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福島の木を守れ!外来カミキリバスターズ始動 郡山

樹木が泣いている・・・行くぞ。
  • 2023年06月06日

バスターズ “個性豊かな顔ぶれ”

ことし5月、福島県郡山市でユニークな名前の住民団体が結成されました。
その名は、ゴーストバス・・・ではなく、外来カミキリバスターズ
目的は、外来種のカミキリムシを駆除し、さらに県内への侵入を食い止めること。
この日、メンバーが集まって、県内の現状や今後の活動方針を話し合いました。

 日曜の夕方、仕事や学校の合間に集合 

代表を務めるのは郡山市の樹木医、安齋由香理さん。
おととし、郡山市で国内で初めて確認されたサビイロクワカミキリの第一発見者で、その名付け親でもあります。

モットーは「虫と共に歩む樹木医」

「このまま何もしないでいては、どんどん生息域が広がってしまうのでそれをなんとか食い止めたい。私たちにできることをしていきたいということで今回設立に至った」

家業の林業を継いだ元自衛隊員
安齋さんの次女・藍花さん(小4)

メンバーは、安齋さんの呼びかけで集まった林業者や高度な伐採技術を持つ造園業者。
外来カミキリの生態に詳しくWEB発信にも強い若者や、観察力に優れた小学生。
それに栃木県足利市で外来カミキリ対策に取り組む市職員の計8人と、立場も年齢もさまざまです。

敵は外来カミキリ御三家!?

虫が苦手な人にはゴメンナサイ🙇

バスターズが相手にするのは彼らが「御三家」と呼ぶ中国などが原産の外来カミキリ。
2021年に福島県内で見つかったトチノキやカツラなどを食い荒らすツヤハダゴマダラカミキリ、イヌエンジュなどを食い荒らすサビイロクワカミキリ。そして、周辺の県の桜並木や果樹畑で猛威をふるっているクビアカツヤカミキリです。
御三家と呼ばれるほど、日本国内でメジャーデビューしてしまった、この3種の根絶は容易なものではありません。

チェーンソーでの人海戦術

県内ではこれまでに、ツヤハダゴマダラカミキリサビイロクワカミキリの生息がそれぞれ20市町村ほどに広がっていて、各地で街路樹が食い荒らされ穴だらけになるなどの大きな被害が出ていて、自治体が伐採を進めています。
しかし、被害は民有地や民家の庭先にまで及んでいて、対応しきれていないのが現状です。

すぐそこまで…忍び寄る危機

特に果樹やサクラの幹を食い荒らすクビアカツヤカミキリ侵入防止は、メンバーの最大の関心事。
すでに福島に隣接する群馬、栃木、茨城では、サクラやウメ、モモなどの樹木を食い荒らす被害が相次いでいます。

全国2位の生産量! 福島県自慢のモモ

果樹王国・福島に侵入を許してしまうとその経済的なダメージは計り知れません。
また、日本三大桜のひとつである三春町の「滝桜」をはじめ、県内各地のサクラの名所をどう守っていくか、待ったなしの課題です。

バスターズの活動方針

直面している危機、迫り来る危機にどう対処するか。
団体では、次のような活動を計画しています。
成虫の駆除や食害に遭った樹木への処置
被害の早期発見と拡大を抑えるためのパトロール
果樹農家への防除のアドバイス
行政・関連団体(JA等)と連携した防除・駆除作業

ともに行動してくれる仲間を増やす取り組みも。
ことし7月には、参加者を募って外来カミキリを捕まえるイベントを計画しています。
身近に潜んでいることを実感してもらい監視の目を増やすことが狙いです。

バスターズ、始動します!

福島の自然と産業を守ろうと立ち上がった「外来カミキリバスターズ」。その活動に注目です。

外来カミキリバスターズ代表・安齋由香理さん
「まだまだ外来カミキリは、みなさまに知られていない現状がある。まずは、それぞれどういう特性があって、どういう被害があるのかを知ってもらえるよう活動していきたい。あわせて、問題意識を持って取り組んでくれるメンバーを増やしていきたい」

【取材後記】

ゴマダラ、サビイロ、クビアカ。取材の中で何度も耳にした外来カミキリ御三家の通称です。
2021年夏、他県では確認されていたゴマダラが県内で見つかったと聞いて取材している最中に、国内では見たことがない謎のカミキリムシがいるとの情報があり、さらに取材を進めると、その正体は初確認のサビイロと判明。
専門家は「被害樹木の伐採を早急に、一斉に行い、封じ込める必要がある」と指摘しています。
物流に紛れ込んで侵入したとみられているものの、いまだ具体的な侵入経路はわかっていません。

樹木の被害は、道路沿いや公園・学校のほか、民有林や庭先まで広がっていて、自治体や個人が一斉に同じ期間内に同じ手法で強制的に駆除することが効果的ですが、財政面や人手不足などの理由で対応に差があります。
実現の難しさを踏まえたうえで、バスターズのメンバーはできることから対処しようとしています。

樹木は、生態系の根幹であり私たちの生活を支えてくれています。
しかし、いま、あちこちで外来カミキリの脅威にさらされた樹木の悲鳴が上がっています。
外来カミキリにいつの間にか食い荒らされ、朽ち果てた木を前にしたとき、みなさんはどう思いますか?

  • 金澤隆秀

    NHK福島放送局 記者

    金澤隆秀

    福島県鮫川村出身。幼い頃からあらゆる虫や魚を捕まえるべく山川を駆けずり回る。海はちょっと遠かった。今も生き物を前にするとワクワクが止まらない。虫の容姿で触れるやつかどうかだいたい判断できる。御三家はつかみ方しだいでいけるがオススメしない。

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