今、警察の捜査が大きな転機を迎えている。取り調べによる供述の重視から客観証拠重視へ。明治以来続いてきた捜査手法の転換を図っているのだ。背景には、従来の手法だけでは事件の解決が難しくなっている現実がある。逮捕された容疑者が否認する事件が増えているほか、都市化によって聞き込みが難しくなり、携帯電話やパソコンといった匿名化ツールの普及で犯罪の手口が巧妙化して、警察は新手の詐欺や組織犯罪に太刀打ちできなくなっているのだ。また、自白を迫る不適切な取り調べが相次いだことも受け、容疑者の供述よりも防犯カメラ映像の解析やDNAの照合などの「客観証拠」によって逮捕・起訴に持ち込む捜査に変わってきている。さらに、警察が新たな捜査の武器として導入拡大を進めようとしているのがアメリカなどで広く行われている電話の「通信傍受」である。国の審議会でも議論がほぼまとまり、タブーとされてきた手法が数年以内に国内でも広く導入される可能性が出てきた。捜査手法の変化は治安の維持にどのような影響を与え、私たちの社会に何をもたらすのか検証する。
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