クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
2018年10月10日(水)
追跡!スルガ銀行問題 ~超低金利時代の“闇”~

追跡!スルガ銀行問題 ~超低金利時代の“闇”~

シェアハウスへの投資トラブルで表面化したスルガ銀行問題。先月、第三者委員会は、営業の暴走や審査の機能不全、ずさんな経営管理体制が不正を拡大させたと断じる報告書をまとめた。元行員や不動産業者への独自取材では、融資条件に到底満たない人々の資産や年収のデータを偽装していた生々しい実態も見えてきた。「優良銀行」とされてきたスルガ銀行が、なぜ不正融資に走ったのか、その軌跡を時代背景を交えてお伝えする。

出演者

  • 中村直人さん (弁護士 スルガ銀行第三者委員会 委員長)
  • 矢嶋康次さん (ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

投資話の裏で…驚きの不正 スルガ銀行で何が?手口の詳細

個人向けの不動産融資で、数々の不正が明らかになったスルガ銀行。取材に応じた元行員は、目先の利益を優先するあまりにルールを逸脱して、強引な融資を行っていたと語りました。

スルガ銀行の元行員(審査部門)
「何が何でも、目をつむってでも(融資を)実行する形を作れという指示が出て。もしくは、そうせざるを得ないような状況になって、恐怖政治的な手法で行員を管理していくとか、組織を運営していくとか、そういった部分が全面的に出てしまっていた。」

この問題を調査した第三者委員会の報告書です。通帳のコピーや契約書などの書類を偽装していたことが明らかになりました。

スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者です。行員に頼まれ、通帳の預金残高を多く見せる偽装を行っていたと言います。

スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者
「7とカンマをコピーして、こういう感じで持ってくる。これだけで残高は730万いくつ。」

不正はどう行われていたのか。舞台は、シェアハウスなどの個人向けの投資用不動産でした。大手IT企業に勤めながら不動産投資を始めた奥山一郎さん(仮名)。スルガ銀行から1億6,000万円の融資を受け、今年(2018年)4月、このシェアハウスのオーナーになりました。安定した収益が得られるという誘い文句でしたが、想定が崩れ、多額の借金返済に追われています。

シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)
「資金的にけちっているので、(家具は)自分で1個ずつ入れるしかない状況。」

奥山さんのシェアハウスは、広さ4畳の部屋が15あります。しかし、そのうち9つが空室のままです。現在の家賃収入は合わせて月15万円余り。一方、銀行への返済額は64万円。毎月50万円近くの赤字が出ているのです。経費を少しでも抑えるため、週末にはみずから物件の清掃や備品管理を行っています。

シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)
「なんでこんなことをやっているのかなと思います。新築でこの入居率の状況ですので、それが今後もっと悪い状況にしかならないので、不安だらけ。」

奥山さんは、去年(2017年)3月、不動産販売会社からシェアハウスの購入を持ちかけられました。自己資金がゼロでも、全額、銀行から融資を受けられる。さらに、空室がどれだけ出ても毎月およそ90万円の家賃収入を保証。その収入があれば、銀行に返済しても手元に15万円残るという触れ込みでした。

シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)
「売り込みに来た販売会社は、あやしいなと思いました。私自身がそれだけの金額を借りられるとは思えなかったので、ほんまかいなと。」

半信半疑だった奥山さんに対し、1か月後、不動産会社が連れてきたのが、スルガ銀行の行員でした。その行員は、奥山さんに次のように話したと言います。

“スルガ銀行は、個人向けの融資にフォーカスしてやっているので、この物件に関しては、ちゃんと融資をすることができます。物件の入居率に関しては、今後も私たちが定期的に見ていくので大丈夫です”

シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)
「銀行も貸し倒れがあると困るので、物件価格とかを見た上で審査しているんだろうなと。その銀行が『満額を出しますよ』という話なので、もうこれは大丈夫なんだろうと思いました。」

ところが、スルガ銀行はこうした融資の過程で、本来守るべきルールを逸脱していました。スルガ銀行では顧客の返済能力を確かめるため、物件価格の1割、1億円の場合は1,000万円、自己資金があるか確認するルールが存在していました。

しかし、自己資金が足りない場合、不動産業者が通帳のコピーを改ざん。スルガ銀行は改ざんを指示したり、黙認したりしていました。こうした不正によってルールが骨抜きにされ、ずさんな融資が行われていたのです。

スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者は、不正な資料をもとにした融資が当たり前になっていたと言います。

スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者
「銀行も、もうやり方を知っている。不正は不正だけど、不正という認識よりは、(銀行と客との)橋渡しというイメージが強いです。」

奥山さんの通帳のコピーも改ざんされていました。左が本物の記録。右が銀行が保管していた改ざんされた記録。物件価格の1割、1,600万円を超えるように2,200万円に預金残高が改ざんされていました。

行員は、改ざんされたコピーを原本と違いないとして印鑑を押していました。さらに、行員が不動産業者に改ざんを具体的に依頼しているケースもありました。「エビ(=エビデンス)」とは、自己資金の確認書類。行員が通帳の残高を5,700万円に改ざんしてほしいと業者に頼んでいます。

スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者
「ある程度、改ざんを黙認してもらったり指示してもらったり、お互い(融資の)承認を取りたいという目標に向かって、一緒に動いているような状況でした。」

スルガ銀行は、金融庁の行政処分を受けて開いた会見で、少なくとも1,546件の不正が行われていたと明らかにしました。

なぜ投資用不動産融資で… 驚きの不正とパワハラの実態

スルガ銀行は静岡県で123年の歴史を持ち、創業以来、地域経済の発展に貢献してきました。なぜ、信用が第一の銀行が不正がまん延する組織になっていったのか。今回の問題で引責辞任した創業家の岡野光喜氏。

2000年以降、住宅ローンなどの個人向けの融資に特化していくようになります。しかし、銀行どうしの競争が次第に激化し、通常の住宅ローンでは利益を稼ぎにくくなっていきます。そこで乗り出したのが、個人向けの投資用不動産融資でした。その額は2008年度から3倍以上、4,000億円近くに急増。新規の融資額全体の8割を占めるまでになりました。

その結果、スルガ銀行は5年連続で過去最高益を更新。“地銀の優等生”とも言われるようになりました。しかし、好業績を維持してきた裏で不正が広がっていたのです。
第三者委員会は、5年ほど前から不正が一気に広がったとして、その背景に営業部門の暴走があったと指摘しています。銀行が当初設定した融資額の目標を、営業部門の幹部が増収増益を続けようと大幅に引き上げていました。ストレッチ目標と呼ばれた非現実的なノルマ。現場の営業マンは苦しむことになりました。ノルマ達成のため、上司から部下へのパワハラが横行していたことも第三者委員会の聞き取り調査から明らかになりました。

第三者委員会の聞き取りより
“上司の机の前に起立し、どう喝される。机を殴る、蹴る。持っていったりん議書を破られて投げつけられる。数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやると言われた。”

過度なノルマによって稼ぎ出された収益に依存するようになっていったスルガ銀行。営業部門の暴走を止めるべき審査部門も機能しなくなっていました。

スルガ銀行の元行員(審査部門)
「(営業部門は)審査部に対して完全に上から目線で、貴様ぐずぐず言っていないで、さっさと(印鑑を)押せ。ふざけたつまんねえことばかり言っているんじゃねえという感じの口調で、それで融資が実行してしまわれるということは、よく目にしました。」

経営陣も現場の問題から目を背けていました。3年前、スルガ銀行は投資用のシェアハウスを調査し、入居率が推計5割にとどまっていることを把握。しかし、その情報は適切に共有されず、融資の拡大に歯止めをかけられませんでした。今年4月、融資の取り扱いが最も多かったシェアハウス運営会社スマートデイズが破綻。そのことで、個人向けの投資用不動産を巡る不正があらわになったのです。

スマートデイズの破綻により、当初、約束されていた家賃保証も受けられなくなった奥山さん。1億6,000万円の融資をどう返済するのか、めども立たず、追い詰められています。不動産投資を始めたのは、家族のためでした。40代になってから授かった2人の子どもたちに、少しでも財産になるものを残せたらと思ったのです。奥山さんは、投資に失敗したと初めて妻に告げたときのことを、今でも忘れることができないと言います。

シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)
「恐らく、すごく心配がるか、ヒステリックになるかなと思ったんですけど、僕がかなりうろたえていたんだと思います。(妻は)力強く『まず物件を見に行こう』と。『まず物件を見に行って、回す方法を考えよう』と言ってくれました。(妻は)ずっと内職みたいなやつを見つけて、昼の時間にやっています。そういうのを思うと、申し訳ないと思っています。」

オーナーを支援 加藤博太郎弁護士
「最初からオーナーをだますようなスキームが、スルガ銀行を含めて作られていたことを考えると、普通の投資被害、投資をして損をした事案とは違うと思っている。(スルガ銀行には)金利の減免を含めて、オーナーにしっかり向き合って頂いて、オーナーが破綻しなくていいように一緒に考えて頂きたい。」

追跡!スルガ銀行問題 驚きの不正はなぜ?

武田:スルガ銀行は今回、6か月の一部業務停止という行政処分を受けました。銀行としては5年ぶりの非常に厳しい処分です。スルガ銀行は専門の部署を設けて、オーナーたちに対応していくとしています。

鎌倉:今回、第三者委員会が指摘した不正や不適切な行為は、書類の偽装や業者からの接待など、実に多種多様な形でまん延していました。

こうした不正の原因について、第三者委員会は主に3つ指摘しています。まず1つ目、営業現場の暴走です。聞き取り調査では、釣り堀に魚が10匹いないのに、10匹とってこいと言われる状況で、その結果、不正が全くない案件など全体の1%あったかどうかと答える行員もいたんです。次に、審査の機能不全です。それを象徴するのが、審査承認率99%という数字です。つまり、営業部門が挙げてきた融資のほとんどすべてが審査を通っていた状況なんです。営業部門の圧力で審査の独立性が失われ、チェック機能が働いていませんでした。

武田:そして3つ目は、ずさんな経営管理体制です。経営陣は現場の不正を見過ごし、営業現場の暴走を許しており、これが無責任だと断じています。これについて第三者委員会の委員長に直接聞きました。


武田
「営業現場の暴走、止められない経営層。構図を目の当たりにしてどう感じたか?」

第三者委員会 委員長 中村直人弁護士
「営業現場の本部長以下が、いい数字を作って、会長、社長、副社長に持っていって、褒めてもらいたい。悪い情報を絶対に持っていってはいけないと自制をしている。経営層は現場の悪いことについて『報告を受けない』『知らない』という形になって、現場側が暴走し始めるという構図。」

武田
「同じ会社で、現場の暴走を感じることはなかったのか?」

第三者委員会 委員長 中村直人弁護士
「雲の上で下界の汚いことはまったく知らずに、数字だけを享受している。我々からすると経営陣はけしからん。」

積極的な融資を背景に… 高まる不動産投資熱

鎌倉:今回の問題が起きた背景として、ここ数年の個人の不動産投資熱の高まりがあります。こちらは、国内の銀行全体の個人向けの投資用不動産への融資残高、その推移です。ここ数年、積極的に銀行は融資をしてきたことが分かります。しかし、今回の問題を受けて、金融機関は融資に慎重になり始めているんです。

武田:そこで不動産投資家たちに、どんな変化が起きているのか密着しました。

それでも冷めない投資熱 “不動産で稼ぎたい”ワケ

先月(9月)末、不動産投資をするサラリーマンや主婦たちが集まる情報交換会が開かれていました。参加していたのは20代から50代のおよそ20人。

参加者
「メーカーのサラリーマン。」

参加者
「建設業のサラリーマン。」

会を主催する主婦の杉村八千代さんです。

マンションオーナー 杉村八千代さん
「今、スルガ銀行のおかげで銀行の窓口がとても狭くなりました。銀行開拓も、不動産を探すことも諦めず、負けずにがんばっていきましょう。」

銀行が個人への融資に慎重な姿勢を見せ始める中、なんとか投資を続けていきたいと思っています。杉村さんが不動産投資を始めたのは、今から3年前のことでした。

「すごいかっこいい車ですね。」

マンションオーナー 杉村八千代さん
「不動産をやり始めてから買った。お金を貯めて買った。」

現在、3棟のマンションを所有している杉村さん。部屋はすべて満室です。

マンションオーナー 杉村八千代さん
「“満室”にこだわらないと、賃貸事業として成り立たない。」

投資を始める前、杉村さんは生活のゆとりがなかったと言います。自動車部品工場に勤める夫の年収は500万円ほど。家計を支えようと清掃などのパートをしていました。老後のために資産を増やしたいと思っていましたが、預貯金だけではとても安心できなかったと言います。

マンションオーナー 杉村八千代さん
「将来が豊かになるイメージが全然わかないと思う。前は定期貯金や積み立てで一生懸命増やしてきていたが、(金利)0.1%とかになってしまっているので、それで老後のために備えようというのには厳しいと思う。」

不動産投資が人気を集めていることを雑誌などで知り、自分も投資に乗り出すことを決めました。杉村さんは、2億3,500万円で3棟のマンションを購入。その全額を地元の信用金庫に融資してもらい、頭金なしで買うことができました。3棟がすべて満室になれば、毎月の家賃収入は合わせて144万円。そこからローンの返済や諸経費86万円余りを差し引くと、杉村さんの手元には毎月57万円余り残る計算です。

マンションオーナー 杉村八千代さん
「大きなお金が動きますけれども、残るお金も大きいので。運用していけば通帳にどんどん貯まっていくという実感を覚えると、これでしっかり満室にしていけば(運用)できるんだなと思った。」

杉村さんの最終的な目標は、マンションを6棟に増やすこと。部屋が埋まらないリスクに備えるためには、部屋数を増やすことが必要だと考えているからです。

マンションオーナー 杉村八千代さん
「走り出したら不動産業は、どこかで立ち止まるより、ずっと(不動産を)持っている限り続いていく仕事だと思う。」

スルガ銀行の問題が起きたあと、投資の計画に影響を受けた人もいます。アパートへの投資を考えていた男性です。2月、男性はある地方銀行に、およそ1億円の融資を申し込み、金利1.8%で仮審査が通りました。しかし、スルガ銀行の問題が発覚したあと、融資は取りやめになりました。別の地方銀行に融資を申し込んだところ、金利は当初よりも高い2.55%。返済額は1,600万円以上増えることになりました。返済額が増えても一定の利益は確保できると考え、投資に踏み切りました。

アパートに投資した男性
「絶対(お金は)増えないから、投資を考えなければいけない。多少、痛手を負ったけれども、アウトかセーフかと言えば、なんとかセーフの方に滑り込んだかなと思っている。」


武田:超低金利の中、不動産投資に乗り出す人たちが後を絶たないという現状について、不動産投資セミナーの主催者は、こう話しています。

武蔵コーポレーション 大谷義武社長
「『将来への不安』が最大の要因。『将来不安』が無ければ、ここまでの不動産投資市場は形成されていない。その不安が、ますます加速している。」

追跡!スルガ銀行問題 低金利に苦しむ地銀

鎌倉:一方、金融機関も長引く低金利によって苦境に立たされています。全国の地方銀行106行のうち54行が昨年度、融資などの本業で赤字になっているんです。

武田:こうした状況の中、金融庁は、高い利益を上げてきたスルガ銀行のビジネスモデルに対して、一定の評価をしてきました。しかし、不正のまん延は見抜けなかった形で、監督の在り方も問われています。金融庁の責任をどう考えるのか、専門家に聞きました。

追跡!スルガ銀行問題 金融庁の責任は

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次チーフエコノミスト
「スルガ銀行だけではなくて、地方銀行が置かれた環境はどこも同じ。『他にもあるんじゃないか』と多くの国民、金融機関も思っている。金融行政が急いでやらないといけないのは、不正融資の問題がスルガ銀行だけの問題なのか、他の銀行、企業を含めて、類似のことが起きていないか識別、判断することがいちばん急がれるべき。」


鎌倉:金融庁は、他の銀行でも投資用不動産向け融資が適切に行われているか、実態の把握を急ぐ方針を示しています。

武田:無理な融資を続けてきたスルガ銀行。その結果、多額の負債に苦しむ投資家たちの姿。それは、かつてのバブル時代をほうふつとさせるものでした。スルガ銀行の問題から、私たちは今度こそ、教訓を得なければならない。強く思います。