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あなたの大切なモノって何ですか?山口・湯田温泉~前編~

  • 2023年06月30日

中国地方の各地で出会った人たちに大切なモノを伺う大切旅。今回は、美肌の湯の街として知られる【山口市・湯田温泉】を旅してきました。

白狐が見つけた温泉

JR湯田温泉駅で出迎えてくれたのは、高さ8メートルの巨大な白狐!その昔、ケガをした一匹の白狐が傷ついた足を温泉で癒していたという話があるそうです。

井上公園の足湯。白狐の親子がかわいい♪

街のいたるところに足湯がありました。こちらの足湯はかなり熱めでびっくり。2秒が限界でした・・(笑)。夜は部活帰りの学生やサラリーマンも疲れを癒していましたよ。

温泉街に異色のバー現る!

そんな温泉街に「Bar 田中ゲイ企画」というお店があると聞いて行ってみることに。ドキドキしながら入ってみると・・

あれっ、何だか楽しそう!

多くのお客さんがお酒を片手に会話を楽しんでいました。

バーのオーナー・田中愛生(たなか・あいき)さんです。去年3月にこのお店をオープンしました。

村上

どんなお店なんですか?

田中さん

お店にゲイという言葉を使っていますが、ゲイの方だけじゃなくて、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーといういわゆる性的マイノリティの方も、ストレートの方も誰でも入れる“ミックスバー”です。

自らゲイであることを公表してお客さんと接している田中さん。自分のセクシュアリティを意識したのは、料理を学ぶためスペインに渡った19歳の時でした。

田中さん

スペインに行ったら、いわゆる一般的な男性像の人たちがゲイとして社会で活躍していた。ファッション、映画監督、画家、ダンサー、みんなキラキラした仕事をしていて、それまでゲイっていうのはちょっとネガティブなイメージがあったのが急にかっこいい存在になった。そのとき自分のセクシャリティーを意識するというか受け入れることができたという感じです。ストンと腑に落ちたような感じ。

その後いったん帰国し、今度は生物学を学ぶためフランスへ留学。そこで出会った友人と帰国後一緒に事業を始めたいと考え、2019年、地域おこし協力隊として山口市に移住しました。しかし、新天地・山口での暮らしの中で違和感を覚えることもあったといいます。

田中さん

生活する中でゲイっていうことを隠しながらだと大変な場面がいろいろあった。私もその時ちょうど30歳くらいだったから周りから結婚について聞かれることも多かった。そんな中でゲイというのを隠しながらというのはすごく大変だなって思っていたんですね。

そんな中、大きな転機となったのがミスターゲイジャパンというコンテストへの出場です。これをきっかけに性的マイノリティのために何か貢献できないかと考えるようになりました。

山口初開催『レインボープライド』

田中さんの活動が大きく実を結んだのが、ことし5月5日行われた「レインボープライド」。性的マイノリティの人たちへの理解を深めてもらおうというイベントで、田中さんが実行委員長を務めました。

今回のイベントの個人的な目的は、“LGBTQの可視化”。その環境づくりのために、よき理解者「アライ」と呼ばれる人たちを増やそうというのも大きな目的でした。保守の大国と言われる山口でこうしたイベントを開催したというところだけでも、すごく大きな一歩を踏み出したんじゃないかなと思っています。


田中さんの大切なモノは?

性的マイノリティへの理解が進むよう力を尽くす田中さん。大切なモノを聞いてみました。

村上

田中さんの大切なモノって何ですか?

田中さん

母からもらった手紙です。

30歳のときに手紙で母親にカミングアウトをした田中さん。その後、お母さまからも手紙で返事が送られてきたそうです。とても素敵なので紹介させていただきます。

「え?!愛生さんそうだったんだ?」と、この母が言うと思った?そんなの知ってたよ。ちょっとした瞬間にもなんとなく匂わせるような努力をしていたようだったし、私は別に何とも思わない。というより、かえってそうであってほしかったような気もするんだよね。私がよその孫の話をする時「自分は孫を見せてあげられない」と言っていたのも全然つまらないとも思わないよ。私は自分の産んだ子以上に可愛い存在がこの世にあるとは思えないし。そうそう 愛生さんの愛は 母からの愛より世界中の老若男女から愛される愛の方がぴったりだね。本当にいい名前を付けたものだと自画自賛だよ。手紙をもらった日から毎晩酒がうまい!嬉しくて涙が出ちゃったよ。さて、では今夜も1杯やらせていただきます。ありがとう ベストラブ。

田中愛生さん

もらった時は泣きながら読みました。このカミングアウトをしたことがきっかけで、ミスターゲイジャパンに応募したり、こういうお店の仕事もなんの障壁もなくできている。一番最初の原点は、母が「そんなのは知ってたよ」って言ってくれたのが大きなパワーになっていると思います。

田中さんと母・直子さん

お母さまの愛に私もじーんときてしまいました。「みんなが幸せな世の中は、自分のありたい姿で、嘘いつわりなく過ごせること」と話す田中さん。それに近づけるために私たちができることは、まず正しく知ることだと感じました。性的マイノリティにどんな種類があるのか、どんな悩みを抱えているのか。本を読んだり話を聞いたりすることが第一歩につながると信じています。

来月は【山口市湯田温泉~後編~】を放送します。水がきれいな山口市徳地で小さな酒蔵を営む夫婦に出会いました。2023年7月4日(火)放送予定です。ぜひご覧ください♪

 

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