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福島ユナイテッドFC・農業部とは?

  • 2023年06月01日

福島県をホームタウンとするJ3のクラブ、福島ユナイテッドFC。このクラブでは、地域貢献のために選手が地元の農家に出向いて農作業を手伝う、「農業部」という取り組みを行っています。

練習場から往復3時間!? 

福島ユナイテッドのグラウンドは、福島市内の十六沼公園にあります。
週に3~4回ほど練習を行っています。

この日の練習は昼までに終了。
そのまま帰宅…と思いきや、何やら選手たちが連れ立って出かける様子です。

そして車で移動すること1時間半、到着したのは喜多方市の小高い山の中。
選手たちが向かったのは、収穫期を迎えたアスパラガス畑です。

この日は「福島ユナイテッドFC・農業部・アスパラ課」の活動日。3人の選手がアスパラガスの収穫に訪れました。アスパラガスに向かう選手たちの視線は真剣そのもの…
でも、どうしてサッカー選手が農業をやっているんでしょうか?

地元の農業に協力したい!

農業部が始まった理由を探るため、福島ユナイテッド社長の鈴木勇人さんを訪ねました。

農業部が始まったのは2014年。当時県内の農家は東日本大震災の原発事故による影響で廃業が相次いでいました。

鈴木社長

地域のクラブとして何ができるのかと考えたときに、農家のみなさんから『このまま農家はできない』、『後継者不足だ』という話を聞いて、本気で農業をやるのはどうだ、という案が出てきました。

最初はリンゴから始まり、その後モモ、ブドウ、コメと対象を広げ、今では6品目もの農作物を農業部で育てています。

収穫した農作物はクラブが買い取り、アルビレックス新潟や鹿島アントラーズといったJ1の試合会場や、オンラインショップで販売し、販路の少ない農家を支援しています。

実は、コロナ禍では試合のチケット収入と農業部の収入が並ぶほど、クラブ経営にとっても大きな柱にもなっているといいます。

鈴木社長

試合に結果が伴ってこないときには『そんなことをやっているから勝てないんだ』という声もいただきました。でも、農業部は今やうちのウリになってきていますし、農業部をやりながら勝利を目指していけば、福島の農業を様々な人に知っていただくチャンスにもなる。両刀でがんばっていきたいと思っています。

農家にとってもうれしい農業部

クラブにとって大きな存在の農業部。では、受け入れ先の農家にとってはどうなんでしょうか?

3年前から農業部との活動を始めた、喜多方市のアスパラガス農家の江川正道さん。
もともと地域の農業へ危機感を抱いていました。

江川さん

高齢化と後継者不足で耕作放棄地が増加していて、農業者の人口を増やしていかないといけないという思いがありました。

農業部と協力するようになり、県内外からのアスパラガスの注文が増加。福島ユナイテッドの発信力が助けになっているといいます。

江川さん

スポーツ選手がやっていることを応援したいっていう人が買ってくれるようになったり、今まで届かなかった層に自分たちの作ったものが届くようになったりしました。

あと、ユナイテッドさんと一緒にやっていくことで私たちのモチベーションも上がる。楽しくやっている姿を見て担い手が増えるという風に、間接的に福島の農業が良くなっていくんじゃないかと思っています。

選手のモチベーションにも

クラブ、農家にとってはウインウインの農業部ですが、選手にとってはどうでしょうか?
アスパラ課の「課長」で、普段はゴールキーパーの大杉啓選手に聞いてみました。

大杉選手

農作業をしている中で『最近試合どうなの』とか、『がんばったね』とか言ってもらえることがとても多くて、モチベーションをもらっています。
もちろん試合に来てくれて応援してくれる方も大切ですが、応援してくれる地元の方たちの顔が見えることが、活動の大きな意義のひとつだと思います。

地元に密着しているクラブならではの取り組み、福島ユナイテッド農業部。
クラブ・農家・選手の3者にとってうれしい関係が築かれていました。

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