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収録を終えて~お・も・て・な・し、の心?

2014年02月14日(金)

「ハートネットTV」デスクのKです。

10月1日から、今月5回に渡って放送してきた
シリーズ「ワザあり“介護”」が、
再放送も含め終了しました。

番組では「介護が必要になっても、好きなことをして生活を前向きに送るための具体的な方法」をご紹介。
旅・食・アートをはじめ、視聴者の方々からも、
川柳作りや買い物、90歳になってのピアノ演奏など、様々な活動や、
それを実践するための
「介護者(家族など)によるちょっとした手助け」を沢山寄せて頂きました。

放送が終わって、とりあえずディレクターとほっと肩をたたき合っていたとき、
番組を見た同僚(大先輩)から一言。

「おつかれさま。ところで、ずっと言おうと思っていたけど・・・
『ワザあり“介護”』っていうタイトル、なんか違うんじゃないの?
と、厳しいご指摘を頂いたのでした。

じぇじぇ!(←古い?)、ど、どこがですか?


20131009_kaigo001.jpgのサムネイル画像
せ、先輩、どこが違うのでしょうか・・・・・?


「『介護』って、身体の動きを介助したり、生活に不便なところを支援したりすることでしょ。だから好きなことをやるためのサービスは、『介護』とは呼ばないんじゃない?番組の理念は否定しないけれど、ワザあり介護っていうと、視聴者に誤解されるでしょう」。

私「うっ・・・」(図星、かも)


実は、シリーズのタイトルは、
当初からディレクターたちとウンウン悩んでつけたものです。

ちょっとお勉強になりますが、【介護】と国語辞典でひくと、
「高齢者・病人などを介抱し世話をすること」(大辞林)、
「病人などを介抱し看護すること」(デジタル大辞泉)
などと出てきます。

そもそも、「介護」というコンセプトは、
戦争でケガや病気を負った、日本軍の軍人さんの救済対策を考える中で
作られたのが発端と言われています。
そこから発展して、公的に「介護」といえば、
障がい者や高齢者の、寝起き・食事・排泄などの手助けのほか、
掃除・洗濯・買い物など
日常生活の身の回りのお世話という意味を差し示すようになったようです。
 

というわけで、「ワザあり介護」というタイトルから連想されるのは、
確かに、もうちょっと直接的な介助のコツ、
たとえば、
ちょっと膝を曲げて支えると、介護される人も介護する人も楽ですよ」とか、
ここに手すりをつけると簡単に立ち上がれます」、
或いは「介護保険の賢い使い方」といったことになるのかもしれません。


・・・、ここまでは番組制作中から
ディレクターたちと議論していたことでした。

では、私たちが伝えようとしていることは一体なんなのか??


今回ご紹介しようと考えたのは、こうした「技」とはちょっと異なっていました。
取材させて頂いた80歳~90歳代の認知症のお年寄りたちは、たとえば、
☆トラベルヘルパーの力を借りて念願の里帰りの旅を果たすと、
 記憶があふれ出てきて、みるみる元気になったり
☆介護食士が作る「ゼリー食」のおかげで、
 家族そろって大好きな外食ができ、家族ともども笑顔になったり、
☆絵を本格的に習ったことがなくても
 臨床美術士の導きですばらしい作品を描いて、
 ほめられ、幸せな気分に包まれたり・・・。

直接的な介助や、身の回りのお世話ではありませんが、
介護の経験と技術がある人(プロの介護士だったり家族だったり)の、
+αのサポートがあれば、身体が不自由でも
好きなことやしたいことを実現できるようになってきています。
好きなことを諦めずトライすることで、生きる力がアップし、
日常の「介護(介助)のある生活」にも
彩りを与えてくれることが見えてきました。


。。。そもそも「介護」の目的は、介助や世話によって、生活の質を上げることですよね、ではこういうサポートも、広い意味で「介護」ではないでしょうか。(ディレクター)


と、半ば乱暴とも思える定義づけに、
先輩からだけでなく、広くお叱りを受ける覚悟です。
でも、「介護」に、「お世話」=ケアという意味も含まれるならば、
好きなことをやるための手助けや、精神的に前向きになるためのサポート、
または、直接的な介護に明け暮れる家族の息抜き場作りなんかも、
大事な「介護」の一環なんじゃないのか・・・。

そんなメッセージを込めて、
狭義の「介護」ではなく、
質の高い生活を送るためのエキストラなサポートを
広い意味で介護のワザととらえ、
さらに、語呂がいいというテレビ的理由から、
「ワザあり“介護”」というタイトルにしたのでした。
(一応、控えめに介護に“ ”をつけて・・・)


「○○さん、いかがでしょうか・・・。
 それにワザありってすると、なんとなく、見たいという気分になるでしょ?」
と、あらためて先輩に説明してみた私。

「う~ん・・・とくになりませんね。
 勝手に言葉の意味を広げるのも好きではありません」

「あっちゃぁ~(クロコーチ風)。。」(だめか、チーン)

「それを言うなら、お・も・て・な・し の心ですね。
 大切だと思うし、その発想は介護の中にも必要です。
 ただ、いまは、日々大変な思いをして、
 物理的介護(介助)に苦闘している人からすれば、
 【そんな余裕あるかっ】ていうところでしょう」


なるほど、またもや図星です。
考えてみると介護される人の気持ちになって、
きめ細かいサービスを行うのは実は介護の基本で、
日本人が本来得意とする分野なのかもしれません。
・・・その余裕さえあれば。

おもてなしのサポートを含めて介護と呼ぶかどうか
(それはビジネスではないのか、とか)、
結局、言葉を巡っての話は平行線を辿りました。

正確には、先輩の言うことが正しいと傾く一方、
メッセージ(向かうべき方向性)としては自信をもって発信したつもりです。
あとは受け手の方々の反応を受け止めながら、
「おもてなし」+狭義の「介護」=?の、
より良い言葉を探していければと考えている次第です。


最後に・・・。狭義の介護を巡って、今、現場は揺れています。
【そんな余裕あるかっ】と言いたくなるのももっともな状況です。
介護保険の改正に向けた動き(負担のアップや、いわゆる「要支援切り」)、
介護労働者の低賃金・離職問題など、公的な介護は問題山積。
ぼーっとしていると、「お・も・て・な・し」の心に、ただ乗りされて、
本来公的に支えるところも、
介護労働者や家族のボランティア精神に今以上に頼られるのではないか、
と危惧する声もあります。
(或いは結局、お金のある人や、いい地域にいる人だけ、
いいサービスが受けられるようになるのではないか、など)


こうした声に耳を傾けながら、
様々な公的介護の課題も、ハートネットTVでは伝えて参りたいと思います。
その時のタイトルは、「谷間だらけの介護」とか、「ワケあり介護」?。


10月シリーズ ワザあり“介護”  旅・食・アートの力

(本放送=夜8時、再放送=午後1時5分)

第1回 ―旅―
2013年10月1日(火)再放送10月8日(火)

第2回 ―食―
2013年10月2日(水)再放送10月9日(水)

第3回 ―アート―
2013年10月3日(木)再放送10月10日(木)

第4回 視聴者の皆さんからの反響から(1)
2013年10月21日(月)再放送10月28日(月)

第5回 視聴者の皆さんからの反響から(2)
2013年10月22日(火)再放送10月29日(火)

コメント

レトロさんのコメントに激しく同意です。
介護の仕事はシフト制で休みも不定期、
真っ昼間から夕方に電話なんてできない
でしょうよ。介護に限らず、普通の労働
ホットラインもそうだけど。

理想としては、利用者様ごとに個別対応
したいけど、人手・人材不足でどうしても
ルーチンワークになってしまうジレンマに
苦しんでいるのですよ、現場は。虐待だ
拘束だと判断が難しいグレーゾーンまで
黒にしかねない行政の目があるから、
利用者様にとって最善と思われる妥協策も
とれないし。

処遇・法律の改善も大事ですが、福祉・
障害に対する日本人の意識改革が
なければ、いくら良い法整備をしても
宝の持ち腐れです。例えば発達障害に
対する日本とアメリカの対応・世間の
反応・イメージは真逆。そこが改善して
いけば、介護職員の人員や質の向上も
見込めるのでは。

投稿:とれもろ 2014年02月21日(金曜日) 23時43分

そもそもね、もうすぐ介護される自分としては、自分らしく最後まで生きるにあたっては、自分の右腕となるような助手が必要なわけですね。認知障害を発症してもね、感情や生きてきた経歴は体が覚えているわけです。
たとえ、施設に入っていたとしても、朝はおはよう!から始まってごはん食べて寝るまで、人間らしい一日を過ごしたいと思ってる。
病院ってね、病気を見ていて、人間を見ていないですね。入退院を繰り返すとどんどん弱ってくる。生きる力がね。介護保険前夜から、この業界にいますけども、結局はどちらも、人間だから。あなた、行く先なのよと言いたいですわ。育児は子どもに聞くもの、介護は相手に聞くもの。

投稿:スミレ 2014年02月17日(月曜日) 07時54分

介護職員の相談とても良い取り組みだと思いますが、電話のみ日数限定ってのが不服です。シフト制で勤務時間帯がバラバラ、現場はバタバタしてるのに電話してる時間はないですよ。
多くの介護職員は待遇に不満を持ち、国家資格の介護福祉士の資格取得してもそんなに給料上がらない、へたしたら事務員の方が貰ってたりする現状…何のための国家資格か?他の国家資格は待遇良いのに介護福祉士は労働にみあわない待遇。要介護者ばかりクローズアップされ、介護者側は見向きもされない。認知症の方の介護してればストレス溜まりまくるのに、現場を知らない奴等が虐待などなんだの偉そうに話して自己満足してる。処遇手当出すならもっと現場に見合った政策もしてほしい。処遇手当出すからこれで勘弁してって言ってるみたいに思う。
認知症治療薬に関して厚労省がらみの不正がニュースになってたけど、あんた達がそんなんしてる間に現場は人手不足でバタバタしてて待遇不満で辞めてく人がいっぱいいる!!

投稿:レトロ 2014年02月15日(土曜日) 08時13分