【シラベルカ特別編】滝谷美夢さんの木製バットの疑問を調査!
- 2024年4月4日
視聴者から寄せられた疑問・質問に答えるシラベルカ。今回は特別編として、プロ野球、日本ハムのチアリーダー「ファイターズガール」を6年間務めた滝谷美夢さんの疑問を調査しました!
(NHK札幌放送局記者 前嶋紗月)
滝谷さんは、全国的なブームとなった「きつねダンス」の火付け役の1人で、楽しさが伝わるとびきりの笑顔が印象的です。ことしからは「Fビレッジアンバサダー」に就任し、球場や球団の情報発信を担っているほか、芸能活動にも挑戦しています。
そんな滝谷さんが3月中旬、NHK札幌放送局を訪れて、調査を依頼したのがこちら。
「野球選手が使っている木製のバットには、どのような木が使われているの?
どのようにして加工して作るの?折れたバットはどうなるの?」
野球と関わってきた滝谷さんらしい質問!
取材班はその答えを求め、バット作りの現場へ向かいました。
滝谷美夢さん
取材に応じてくれたのは、十勝の本別町にある「山内バット製材工場」。会社では原木を木材市場で買い付け、バット用の角材に加工して本州にある木製バットメーカーなどに出荷しています。その数、毎年およそ8万本。角材を作り続けて62年です。
岡崎貴司社長
「当社では、ホオノキ、イタヤカエデ、メープル、ヤチダモ、少量ながらダケカンバを扱っています。それぞれの木の特徴によって、用途となるバットの種類が変わるんです」
バットの木材と言えばアオダモとかつては言われ、道内でも生産されていました。ですが成長が遅く出回る量が少ないため、いまではあまり使われなくなりました。
現在の主流は外国産のメープルです。硬く、はじくような打撃感覚が得られるのが特徴で、プロ野球選手のほとんどが使っているそうです。一方、ホオノキは軽く、使う人が疲れにくい利点があるため、コーチや監督のノックバット用として主に使われています。
バットには、枝の痕跡である「節」が少なく、まっすぐな木が適しています。このため、根本から2メートルほどの部分を使います。
工場では、ふたり一組で丸太から角材を切り出していきます。1本からより多くの角材がとれるように切り方を工夫したり、節の場所を瞬時に判断してそこを避けるように切ったりしているということです。簡単そうに見えて、実は職人の技が詰まっています。
会社では、例年10月に注文を受け付け、12月から翌年5月までの半年間で加工作業を行います。1日に製造される角材は500本から600本にもなるそうです。
さらに、丸太の皮を剥くときに出たくずは町内の牧場で牛の寝床として、丸太の切れ端は薪ストーブの燃料として再利用されているということで、大切な木を余すこと無く使おうという様子も伝わってきました。
岡崎貴司社長
「野球業界に携われるっていうのがやっぱりうれしいことですし、やっぱ僕たちがいないとバットができないんだぞという思いをもって職員みんなやっています」
こうして完成した角材は、バットの製造が盛んな富山県などに送られます。こちらは、富山県南砺市の「エスオースポーツ工業」。過去に落合博満さんや掛布雅之さんのバットも手がけたそうです。
バット作りの機械化が進む中、この工場ではいまも一部は人の手でバットをつくっています。ここにも職人技がありました。角材の状態を見て、木目がまっすぐで節がないほうを持つほうにします。逆だとバットが折れやすくなってしまうといいます。
重さは5グラム単位、太さは0.1ミリ単位で調整します。選手からの細かい要望を聞き取りながら理想のバットに仕上げていきます。注文を受けてから完成までに1か月かかるそうです。
中塚陸歩さん
「選手が楽しみに待ってくれているので、こちらも一生懸命に1本1本丁寧に選手の顔を思い浮かべながら、このバットで活躍してもらえるよう思いを込めて作っています」
残る滝谷さんの質問、「折れたバットの行方」について。
「NPO法人北海道野球協議会」に取材したところ、試合や練習中に折れたバットの多くは廃棄されてしまうということですが、一部で再利用する動きもあるそうです。例えば、日本ハムはこれまで、障害者の就労支援を行う施設と一緒に、折れたバットからキーホルダーやマグネットをつくり、ファンクラブ限定で販売したということです。
調査結果を滝谷さんに伝えました。
滝谷美夢さん
「木を見定めるところから始まって、どれが一番バットに適しているかもみながら作業されている様子に、長年の蓄積と職人技でやってらっしゃるんだな、というのをすごく感じました。北海道の木でつくったバットで、例えば北海道の選手だったりが活躍している姿を見たらきっと子ども達の夢にもなるのかなと思います。
あと、折れたバットからキーホルダーなどを作るのは、木を無駄にしないだけでなくファンの方にも喜ばれる取り組みで、うれしいことです」
道内では、北海道の林産試験場などの研究チームが広く自生する「ダケカンバ」を使ってバットを製造しようという動きもあります。夢のある取り組みに、今後も注目していきたいと思います。
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