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"2大会連続"は許されない ~アイススレッジホッケー パラ出場権獲得への道~

2016年12月06日(火)

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こんにちは、キャスターの山田賢治です。
夏のパラリンピックが終わったのも束の間、今度は冬のパラリンピックです!
2018年3月に開かれる韓国のピョンチャンパラリンピックに向けて、この冬はプレシーズン。すでに予選が始まっている競技もあります。

ピョンチャン大会では、6競技が行われます。
まずはアルペンスキークロスカントリースキーバイアスロン。日本はこの3競技に、前回(2014年 ロシア・ソチ)出場しました。そして、ソチではアルペンスキーの中の1種目だったスノーボードが独立し、ピョンチャンでは競技として行われます。団体競技は、アイススレッジホッケー車いすカーリング。残念ながら、車いすカーリングは11月に行われた国際大会で上位に入れず、出場権の獲得には至りませんでした。

一方、アイススレッジホッケーは、先週、日本で始動しました!
11月29日から12月3日まで、北海道苫小牧市が会場の「IPCアイススレッジホッケー世界選手権Bプール」で4チーム中3位までに入ると、来年秋に行われるパラリンピック最終予選に進出できます。

20161215_001.JPG会場の白鳥王子アイスアリーナ。黒が日本、白がチェコ。普段はアイスホッケーチーム「王子イーグルス」の本拠地で、日本代表強化合宿や国際試合にも利用されている。

※アイススレッジホッケーとは

ルールはアイスホッケーとほぼ同じ。1チーム6人で、15分3ピリオド制。切断や脊髄損傷など下肢に障害のある人が、「スレッジ」と呼ばれる、そりに乗ってプレーする。アイスホッケー同様に体当たりが認められていて、「氷上の格闘技」と言われる激しいスポーツである。


20161215_002.JPGフェンス際での攻防。激しいボディーチェック。


20161215_003.jpgスレッジ。選手が座るバケットシートは、それぞれの選手の状態によって形が異なる。


20161215_004.jpgスケートの刃はステンレス製で2枚。重心を左右の刃に移しながら進む。


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スティックは、一方の先端がパックを操り、パスやシュートをする“ブレード”、もう一方が、氷をとらえて漕ぐために使う、先が尖った“ピック”。写真はピック部分。



前々回、2010年のバンクーバーパラリンピックで銀メダルを獲得した日本。しかし、前回のソチパラリンピックでは最終予選で敗れ、出場できませんでした。キャプテンの須藤悟選手は、「2大会連続で切符を逃すわけにはいかない。パラリンピックを目指したってどうせダメでしょ、と思わせたくない。これからの日本のアイススレッジホッケーのためにも、きっちり出場権を取ることが大事。」と、予選前の最終合宿で意気込みを話していました。


20161215_006.jpg合宿後に須藤選手と。パラリンピックには、ソルトレーク大会、トリノ大会、バンクーバー大会と3大会連続で出場。訥々としたしゃべりの中に、日本を背負う、強い責任感を感じる。


その意気込み通り、日本は初戦、スロバキアに3-1。翌日、イギリスに6-0で勝ち、2連勝。これで、3位以内を確定させ、最終予選進出を決めました(さらに2位以内も決めて、次の世界選手権では、最高峰の「Aプール」に昇格することも決定しました)。

私は、予選リーグ最終日と決勝戦を取材。相手は、両日とも最終予選でも対戦することになる、チェコです。チェコとは、直近の国際大会(今年10月)で対戦していて、1対0で敗れています。何としても勝っておきたい日本。まずは、予選リーグの戦いです。

「試合の立ち上がりが課題。バタバタしてしまわないように」と話していた須藤選手。しかし、第1ピリオド、チェコの選手に対してプレッシャーが甘く、フリーにさせてしまう場面が目立ち、2点を取られてしまいます。その後も第2、第3ピリオドも攻め込まれる時間が長かった中で、ゴールキーパーの望月選手の好セーブもありましたが、結局2-0で敗れました。シュート数はチェコ20に対し、日本は4。チームでこの日の課題を確認し、翌日の決勝戦に臨みました。


20161215_007.jpg試合前の円陣。“立ち上がりが大事”を共通認識に。

 

決勝戦、日本は、前日とは違い、試合開始直後から積極的に攻め込みます。しかし、徐々にチェコペースに。相手のパス回しに翻弄され、予選リーグと同じ、開始4分台に失点。その後も相手に走り負けしてしまう場面が多く見られ、第1ピリオドと第2ピリオドでそれぞれ3失点。相手のポイントゲッターに5得点を許してしまいました。攻撃ではシュートは打っていきましたが、相手の堅いディフェンスを崩せず、試合終了。6-0と完敗でした。チェコは今大会、攻撃だけでなく、4試合無失点の守りで、他3チームを圧倒しました。

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パックを運ぶ、55番の高橋選手。得点まで、あと少し足りなかった。


 

20161215_009.jpg選手がベンチに入るときは、チームスタッフがスロープを出して入る。アメリカやカナダなどは、リンクとベンチの段差がまったく無いと言う。また、ベンチのフェンスは、選手の視界を考え、スレッジに乗ったまま試合が見られるよう透明なボードになっている。


試合後、中北浩仁監督は、「今日はフェイスオフから集中しろ、最初の3分間は向こうのエンドで戦えと試合を始めた。気合いは十分だったが、最初の1点を簡単に入れられたし、明らかに走り負けていた。日本は平均年齢38歳のチーム。若手を強化しないといけない。」と、最終予選進出に一定の評価をしていましたが、危機感を口にしていました。

キャプテンの須藤選手は「チームのおよそ半数がパラリンピックを経験していない。経験者がチームをけん引しないと。経験していない人はもっと頑張らないとだめだと分かってもらう。パラ出場は簡単じゃない、と覚悟していかないと」と気を引き締めていました。

銀メダルメンバーだった須藤選手は、「最高峰の場所、パラリンピックという大観衆の前でプレーすることが、自分たちの成長にも自信にもつながる。バンクーバー後に入った選手に経験させたい」と、言葉に力が入ります。最終予選までの課題は多いですが、それだけ成長できる、ということ。

来年秋、大きく変わった日本代表の姿を、ぜひ!


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