」


滑り止めの砂 春になると…

今回は、使い終わった滑り止めの砂の行方についても取材しました。札幌市では、春の雪どけとともに清掃業者が使い終わった砂を回収しています。1度使われた砂は角がとれて丸くなってしまい、うまく雪道に刺さらなくなってしまうので、滑り止めとしてはもう使えません。

おととしまではアスファルトの下に敷く路盤材として再活用されていましたが、砂を資材に加工する施設がなくなったため、昨年からは埋め立て処分されています。札幌市では、滑り止めとしての役目を終えた砂も、まだ別の用途に使える可能性があるものとして考えていて、新しい使い道がないか今後も検討していくとのことです。

道内は寒い日が続き、いたるところで路面が凍結しています。凍結した路面で自分が滑らないためにも、あとから通るかたのためにも、ぜひ滑り止めの砂を活用して頂ければと思います。

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