クローズアップ現代

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2017年8月2日(水)
「週休3日」最前線 収入はどうなる?残業は?

「週休3日」最前線 収入はどうなる?残業は?

宅配便業界求人などで話題となった「週休3日」。今「人手不足」を背景に、「週休3日」の導入に踏み出す企業が増えている。既に導入された現場では、「育児や介護との両立がしやすい」「プライベートが充実」「採用が好調」などのメリットがあがる一方、「必要な要員の増加」「残業代の減少による給与の目減り」など、様々な課題も見えてきた。そんな中、「週休3日」を導入しつつ、社員の収入アップや、企業の業績アップにつなげた例も。「週休3日」の実情を伝え、「働き方改革」の方向性を探る。

出演者

  • 佐藤博樹さん (中央大学大学院教授)
  • 西村創一朗さん (人事コンサルタント)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

「週休3日」大革命 収入はどうなる?残業は?

今、さまざまな企業で「週休3日」の導入が始まっています。収入や残業は、どうなるんでしょうか。

大手宅配会社の募集で話題を呼んだ「週休3日制正社員」。人手不足に悩む業界を中心に、今や10年前の倍以上の企業に広がっています。実際、就職希望者が増えたという企業も。さらに、「週休3日婚」まで登場。
でも、不安や疑問も尽きません。休みが増えた分収入は本当のところどうなるのか?仕事がたまって、出勤日は帰りが遅くなるのでは?そもそもそんなに休んで会社の業績は大丈夫なのか?
「週休3日」をきっかけに副業を始めるなど、増える働き方の選択肢。その最前線に迫ります。

鎌倉:国の調べによりますと、週休3日以上の休みを導入している企業は、全体の5.8%。10年前の倍に広がっています。どういった企業なのか、こちらです。

業種はさまざまで、去年(2016年)から今年(2017年)にかけて、大企業が続々と導入しています。ただ、同じ「週休3日」でも企業によって違いがあります。例えば、佐川急便やユニクロなどを展開するファーストリテイリングでは、1日の所定労働時間を2時間増やして、10時間勤務を週4日、つまり週の労働時間は40時間で、これまでと同じです。そのため給料も変わりません。一方、フライドチキンの日本KFCホールディングスやヤフーでは、1日の所定労働時間は8時間のままで4日。週の労働時間は32時間に減るため、こちらは給料も減ります。多くの企業は、この2つのどちらかを導入しています。

いち早く「週休3日」を導入しているのは、人手不足を解消したいという企業です。そこでは実際にどんな変化が起きているんでしょうか。

「週休3日」最前線 収入はどうなる?残業は?

福岡県北九州市の介護施設です。

高齢者を短期間預かって介護するショートステイなどを行う、この施設。去年4月から、社員のうち7人が週休3日制で働いています。休みを増やすことで、プライベートを充実させやすい環境をつくり、人材を確保しようという狙いです。
「週休3日」で働く時間はどう変わったのでしょう?
正社員の豊澤妙子さん。この日は夜勤のため、夜9時に出勤してきました。

週休2日だった頃の豊澤さんの勤務です。1日の所定労働時間は8時間。それが週に5日。うち2日が、たいてい夜勤でした。夜勤は休憩を入れて通しで16時間の勤務。これが週休3日になると、1日の所定労働時間は10時間に延長されました。そして夜勤も日勤と同様10時間に。休みは増えたものの、週の労働時間は40時間のままで以前と変わりません。しかし、大きく変わったことがあります。夜勤が終わる朝8時。帰り支度を急ぐ豊澤さんの姿が。

豊澤妙子さん
「8時半に(母親の)デイケアの送り出しがあるので。間に合えばできるので、急いで帰ります。」

自宅で認知症の母親を1人で介護する豊澤さん。以前とは違い、母のデイサービスの送り時間に間に合うようになりました。また、病院への付き添いなど、母といられる時間が増え、仕事との両立がしやすくなったといいます。

豊澤妙子さん
「以前と比べて、食事を一緒にとれたりしているので。母親の笑顔がだいぶ見えてきているので、そういう面では安心できますね。」

そして、中には週休3日のおかげで結婚できたという社員も。介護職3年目の、宇津巻進さんです。お休みの木曜日、自宅を訪ねると…。

宇津巻進さん
「先月、結婚した妻です。」

妻の宏美さんも介護職。お互い就業時間が不規則なため、以前は会う時間を作るのも一苦労でした。しかし、宇津巻さんが週休3日になったことで、一緒にいられる時間が一気に増えました。そして今年6月、結婚へ。いわば「週休3日婚」だといいます。

宇津巻進さん
「週休3日になって、そのおかげで結婚できました。奥さんが平日休みのときとか、一緒に過ごすことができるようになりました。」

妻 宏美さん
「(夫の)休みが増えたおかげで、家のこととか掃除とか、いろいろしてくれるので、いいと思います。」

他の5人の同僚も、増えた休日に資格を取る勉強をしたり、家族の手伝いをしたりと、全員が何らかのメリットを実感していました。
さらに変わったことがありました。残業です。

さわやか清田館施設長 山本裕紀さん
「(週休3日を導入して)時間外(残業)が、“年間850時間”全体で減りました。額(残業代)にすると、“年間90万円”になっています。」

1人につき1日の所定労働時間が2時間延びたことで、それまで残業しないと終わらなかった業務が時間内にこなせるようになりました。その結果、1人当たりの月の残業代は、およそ1万円減少。しかし、国から介護職員への交付金が増えたため、社員が手にする給与はほとんど減らずに済みました。一方、会社はシフトを埋めるために、人員を1人増やしました。それでも、今後の人材確保において、大きなメリットがあるといいます。

さわやか清田館施設長 山本裕紀さん
「週休3日の方が、正直、人員は多く要ります。ただ、週休3日で働きたい方が多くいますので、新たな人材、いい人材を採用していくところで、うちの会社は取り組んでいます。」

「週休3日」最前線 現役世代の希望者 急増

今、「週休3日」を希望する人が20代から50代の現役世代の、実に半数以上に上っています。

特に…。

「(週休3日で働きたい方は)1980年代生まれくらいの方が多いです。」

こちらは、週休3日制正社員の紹介に特化した転職コンサルタントです。

育児や介護と仕事との両立をしたいという人が増えていると感じています。この日は、静岡県に住む、30代の看護師の男性が相談に訪れていました。

相談者(30代男性)
「要介護5です。」

母親の介護のために実家で暮らしていたところ、妻が妊娠。家族との時間を確保しやすい「週休3日」を選びたいといいます。

相談者(30代男性)
「妻が結構、母のことも面倒みてくれている分、余計に子育てはやってあげたい。一時的であれば、(月に)8万円から10万円くらい減っても、(手取り)15万円くらいとかでも、なんとか生きていくだけなら大丈夫かなと。それであれば(働く日数を)少し減らしてみる方が、家族などを考えたときにメリットが大きい。」

みんなハッピー!? 広がる「週休3日」

鎌倉:「週休3日」を導入した企業は、VTRで紹介した「人材確保」といった狙いの他に、さまざまなメリットを挙げています。例えば「サービスの向上」です。
東海地方で保育園を運営する会社では、忙しい朝と夕方に働くパートの保育士などの確保に苦慮していましたが、1日10時間勤務の週休3日社員が開園から閉園まで勤めることでシフトが組みやすくなり、利用者の評判も上々です。

トットメイト代表取締役 堺沢玲子さん
「正社員が責任を持って1日そこに配置されるという状況がつくられますので、質を上げるということにおいては、大きな意味があると思います。」

鎌倉:そして、働き方の選択肢を増やすことで、企業の競争力を高めたいというのが、大手IT企業「ヤフー」です。今年4月から、育児や介護を行う社員を対象に「1日8時間勤務で週休3日」を可能にしました。時短勤務や自宅など、会社以外で仕事をする「テレワーク」といった、さまざまな働き方とあわせて選べるようになっています。

ヤフー コーポレートPD本部長 湯川高康さん
「どうすれば社員の才能を最大限発揮できるかというところに会社としても向き合っていきたいと思っておりますし、労働時間というものに対して、会社が管理するというよりは、社員一人ひとりがそれに対してどう考えていくかという1つのメッセージングというのもあると思っているんですね。」

みんなハッピー!? 広がる「週休3日」

ゲスト 西村創一朗さん(人事コンサルタント)
ゲスト 佐藤博樹さん(中央大学大学院教授)

ご自身、「週休3日」で働く、人事コンサルタントの西村創一朗さんです。
「週休3日」導入する企業が増えている背景は何?

西村さん:今、週休3日制を導入している企業が増えてる背景、大きく2つあると考えています。1つが、短期的に人材確保をしなければいけないというところです。これだけ好景気で売手市場の中で、1人でも多くの優秀な人を採用するため、あるいは退職を防止するために「週休3日」ということを取り組んでいくというところが1つです。もう1つは、中長期的な話で、イノベーション創出ですね。「週休3日」を導入することによって、これまで仕事でいっぱいいっぱいになっていた社員のインプットが増える、あるいは海外旅行でリフレッシュできる。こうしたことによって、より斬新なアイデアを発想できると。こういった2つの狙いがあるというふうに考えてます。

働き方について、長年研究を続けてこられた、佐藤博樹さん。
働き方の選択肢が増えることは、いいことのように思えるが、落とし穴はない?

佐藤さん:特に「1日10時間働いて週3日休み」、これについて、僕は3つぐらい課題があるかなと思います。1つは、8時間働いて残業するんじゃないんですよね。毎日10時間働かなきゃいけないんですよね。そういう意味では、拘束度高くなると思うんです。ストレス高くなりますよね。これが1つです。2つ目は、今日(2日)出てきた事例は地方が多かったんですけど、都市部を考えるとどういう生活になるかなんですけれども、10時間働くということは休憩がありますから11時間拘束。往復を1時間1時間で13時間ですよね。そうすると、やはり平日のゆとりというのがすごく少なくなってしまうのではないかなと思います。3つ目は、10時間4日働くということで、その企業で普通の働き方ですよね。8時間5日働く人たちが残業前提の働き方でなくなるかどうか。普通の働き方の働き方改革が進むかどうかが問題。もしかすると、それを阻害する可能性がある。
(普通の働き方改革を脇に置いて、「週休3日」を導入することは問題だと。)
それで10時間働くということですよね。可能性があるということです。

鎌倉:もうひとつ気になるのは、「週休3日」の導入で収入が減ってしまうのではないかということです。先ほどVTRにありましたように、「週休3日」の導入で残業代が減る可能性があります。では実際、残業代は収入の中でどのくらいの割合を占めているでしょうか。例えば、運輸業で見てみますと、50代前半の男性の場合、残業時間は月平均29時間。残業代などの所定外給与額は平均で5万9,000円。これは実に月給の15%を占めています。もし、この収入がなくなると生活に切実な影響が出ると考えられます。

休日が増える代わりに減ってしまう可能性のある収入、どう補えばいいんでしょうか?

「週休3日」+「副業」 収入減をカバー?

「週休3日」による収入減を本業以外の仕事、いわゆる副業でカバーする人も出ています。
都内のIT企業に勤める、中村龍太さん、53歳。外資系企業の営業マンとして猛烈に働いてきましたが、4年前、この企業に「週休3日社員」として転職してきました。

会社の休みは土日、そして月曜日。中村さんは主に月曜に副業を行っています。それは農業。農業生産法人に所属し、希少種のニンジンを栽培。販路の開拓も担います。住んでいるのが妻の実家で農家のため、農機具や農地への投資はかかりません。天気や自分の体と相談しながら、ゆったりとしたペースで働けるのも気に入っています。
中村さんが転職を決意できたのは、副業のおかげです。当時、娘2人は大学生で、妻は専業主婦。「働き方を変えたい」という思いはあったものの、収入が大きく減るため、踏み切れませんでした。しかし、副業を足せば以前の収入の6割はカバーできると分かり、50歳を手前に決断したのです。

中村龍太さん
「転職というのが50を過ぎると、なかなかできないっていうじゃないですか。(副業をすれば)2人の大学生を養えるだけの金額が出ることが分かったので、踏み切った。」

副業は収入だけでなく、思わぬメリットももたらしました。

中村龍太さん
「これがセンサーです。」

中村さんは、本業のITを農業にフル活用。畑に設置したセンサーで、温度と湿度を計測。そのデータから、最適な収穫時期を予測しています。これによって、安定的な出荷体制を実現させました。実は、この事業に使っているのは、本業のIT企業のソフトです。他の農業法人にも売れるようになり、本業の営業成績もアップ。
そして、お金以外に得たものもあるといいます。

中村龍太さん
「(副業で)2つのものが増えた。ひとつはスキル・知識ですね。知識がものすごく増えました、農業っていうものに関して。それから“人”。たくさんの仲間が増えることが、僕にとっては価値になっている。」

「週休3日」最前線 休みが増えて 給料キープ

さらに、一部の社員に「週休3日」を導入し、労働時間を減らしながら給与は維持することに取り組んでいる企業もあります。社員は7人。金属の部品を特殊なワイヤーで加工する町工場です。

夕方出勤してきたのは、週休3日の正社員。夕方から夜間までの8時間、週に4日計32時間の勤務です。それでも週休2日の場合と給与は同じ。年収は600万円を超えています。

吉原精工 会長 吉原博さん
「(夜間の仕事は)やっぱり非常につらいのではと思って、その分、優遇してあります。」

そして今、会長の吉原さんは、夢のような計画に取り組もうとしています。社員全員が週休3日で、労働時間を32時間に減らしつつ、給与も下げない体制づくりです。

吉原精工 会長 吉原博さん
「(皆が週休3日になっても)給与は減ることはない、一緒です。」

その自信の裏には、すでに社員全員が残業ゼロという働き方改革を実現してきた経験があります。その秘策はなんと、それまで支払ってきた残業代を社員の基本給に組み込むこと。それによって、みんなが残業ゼロにしようと頑張るようになったといいます。

吉原精工 会長 吉原博さん
「例えば残業代が月に10万払っていたとすれば、その10万を今までの基本給の中に組み込みました。(それまで残業代が)生活給の一部として支払われていたので、残業代をなくすと、社員はやる気をなくすと思う。社員のやる気を下げないために給与は一緒で、あとは効率化を一緒になって見ていく。」

従業員
「会社が給与で面倒を見てくれている分、効率よく仕事を進めようと、自分なりに気をつかってやっている。」

早く仕事を終えても、給与を削られなくなった現場からは、次々と改善のアイデアが生まれました。効率を上げるため、自分の担当でない仕事も進んで対応したり、ベテラン社員のみが知るノウハウを、みんなで共有したり。そして、経営者側も、納期に無理がある注文は思い切って断るなど、全員週休3日体制に向け、業務改善に日々取り組んでいます。

吉原精工 会長 吉原博さん
「あと2〜3年すれば、週休3日が勝負だと思う。いろんな企業で、いま取り組み始めているので、いち早くやったところが、優秀な人材を確保するのではないか。」

「週休3日」最前線 新たな働き方の課題

この町工場では、生産性が上がって、売り上げもこの5年で倍増したということだが、これは他の企業でもできる?

佐藤さん:やはりトップの決断ですよね。単に残業削減する、それだけじゃないんですよね。それができるような仕事のしかた、ビジネスモデルを選ぶ。これをトップが決断した。ここもポイントだと思います。実は、大企業でもやはり残業削減じゃないんです。まさに、仕事のしかたを変え、時間生産負荷率高めるという方に持っていくようなトップが決断すれば、大企業でもやれると思います。

西村さんも副業をされているが、せっかくの休みに働くというのは本末転倒ではないか?

西村さん:働く個人にとって重要なことは、どんなことを副業にするかということだと思っています。副業には大きく分けて2つあると思っていまして、1つは、自分がやりたいこと、できることを使ってチャレンジをしていくポジティブな副業。もう1つは、残業代を補うために、やむにやまれず取り組むネガティブな副業とあります。ポジティブな副業に取り組んでいくことが非常に大事でして、VTRに出ていた中村さんのように、本業ではできないことを副業を通じて取り組む。それによって新しいスキル経験を手に入れながらインプットを深めていく。これが、本業の方でイノベーションを生むということにもつながっていきます。

この副業には問題点はない?

佐藤さん:2つの仕事を持っている。それぞれはそんな長い時間働いているわけじゃないんですが、足してみたら70時間、80時間働いていた。それで過労死が起きてしまうなんてこともいけませんよね。そうした時に、どこに責任があるか。あるいは1つの仕事から別の仕事へ移動する時。通勤途中の災害ですよね。これもどうするのか。この辺の課題の整理も大事なのかなと思っています。
(その整備に向けた動きはない?)
今、政府でも、そういう副業に伴う、さまざまなルール作りみたいなことを問い始めてます。

「週休3日」を導入する企業はまだまだ少ないが、働き方改革の起爆剤になるか?

西村さん:私は間違いなく「なる」というふうに思っています。今では当たり前になった週休2日制ですが、当初導入された時はものすごい反発に遭った中で、松下幸之助は「一日休養一日教養」というスローガンを使って、つまりインプットを高めて本業に生かせよということを言っていました。それと同じように、週休3日制では「一日休養一日教養」、そして「一日活用」ということで、今までインプットしていたものを、さらにアウトプットしていく、そういったことから広がっていくんじゃないかなと思っています。

佐藤さんは、どう考える?

佐藤さん:3日休める、この3日をどう使うかですよね。実は、働き方改革を生活改革につなげる働く人たちが自分の時間をどう使うか。今言われたようなこと、すごく大事になっていくかなと思います。それを通じて働き方を変えていくことにつながるかなと思います。
(働き方改革と、それから生活改革、休み方改革ということ?)
そうですね、休み方改革。

まずは、働き方。残業を、いかに減らすかとか、業務の効率化をどう図るかということとセットで考えていくということなんですね。
この「週休3日」、まだまだ課題もありそうですけれども、限られた時間で、いかに効率よく業績を上げるか。そして、それぞれのライフスタイルに合った働き方をどう実現するのか。企業と働き手が共に考える一歩になるのではないかと思いました。