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【出演者インタビュー】荻上チキさん「学校以外でも"教育を受ける権利"を実現できるよう社会は用意しなければいけない」

2016年04月14日(木)

20160407_o.jpg4月7日放送(4月14日再放送)
WEB連動企画“チエノバ”
シリーズ「不登校」 第2回“学校”って何だろう?
ご出演の荻上チキさんにメッセージをいただきました。

 

《荻上チキさん プロフィール》

1981年生まれ。評論家。ニュースサイト「シノドス」編集長。メディア論をはじめ、政治経済や福祉、社会問題から文化現象まで幅広く取材し分析。著書に『ウェブ炎上』『ネットいじめ』『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』など。


――「日本は学校以外の選択肢が弱い」というお話がありましたが、現在、学校のほかにはどのような選択肢があるのでしょうか。

 

たとえばフリースクール、オルタナティブスクールと呼ばれるものは選択肢として有名ですね。そのほかにもアメリカやイギリスを始めとしたいくつかの国では、ホームエデュケーション、ホームスクーリング、ホームベースドエデュケーションと呼ばれる家庭を中心とした学習のやりかたというのもすでに行われています。学校に通う以外の手段でも「教育を受ける権利」を実現できるよう社会は用意しなければいけませんが、日本はまだまだ少ないのが現状です。ですから、その状況が変われば、不登校と言われる児童・生徒たちにとってもより生きやすい、より学びやすい社会になるのではないでしょうか。


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――番組で行った調査では、不登校の子どもの約4割しか家庭学習をしておらず、そのなかでも世帯収入が少ないほど家庭学習に使える金額が少ないことも明らかになりました。その結果をご覧になってどのようなことを思いましたか。

 

家庭を中心とした学習だと、家庭ごとの経済格差や教育に対する熱心度が子どもにダイレクトに反映してしまうということがこれで浮き彫りになりました。今の学校制度というのは万全ではないけども、学校に通わせておけば最低ラインの教育は受けさせてもらえることをひとつの理念としてあるわけです。それこそまさに公教育なのですが、しかしながら「学校に通えない=公教育の理念が果たせない」ということになってしまうのは、社会としての厚みが薄いということになるので、なんとかしないといけないですね。

 

――子どもが学校に通えない場合、ほかの選択肢は親御さんが自分で探すということになるのですか。

 

そうですね。学校のカリキュラムから外れた段階で自己責任、自己決定の世界になり、どこのフリースクールに行って、どこにどういったお金を払うのかなどは自分で探すことになりますし、お金も自腹で支払うことになります。

 

――学校の先生が家庭に様子を見に来るときに、学校以外の選択肢を提示することはあるのですか。

 

ほとんどありません。学校の人たちは学校の状況を伝えたり、子どもの様子を見たりすることはありますが、そのほかの道については言わないですし、知らない場合も多いです。ですから、学校に通えなくなって1~2週間経った段階で、地域のスクールソーシャルワーカーの方がやってきて、「学校に通えるまでにこういった場所がありますよ」とさまざまなメニューを提示してくれるような“積極介入型の行政のあり方”というのも重要になってくるのかなと思います。そのうえで「うちは家庭を中心とした学習で行きます」という家庭があれば、それはそれでいいと思うんですよね。

 

――親に対して「放置する」と「見守る」は違うという話もありましたが、接し方も難しいものです。どういうことを念頭に置いて接することが大切なのでしょうか。

 

そもそも「親が対応を誤ってしまう=子どもにとって失敗になる」という状況こそが問題なので、社会がそこに対して手を差し伸べやすい状況を作ることが重要だと思います。今は親の会であるとか、フリースクールなどの選択肢があるので、親が一人で抱え込み過ぎないようにすることが第一の前提ということになると思います。

保護者というのは、自分が子どもの教育のニーズをすべて満たす存在になる必要はありません。そのニーズを満たしてくれる人に“つなげていくこと”が役割なんです。よく例えるのですが、子どもが病気になったときに、治すのは保護者の役割ですか?違いますよね。子どもを医療機関につなげることが保護者の役割です。だから、保護者は学校に行かなくても勉強できるようなオプションにつなげることが役割であって、そこから先は社会の役割なんですよ。その部分がまだまだ弱いということが今回クローズアップされたのだと思います。

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