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2017年9月19日(火)
50代でも遅くない!中年転職 最前線

50代でも遅くない!中年転職 最前線

かつて転職市場でささやかれた「35歳の壁」。しかし今、40代50代の転職市場に異変が起きている。ある人材会社の調査によると、41歳以上の転職者は5年で2倍近くに急増。 医薬品メーカーでは、この春初めて「年齢不問」の採用に踏み切った。「転職して給料はどうなるの?」「採用面接では何を評価しているの?」など、リアルな疑問にも答えながら、様変わりする“おじさん転職”の最前線に迫る。

出演者

  • 黒田真行さん (ミドル専門転職コンサルタント)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

転職300万人時代 40~50代でも遅くない!?

「日々、仕事をしていて辞めたいと思わないですか?」

43歳 小売業
「もちろん思いますけれど、転職先もそんなにあるとは思えない。」

49歳 学校法人
「もう50歳近いと(転職先が)ない。そこで求められるものを考えると、今いるところにいた方がいいかな。」

51歳 専門商社
「万年課長みたいなものです。もう長いですよ、10年ぐらい。そこでしか生きられないタイプなんです。」

いえいえ、サラリーマン人生諦めるのはまだ早い。かつて35歳といわれた転職の壁が、今大きく変わろうとしています。大手外食チェーンで13年間ずっと店長。行き詰まりを感じていた43歳が、不動産会社に転職。貸し会議室の新事業を任され売り上げをアップ。関西エリアの責任者に抜てきされました。

「モチベーションは最高潮ですね。前職では当たり前にやってきたことが、この業界ではすごい斬新なアイデアにみられたり。本当にいい転機になったなと思っています。」

この先、自分に引かれたレールが見えたと感じた化粧品メーカー課長45歳が、コンタクトレンズのケア用品メーカー、マーケティング部長に転身。主力商品をヒットさせ、今では執行役員。経営戦略まで担っています。

「今までは与えられた仕事。今は与えられた仕事以上に、こういうこともできる、あんなこともしないといけない。非常にチャレンジング。年収は前の会社よりは上がりました。」

転職者の数は増え、今年(2017年)300万人の大台を突破。企業の人手不足の波は、マネジメント層にも広がっています。特に、やりがいを求め転職する40代以上は、この5年で2倍近くに増えています。

いよいよ本格化し始めたミドル世代の転職。その成功の秘けつにある共通項が見えてきました。

急増するおじさん転職 採用のウラ側

森下仁丹ウェブ広告より
“案外、オッサン達がこの国の希望かもしれない”

今年3月、大阪の医薬品メーカー、森下仁丹が行った社員募集が大きな反響を巻き起こしました。

森下仁丹ウェブ広告より
“オッサンも変わる。ニッポンも変わる。”

年齢や専門性、一切不問。10人の募集に自動車のエンジニアから学校の校長まで2,200人が殺到しました。この会社が中高年をターゲットにした採用に踏み切ったのは、社長の駒村さんのある危機感からでした。

森下仁丹 駒村純一社長
「社長が言っているからやってみようというレベルなんだよ。そんなもの組織ではない。」

仁丹のCM(1982年)
“俺だって持ってんのに、仁丹”

80年代、口の中をすっきりさせると、おじさん世代の間で大ブームとなったこの商品。しかし、90年代に入るとミントに押され売り上げが激減。一時は30億円の負債を抱えました。14年前、大手商社から立て直しにやって来た社長の駒村さんは、事業構造の転換に着手。次々と新製品を生み出してきましたが、変革の時代を迎え新たなイノベーションの起爆剤となる人材を探していたのです。

森下仁丹 駒村純一社長
「我々のやっている事業に慣れ親しみすぎていない人。違う価値観を持っている人。社員の心境、モチベーションが上がって、もっと生産性を高めてくれるんじゃないか。」

220倍の難関をくぐり抜けたのが、40代から60代のこちらの10人。家電やホテル業界など、半数は医薬品と全く無縁の人たちです。

さぞかし輝かしい経歴や肩書を持ったスーパーエリートを採用したのかと思いきや。

採用を担当した幹部
「アメリカの何々大学でMBA取得とかいう人も多かったですよね。」

採用を担当した幹部
「華々しい経歴の方が、いっぱいいましたよね。」

「そこは評価のポイントには?」

採用を担当した幹部
「してないですね。」

採用を担当した幹部
「どういう人生を歩んできたかっていうのが、そこですよね。」

採用を担当した幹部
「そこですよね。」

採用を担当した幹部
「意外と失敗しているほうが、そういう柔軟性があるのかなというふうに見えた。」

採用を担当した幹部
「われわれも不透明というか、分からないことにチャレンジして日々やってるので。」

採用を担当した幹部
「どれだけ、人の意見とか聞きながら自分の思考を変えていけるかとか、そこはすごい重要だなと思って見ました。」

採用を担当した幹部
「議論に打ち負かすような形で、しゃべるだけが発揮のしかたじゃないわけです。聞き役に回っても、この人何も言ってなかったけど最後えらい、うまいことまとめるやんみたいな。最後はコンセンサスですから、やっぱり納得感とか。」

人間性重視で選ばれた一人が志賀健さん、48歳。IT業界から転職し出社初日を迎えました。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「新しい学校に入るみたいですね。なじめるかなって、友達レベルの話。」

配属先はヘルスケア事業本部。商品の販売戦略にITを使ってイノベーションを起こすことを期待されています。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「改めまして志賀でございます。よろしくお願いいたします。」

早速、販売戦略会議に参加。社員が現在の主力商品である健康食品の説明をしていると…。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「これ、違いなんですか?」

社員
「きんすう。」

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「なんですか、“きんすう”って?」

社員
「ビフィズス菌の菌の数。どのくらい商品の中に入っているか。」

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「もう2度と言いませんけど、マジっすか。わかりづら。」

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「40何年間生きていて、菌の数、気にしたことないですわ。」

社員
「そらそうだよね。」

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「(菌が)ガーって寄っていくビジュアルってゲームなんですよ。」

社員にとっては新鮮すぎるコメントばかり。

同僚
「今までにない人物だと思います。」

「ひと言でいうと、どういう人物?」

同僚
「宇宙人。」

IT業界から転職してきた志賀さん。実は、ほんの少し前まで転職活動は苦難の連続でした。43歳のとき、勤めていた外資系IT企業の業績が悪化し整理解雇。その後、脳梗塞を発症し、1年間リハビリ生活を送りました。体調が回復したのは45歳のとき。同じIT業界での再就職先を探しましたが…。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「応募済み。217もしていますよ。」

闘病経験がネックになったのか、50歳を目前にした転職は行き詰まっていました。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「いくら自分が頑張ろうとしても、活躍の場がないんじゃないかと思う。しんどいですね、それはかなり。」

風向きが変わったのは今年の春。企業の人手不足が強まる中、採用を始めた今の会社の記事を妻が目にしたのです。

妻 いずみさん
「記事の中に『会社の変革を情熱を持ってできる野武士のような人を欲しい』とあったので、彼のキャラクターはとても合ってるんじゃないかと思って。」

転職初日。突然、社長に呼び出された志賀さん。

森下仁丹 駒村純一社長
「うちはさ、IT環境の面から見ると非常にアナログですよ。どこにネックがあって、どこに問題があって、どういう方向で動いたほうがいいか。」

3か月以内に新たな販売戦略プランを提案するよう命じられました。転職早々訪れた試練。果たして乗り越えられるのでしょうか。

転職300万人時代 40~50代でも遅くない!?

ゲスト 黒田真行さん(ミドル専門転職コンサルタント)

40代、50代を積極的に活用しようという流れは、本当に広がっているのか?

黒田さん:ベースは非常に広がっているといえると思います。森下仁丹さんみたいな積極的なミドル活用の事例はまだまだ少ないんですけれども、どうしても昨今、人手不足が激しくなっているという中で、基本的には若手を採用したいんだけれども、若手は採りきれない、あるいは若手だけでは足りないということで、消極的なミドル採用っていう形のケースも増えていると。結果的に35歳の壁が40歳の壁になりつつあるという状況なんです。

全く違う業界への転職も増えている?

黒田さん:異業種、異職種への転職というのは、非常に増えています。背景には産業構造の変化ということで、製造業中心だった世界から、インターネット、IT、サービス業というところに業種構造が変化しているので、人材の流動も業種を超えているという状態があると思います。

ミドルの人材は、どのくらい眠っているのか?

黒田さん:一説には、約500万人ぐらいのリストラ予備軍という言い方があるんですけど、大企業を中心に、人余りがあると。一方で、ベンチャーとか地方の中小企業を中心に、ベテラン人材が不足しているということで、まだまだミドルの適材適所化っていうのは、進める余地があると思ってます。

そうはいっても、本当に自分ってつぶしがきくのかと、無理じゃないかなと思ってる方が多いんじゃないかと思うんですが…。

鎌倉:そこで鍵を握るのが、“ポータブルスキル”です。業種や職種の垣根を越えて発揮できる、汎用性の高い能力のことです。ごく普通の中年のサラリーマンでも、それまでの仕事で培ったなんらかのスキルがあるはずだということなんですが、例えば通販会社のアパレル部門から、畑の違う菓子メーカーの経営企画課長に転職した女性。評価されたポータブルスキルは、“女性の好みに精通していること”でした。販売戦略を一新して、商品の売り上げアップにつなげました。また、生命保険会社の営業部長だった男性は、食品メーカーの品質管理部長に転職。そのポータブルスキルはといいますと、“パートやアルバイトの管理能力”。地道なルーティン業務を行う現場スタッフのモチベーションを高めてきた経験を、工場で働くパートの管理に生かしているんです。そして、VTRに出てきた志賀さんも、ITから医薬品メーカーに移りましたが、見込まれたのは、ITの知識だけではありません。採用時に会社が行った調査では、異なる立場の人たちを説得してモチベーションを上げていく、“モチベート力”があると診断されていたといいます。3、4年前から転職人材を発掘しようとする企業の間に広がり始めているこのポータブルスキル。一体どのように見つけるのか、体験してきました。

転職の切り札!? ポータブルスキルとは

鎌倉キャスターが訪ねたのは、中高年の転職をサポートしている会社。ポータブルスキルの診断を行っています。

鎌倉キャスター
「書いて参りました。」

最初のステップが、これまでの仕事を丁寧に見つめ直すこと。担当してきた業務やモチベーションの浮き沈みまで記入します。“担当番組がゼロになって落ち込んだ”なんて結構シビアなことも書くんですね。

ヒアリングでは困難にぶつかったときにどう乗り越えたのかなど、そのときのエピソードをつぶさに聞かれます。

キャリアコンサルタント 小澤松彦さん
「どういう風なコミュニケーションをとっていたんですか。」

鎌倉キャスター
「ロケによっては、コーディネーターさんが途中でいなくなってしまって。イチから出直しで、その村に日本語ができる人いませんか、からスタートしたりとか。」

キャリアコンサルタント 小澤松彦さん
「ギリギリの中での判断力を重ねていくということなんですね。」

4時間後、明らかになったポータブルスキルは27個。仕事で培った国際関係の知識やSNS情報力などのスキルだけでなく、“小さなことを積み重ねる力”“人の役に立ちたい力”など、自分では気付かなかったスキルも明らかになりました。

洗い出されたポータブルスキルを組み合わせて転職先を検討していきます。お勧めは同じ業界と思いきや…新興国担当の営業職。思いもよらない職業でした。

小さなことを積み重ねる力、気付いてなかった?

鎌倉:それが転職の評価になるとは思ってなかったんですよね。アナウンサーとしての専門能力、例えば人前で話すこと、そういうことが評価の対象になるかと思いきや、むしろ、なんていうんでしょう、周辺の力、自分でも自覚していなかったところが評価されたので、正直、驚きました。

ポータブルスキルを使って人材を見つけようという企業は、実際にはどのくらい広がっているのか?

黒田さん:特にまだまだ認知度が低いベンチャー企業であったり、中小企業。あるいは変革期を迎えた老舗企業なんかで、企業の体質を変えたり、あるいは競争力を高めるために、ポータブルスキルに着目する企業は増えています。

実際にポータブルスキルを活用しようという人たちも増えているんですね。業種も職種も異なる会社へ飛び込んだ、この転職組の力。新たな会社で果たして通用しているんでしょうか。あの男性、本当に大丈夫なんでしょうか。

急増するおじさん転職 新天地で輝くには?

転職先で3か月以内に新たな事業の立ち上げを命じられた志賀さん。この日は、クレームや注文を受け付けているコールセンターへやって来ました。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「実際のコール数はどうですか?」

社員
「いっときのピークよりもどんどん減ってきている。ほんとに“コストセンター”と言われてしまう。」

社内でもたびたび議論となってきたコールセンター。しかし、転職組の新たな視点でオペレーターのやり取りを聞いてみると、新鮮な発見がありました。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「(相手が)ぼやっと健康相談をする中で(商品の)買いにつなげるって、すごいですね。こういう風に顧客と関係性を結ぶと、個人で指名される方がいるんじゃないですか。」

社員
「『前のあの人、呼んで』というのはありますね。」

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「それはすごいですね。」

オペレーターたちの豊富な健康知識と丁寧な応対は他社にはない強み。これを生かして客のニーズに合わせた商品を的確に進める拠点にできるとひらめいたのです。しかし、オペレーターは今の仕事で手いっぱい。一体どうすればいいのか。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「こんにちは。お久しぶりでございます。」

頼ったのは、転職前の人脈。友人が営むIT企業です。電話での簡単な問い合わせをAI・人工知能が応対するサービスを提供しています。今まですべての電話に対応していたオペレーター。志賀さんはコールセンターにAIのシステムを導入しオペレーターの負担を大幅に軽減。より複雑な相談にたっぷりと時間をかけられるようにと考えたのです。

転職組ならではの人脈の広さが、社内の問題解決に役立とうとしています。

AIサービス会社 石田正樹代表取締役
「志賀さんのたってのお願いだったらやるかって感じですよね。」

では、肝心のトップをどう説得するのか。志賀さんは現場の声を集めて、この提案を後押ししてもらおうと考えました。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「『これがあったら、もっと喜ばれたのに』っていうポイントをじゃんじゃんあげて頂きたい。」

しかし、コールセンターの社員たちは、提案に興味を示しつつも声を上げることには後ろ向き。

「いろいろ計画したりっていうのは(過去にも)あったんですけど、そんなことして何になる、みたいな。」

過去に現場から提案したものの、経営層に届かなかったことがあったというのです。ここで志賀さんは、採用時に評価されたポータブルスキル、モチベート力を発揮。現場を励まします。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「リスク取って手を挙げたやつが得するという姿は見せなきゃいけないと思う。誰か手を挙げなければいけない。そこは旗振りしますんで、みなさんも恐れずに手を挙げていただいて。」

1週間後。社員が持ってきたのは、現場のオペレーターたちが書いたサービス向上のアイデア。

社員
「ほぼ(オペレーター)全社員。」

その数40通。入社間もない志賀さんの呼びかけに応じ、現場の気付きや経験が詰まったリアルな声を集めてくれました。転職から2週間。志賀さんは、練り上げたプランを社長にぶつけます。

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「信頼した人から(商品を)選ぶというのが、当たり前ですけど商売として。相談というサービスなど付加価値のほうを求めた結果、それを解決してくれるものとして商品を選ぶ。」

森下仁丹 駒村純一社長
「人のパワーを使う時に生産効率を上げるには、AI化ってすごく大事。ただ、結構、どんどんコストが上に乗っかってきそう。」

社長の駒村さんは、これまでにない新たな提案に一定の評価を与え、さらにAI導入のコストを詰めるよう指示しました。

森下仁丹 駒村純一社長
「今までのやり方を踏襲するんじゃなくて、新しいモデルを自分で、うちを利用して、この会社を利用してやっていこう、というタイプの人が本当は欲しい。かなりそこの効果、期待感がある。」

IT業界から転職 志賀健さん(48)
「何かに爪痕残して死にたいじゃないですか。それがないまま死んじゃうの、やっぱ嫌じゃないですか。」

急増する中年転職 その落とし穴とは?

“自分も転職できるんじゃないか”と思っているミドルの方も多いと思うが、落とし穴はないのか?

黒田さん:1つ目の落とし穴は、年収がダウンするリスクが高くなるというのは、どうしてもミドルの転職につき物かなということです。ただ、あんまり初年度の年収にこだわらない方のほうが、結果的に5年、10年たったときに、当初より年収が大きく上がるというケースも多々ありますね。
(最初からあまり自分を高く売りすぎないことも大事なんですね)
2つ目は転職活動がやっぱり思ったより長引くリスクがあるので、どうしても退職してから、転職活動ではなくて、働きながら転職活動をされることを、極力お勧めしているというのがポイントです。あとは、不満型転職ですね。あまりにも他責型、自分がこうなっているのは、誰かのせいだというような他責型の転職になると、面接でもやっぱりそれを見破られてしまって、なかなかいいサイクルに持ち込めないというケースがあります。

リスクもあるが現状を変えたいと思っている方に、どんなアドバイスをするか?

黒田さん:ひと言で言うと、自分の墓標に何を刻まれたいのかと、何を成し遂げた者がここに眠るというふうに、自分の人生を終えたいのかということを想定して、そこから逆算して、仕事人生の後半を歩まれるっていうことをお勧めしています。
(自分のポジションとか年収とかではなく、何をやりたいか?)
収入とかポジションではなくて、自分の強みを生かして、何をやれば必要とされて、期待されるのかということですね。

長く会社に勤めてますと、その会社での役割が自分の能力のすべてであるかのように感じてしまいがちです。しかし、まだ気付いていない力があるかもしれない。その力を生かせる場所はあるかもしれない。そう自分を見つめ直すことで、前向きに働いていけるようになるのではないかと思いました。