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国政選挙は比例代表もおもしろい 衆議院選挙北海道では…

衆院選2021

2021年10月15日(金)午後1時55分 更新

補欠選挙や再選挙を除く国政選挙では、選挙区に加えて比例代表の投票も行われます。
候補者個人の事情に左右される選挙区と違って、政党どうしの争いとなる比例代表は各党の“地力”が選挙区以上にみえやすいともいえます。
国政選挙は比例代表もおもしろいんです。さて、衆議院選挙では?

比例代表の争いでは…

まず、前回・2017年(平成29年)の衆議院選挙でNHKが行った出口調査をみてみます。
北海道全体の集計で、選挙区(小選挙区)の投票先ごとに比例代表の投票先をみますと、▽選挙区で自民党の候補者に投票した層では、比例代表で62%は自民党、14%は公明党に投票していましたが、野党側の立憲民主党や希望の党にそれぞれ5%、共産党に1%が投票していました。選挙区で与党に投票しても、比例代表は野党に投票した層が一定程度存在したわけです。
一方、▽選挙区で立憲民主党の候補者に投票した層では、比例代表で56%は立憲民主党、13%は共産党、12%は希望の党に投票していましたが、5%は自民党、3%は公明党でした。また、▽選挙区で共産党の候補者に投票した層では、比例代表で42%は立憲民主党、36%は共産党、6%は希望の党に投票していましたが、3%は公明党、1%は自民党でした。選挙区で野党に投票した層では、比例代表で与党に投票するケースは少なめでした。
このように、選挙区と比例代表はかならずしも投票先としては一致しません。
特定の政党へのコアな支持層を除けば、選挙区と比例代表で投票先を変える、つまり票を「使い分ける」有権者も少なくないのです。
一方、前回の衆議院選挙では野党側で候補者調整が進み、与党と無所属を含めた野党が1対1で対決する構図が道内12選挙区中7選挙区にのぼりました。
出口調査の結果からは、立憲民主党と共産党の“選挙協力”の状況もみえてきます。

当選者はどう決まる?

では、比例代表の当選者はどのように決まるのでしょうか?
衆参いずれの国政選挙でも、まず、得票数に応じて“ドント式”と呼ばれる計算方法で各党の獲得議席数が決まります。
各党に議席を割り振った場合、その1議席あたりに反映される票の多い順に当選にしようというもので、具体的には各党の得票を整数で割ってその商の大きい順に議席を得ていきます。

たとえば、6議席をめぐって4党で争い、A党が1万2000票、B党が9000票、C党が5000票、D党が3500票を得たとします。
A党については、得票を1で割ると1万2000、2で割ると6000、3で割ると4000、4で割ると3000となります。
ほかの3党についても同様に計算します。この商を大きい順に並べると…。

①A党の1議席目、②B党の1議席目、③A党の2議席目、④C党の1議席目、⑤B党の2議席目、⑥A党の3議席目の順になります。
結果、A党は3議席、B党は2議席、C党は1議席を得ることになります。
なお、この次、次点はD党の1議席目で、最終の6議席目はA党とD党が争っていたことになります。
では、その議席を誰が得るのか?当選者がどのように決まるかを次にみていきます。
ここは、衆議院選挙と参議院選挙で大きく異なります。

3年に一度の参議院選挙は全国で50議席をめぐって争われます。
有権者は、▽政党・政治団体の名前(政党名票)か、▽各党が届け出た名簿に記載された候補者名(個人名票)を投票用紙に書いて投票します。
各党では政党名票と個人名票の合計が得票数となり、これに応じて前述の“ドント式”に従って議席が配分されます。
各党で実際の当選者は得票順、つまり、個人名票の多い順に決まります。
これを「非拘束名簿式」といい、2001年(平成13年)の19回選挙から導入されました。前回・2019年(令和元年)の25回選挙からは特定の候補者に名簿で順位をつけることができるようになり、この「特定枠」の候補者は得票数に関係なく、決められた順位に従って優先的に当選することができます。

一方、衆議院選挙の比例代表は全国が11のブロックに分けられ、北海道だけで1つのブロックを構成しています。この「北海道ブロック」の議席数は8です。なお、1つの都道府県で1つのブロックを構成しているのは、ほかには東京だけです。
衆議院選挙は、そのブロックで候補者名簿を届け出た政党・政治団体の名前を投票用紙に書いて投票します。
各党の名簿では候補者に順位がつけられています。基本的にはこの順位に従って当選者が決まっていきます。
衆議院選挙の場合、選挙区と比例代表のいずれにも立候補する「重複立候補」が認められています。
この重複立候補者は、選挙区で当選した場合、比例代表の名簿から外れます。比例代表での当選資格を失うわけです。一方、選挙区で議席を得ることができなかった場合、比例代表で「復活当選」する場合があります。

比例代表の名簿では、重複立候補者を同じ順位に設定することも可能です。
選挙区で当選できず、比例代表の名簿で同じ順位で並んでいる重複立候補者の復活当選を決めるのが「惜敗率」です。
惜敗率は、選挙区で当選した候補者に対して、どのくらいの得票で及ばなかったかを割合で示すもので、たとえば、選挙区の当選者の得票が1万票だったのに対して8000票の得票の場合、8000÷10000×100=80%となります。
名簿順位が同じ場合の復活当選は、この惜敗率の高い順に当選者が決まります。
選挙区で当選者に“より迫った”人が優先的に復活当選できるわけです。
ただ、比例代表で復活当選するためには、選挙区で「有効投票総数の10分の1の得票」(=有効票の10%)が必要で、これに満たなかった場合は名簿から外れ、当選の資格がなくなります。
このように復活当選に向けては、選挙区での“負けっぷり”が問われることになるのです。

名簿で戦略がみえるんです

衆議院選挙の比例代表は、小選挙区との重複立候補のほか、比例単独で立候補することができます。その名簿順位の付け方で各党の戦略がわかります。
小選挙区との重複立候補が5人、比例単独の立候補が3人の場合で具体的にみていきます。

A党は、名簿順位1位に重複立候補の候補者5人を並べました。この5人に続けて、比例単独立候補の候補者を3人、6位から8位に並べています。
この名簿で、たとえばA党が比例代表で3議席を獲得した場合はどうなるのか。
前述のとおり、重複立候補者は、▽小選挙区で当選した場合か、▽小選挙区の得票が有効票の10%に届かなかった場合は比例名簿から外れます。
5人のうち名簿から外れるのが2人なら、残る3人は全員が復活当選できます。
一方、5人のうち名簿から外れるのが1人の場合、残る4人の間で惜敗率の争いが発生します。4人が3議席をめぐって惜敗率を争うわけです。落ちるのは1人ですから、同じA党の仲間とはいえ、生きるか死ぬかをかけたしれつな争いです。
一方、5人のうち名簿から外れるのが3人以上になると、名簿下位の比例単独立候補の候補者も当選できることになります。
たとえば、5人のうち4人が名簿から外れた場合、重複立候補者で残っているのは1人。この1人が復活当選したうえで、残る2議席は名簿順位6位と7位の比例単独立候補の候補者が議席を得ることになります。

A党に追い風が吹いて“大勝”するようなケースだと、5人全員が小選挙区で当選し、比例名簿に残っているのは比例単独立候補の3人だけという状況もありえます。
この場合、どんなに得票しても、当選資格があるのは3人ですから、得られる議席数は3です。
過去の衆議院選挙では、道外のブロックで、名簿から候補者が多く外れた結果、本来、獲得できるはずの議席数よりも名簿に残った候補者の数が少なくなった政党も出ています。この場合、この党で名簿に残った候補者の数よりも多い議席については、“ドント式”に従ってほかの党に割り振られることになります。
各党は、こうした“取りこぼし”を避けるため、比例代表で何議席程度獲得できるかを見極めたうえで、選挙区の情勢も考慮して名簿をつくることになります。

続いてB党は、比例単独立候補の候補者を名簿順位1位にしました。
B党の獲得議席がゼロでない限り、この○○氏は確実に議席を得られます。投票日夜、午後8時に投票が締め切られた時点で当選確実が速報されます。かなり優遇されているともいえ、B党にしてみれば「絶対に当選させたい候補者」だということです。

一方、B党は小選挙区との重複立候補者の間にも名簿順位で差をつけています。
□□氏は名簿順位2位。そのほかの4人は名簿順位3位で並んでいます。
□□氏は比例名簿から外れない限り、ほかの4人よりも優先的に復活当選できます。
B党が3議席を獲得した場合を例にすると、名簿順位1位の○○氏、2位の□□氏は優先的に議席獲得。残る1議席をまず、名簿順位3位で並ぶ4人の重複立候補者が惜敗率で争います。
□□氏の惜敗率がほかの4人より低くても、名簿上位であることから□□氏が優先的に復活当選できます。B党にしてみれば、□□氏も「当選させたい候補者」だということです。

このように、比例名簿のつくり方で各党の戦略がみえてきます。
極論すれば、公示日、名簿を届け出る段階で勝負が決まっていることもあります。
ドラマチックな復活当選劇がある衆議院選挙の比例代表は、参議院選挙とはまた違ったおもしろさがあります。

得票からみえる各党の“地力”

最後に、最近の衆議院選挙の比例代表で、各党が北海道で得た票数をみていきます。

与党側が郵政民営化を争点に掲げた2005年(平成17年)の44回選挙、歴史的な政権交代が起きた2009年(平成21年)の45回選挙はいずれも民主党が得票1位でした。
民主党は、“勢い”のあった時代は得票が100万票を超え、とくに45回選挙は134万票余りと得票率で40%を超えました。このときの獲得議席数は4で、北海道ブロックの定員8の半数を占めました。
その後、自民党が政権を取り戻した2012年(平成24年)の46回選挙以降は、自民党が得票1位となっています。
ただ、民主党が強かった時代ほど“圧勝”しているわけではなく、自民党の得票数でいえば、実はいまの制度(「小選挙区比例代表並立制」といいます)となってからは、44回選挙の94万票余りが党としての最多記録です。

そして前回、平成最後となった2017年(平成29年)の48回選挙は、自民党が78万票近くを得て3議席を獲得しました。
続いて立憲民主党が71万票余りを得て3議席、希望の党が33万票余りを得て1議席、公明党が30万票近くを得て1議席を得ました。
こうしてみますと、北海道ブロックではだいたい得票率10%で1議席獲得の計算です。
数学的には、得票率が100÷(8+1)、11.1%で1議席を確実に獲得できます。
これに届かなくても1議席を獲得できるのは、議席を獲得できなかった政党が得た票がいわゆる「死票(死に票)」になるからです。

なお、最近の詳しい選挙結果については、こちらの記事、「衆議院選挙 北海道の結果を振り返る 小選挙区制下で各党は」もご覧ください。

衆参過去5回ずつ、得票率の推移を整理したのが上のグラフです。この間、比例代表に参戦し続けた政党について推移を示しています。民主党については、その流れをくむ2016年(平成28年)参議院選挙時の民進党、2017年(平成29年)衆議院選挙時の立憲民主党と希望の党も同列にしています。
自民党は、多少のデコボコはあるものの、得票率の推移で大きな変動はみられません。
一方、民主党とその流れをくむ各党はデコボコが目立ちます。そのときどきの“風”の影響を受けているともいえます。
このように、投票率にも左右される得票数と違って、得票率は各党の“地力”の推移がみえやすくなります。
一方、組織票が強固な政党は、得票率は比較的安定して推移しています。
政党への支持はかつてほど強固ではなく、最近は選挙のたびに投票先を判断する、「ふわっとした」支持が多くなっているとの指摘もあります。
つまり、“勢い”があれば爆発的に票を伸ばす一方、ひとたび支持を失うと急激に票が減る、“大勝”か“大敗”か、いわば振り子のように勝ち負けがはっきりする選挙が目立っています。

さて、令和最初の今回の衆議院選挙ー。
“地力”の目安となる比例代表の争いで、各党がここ北海道でどのように得票するのかも注目です。

2021年10月15日

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