中高年の登山ブームが広がる中、遭難事故が増え続けている。
一昨年は過去最悪の1348件、10年前のほぼ2倍となり、死者・行方不明者の9割を40歳以上の中高年が占めた。特に目立つのは、標高一千メートル以下の低い山での遭難。高山と違って見通しが悪く、高い目標物が少ないため道に迷いやすく、重大な事故につながってしまうことがあるのだ。
なぜ、中高年に遭難事故が多いのか。近年、科学的にその原因を解き明かし、予防に役立てようとする研究が進んでいる。鹿屋体育大学の山本正嘉助教授は、筋力の低下や青年期の20%にまで落ちる平衡感覚と転倒・滑落との関連を調査している。ある研究では、50代を過ぎると、急速に道に迷いやすくなるということも明らかになってきた。
遭難のケーススタディや研究の最前線から、中高年の登山に潜む危うさを浮き彫りにする。
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