本文へジャンプ

維持したい「残存"脳"力」 ~国際福祉機器展 取材記~」

2014年10月02日(木)

10月上旬、東京で開かれた国際福祉機器展。600社近くが参加し、およそ2万点の最新の福祉機器が展示されていました。主に障害のある人やお年寄りのQOL(Quality of Life:生活の質)を高めるための福祉機器を見に、企業関係者だけでなく、介護に携わっている現場のみなさん、障害のある当事者のみなさん、さらに福祉を勉強している学生など、様々な立場の人が来場していました。その数、私が訪ねた初日だけで4万人以上!活気にあふれていました。

20141002_yamaken001.jpg

20141002_yamaken002.jpg


私自身、この福祉機器展を毎年取材していますが、今回は、より「脳を意識した」機器が目を引きました。「脳トレ」「脳クイズ」「運動で脳を活性化」といった表現で、楽しみながら脳や身体の機能を維持しようというもの。こうした機器は以前からありましたが、今回、そのバリエーションの多様さに驚きました。


20141002_yamaken003.jpg
ハートネットTV10月の特集は「福祉×脳科学」。先端技術が人間の脳にどう働きかけ、QOLを上げられるか。一方で使用者の機能変化や機器の評価など、使用後の検証を怠ってはいけない。


今回の取材で、企業の方から「福祉機器は、いかにしてその人の残存能力を維持し、生活の一部を補助できるか」という話を聞きました。これは、機器を使う介護現場からの複数の声だそうです。つまり、「福祉機器がその人の行為をすべて代替するのではなく、まだ動けるところは動かしてもらいたい。機器を使ったことで、逆に身体の機能が衰えたら意味がない」とも。さらに、「例えば、機器に埋め込むモーターが4つではなく、3つでも十分ではないか。そのような議論も必要だ」と話しています。身体を動かさない→脳の機能が衰える→ますます身体が動きにくくなる、といった悪循環につながる可能性があるからです。


20141002_yamaken004.jpg
入浴を補助する機器。車いすの人には補助リフトで浴槽内に移動(動力源の主流は「電気」や「油圧」だが、最近ではエコを考えて「水圧」も。機器には様々な角度からの付加価値が必要不可欠となっている)


20141002_yamaken005.jpg
またぐことが可能の人のために、手すりを設置できる。安全面を考慮し、浴槽内には滑り止めマットも。使う人の自力をいかに尊重し、維持できるか。


2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、超高齢社会がますます進みます。在宅での介護も増えると考えられることから、個人の購入に補助金を出したり、誰もが使いやすくメンテナンスも容易な機器を開発したり、と社会や企業の体制整備が求められます。

人間が人間たるゆえんである「脳」の活動。
障害があっても、歳を重ねても、残存“脳”力を維持することが、自身の尊厳の維持につながります。当事者の立場を十分に汲んだ様々な福祉機器が、日常生活に溶け込む日が来ることを期待してやみません。
 

 

◆10月シリーズ「リハビリ・ケア新時代 脳からの挑戦」放送予定
 本放送:夜8時00分~8時29分
 再放送:翌週午後1時5分~1時34分

第1回 2014年 9月30日(火)「心の声を届けたい」
第2回 2014年10月 1日(水)「宿命の病に挑む」
第3回 2014年10月 2日(木)「子どもの脳からのSOS」
第4回 2014年10月29日(水)「反響編」

コメント

※コメントはありません