不妊治療の公費助成に、年齢や回数の制限を設けるべきかどうか。先週、厚生労働省の検討会で、初めて不妊治療のあり方についての議論が始まった。日本の不妊治療は、世界でも「特異な状況」と言われている。不妊治療を行う医療機関はおよそ600軒、体外授精の件数は年間24万件で、いずれも世界最多。体外授精を受ける人の30%が40歳以上で、他の先進国の2~4倍に上っている。年齢が高いために、なかなか成果が出ず、治療が長期化する人が多く、中には、治療費に1000万円を費やす人や、抑うつ状態になってしまう人もいる。背景には、不妊治療で子どもをもつ以外に、選択肢が少ないという現実もある。大学病院の中には、治療開始前に、年齢別の体外受精の成功率や、夫婦二人で生きる道などの選択肢を示し、心理テストを行ったり、治療を一時休止したりして、治療そのものを客観視する取り組みを始めているところもある。また、元患者の中には、「自分の子どもでなくてもいい」と地域の子どもを支える人もいる。本来、子どもを望む夫婦に幸せをもたらすためのはずの不妊治療が引き起こす深刻な実態を追い、いま何が必要か考える。
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