神石高原町で林業デビュー 18歳新人の挑戦
- 2023年07月26日
森林大国である日本に欠かせない仕事である林業。しかし、林業は重労働のイメージもあり、従事者の数が40年で3分の1以下にまで減少しています。そんな中、この春から林業の世界に飛び込んだ10代の青年がいました。彼の挑戦を、同じくこの春から入局した新人ディレクターが取材しました。
はじめまして。この春からNHKに入局した、新人ディレクターの山本です。大阪出身で、ラーメン店巡りが趣味です。広島に来て3か月。最近は汁なし担々麵にハマっています!
私が特集デビューとして取材させてもらったテーマは林業。林業は森林大国である日本に欠かせない仕事ですが、重労働のイメージもあり、従事者の数が40年で3分の1以下にまで減少しています。そんな中、この春から林業の世界に飛び込んだ10代の青年がいました。彼の挑戦を、同じ新人である私が取材しました。
6月下旬。この日私が訪れたのは、新たに林業の道を選んだ人たちを対象とした、国がおこなう研修です。この日は、丸太をチェーンソーで切る研修がおこなわれていました。
そんな中、ひとりの若い男性を見つけました。美野翔太さん。18歳です。
私と同じく1年目の彼に、密着させてもらうことにしました。
9年ぶりに入ってきた、10代の若者
美野さんが勤めているのは、神石高原町にある森林組合です。 従業員は36人。高卒の新人が入ることは、美野さんで実に9年ぶりです。
美野さんの仕事について行ってみると…ひたすら草刈り。朝7時から夕方5時まで、かなりの重労働です。実は、林業の仕事は木を切るだけではありません。草刈りや測量、植林など多岐にわたります。
草刈りは、植えた苗を雑草から守るためにおこないます。
これが苗ですか?
そうですね。
伐採するまで数十年かかりますけど、育った木を切るというのは、自分も頑張って手入れした木だから、価値が大きいですね。
数十年先を見据えて働く林業。ロマンを感じます。
神石高原町で生まれた美野さん。幼いころから森に囲まれて育ちました。
ですが、林業の道に進んだ理由は「なんとなく」。学校の先生に森林組合への就職を提案されたのがきっかけでした。
なんとなくで始めた仕事ですが、先輩方の温かいサポートもあり、少しずつ林業の奥深さを感じてきています。
美野さん、初めての木の伐採に挑戦
この日、美野さんは新たな挑戦の日を迎えていました。美野さんにとって最大の目標である木の伐採に、はじめて挑戦します。
その指導役を担うのは、この道60年以上の大ベテラン、川村委助さん。82歳です。
まずは、川村さんが手本を見せます。
木を狙った方向に倒すには、まずは「受け口」という切り込みをしっかりと作ることが大切です。
下の面(赤色の部分)を水平に、そして斜めの切れ目(青色の部分)を下の面ときれいに合わせます。
そして、反対側に「追い口」という切れ目を入れます。 周りに人がいないことを確認したら、追い口の切れ目を深く入れ、木を倒します。
木が倒れる瞬間、ズシンと地面が揺れるのを感じました。
そしてついに、美野さんの挑戦です。
はたして…
こりゃいけんわ!
この受け口は下の面が水平になっておらず、切れ目もうまく合っていません。 これでは木は思った方向に倒れず、危険です。
名人・川村さんと比較するとその差は歴然。
美野さんはその後も挑戦しますが、なかなかうまくいきません。
やっぱり難しいですね。自分の課題としては、ちゃんと(切れ目を)水平にそろえられるようにすることです。焦っちゃうところもあるので、ちゃんと冷静に、一つ一つ順序を追って切れたらなって思います。
翌日、再び山には美野さんの姿がありました。 普段の作業終わりに練習にやってきたのです。
早く一人前になりたいという思いが伝わってきました。
するとそこに、
これ切った?
川村さんが美野さんを気にかけ、見に来てくれました。
何本も切ってないわりには、まあ…上出来じゃろ!そのうち慣れるけぇの。
自分も、失敗は数え切れんほどやってきとる。だから1回や2回失敗したって、大丈夫!
自分が教えてほしいときには言ってよ。すぐ行ってあげるけぇ。
ありがとうございます。
これから林業をやっていくにあたって、教わったことを生かしていきたいです。川村さんくらいになるまでには膨大な時間がかかるかもしれないですけど、あの人のようになりたいです。
美野さんの挑戦はまだ始まったばかり。周りの温かい協力とともに、一歩ずつ進んでいきます。
川村さんの温かい言葉は、取材していた私の心にも響きました。初めてのことに挑戦し頑張る美野さんと、それを見守る川村さんの姿を取材するうちに、自分もこれからもっともっと頑張ろうという気持ちになりました。これからも、広島のさまざまな話題をお届けしていきたいと思います。