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高齢化と老朽化 二つの老いに悩むマンション

高齢化と老朽化 二つの老いに悩むマンション

2022年9月26日更新

地域のつながりが希薄になりがちな現代社会。マンションや団地では、高齢者の孤独死が大きな問題になっています。さらに高度成長期に建ったマンションでは、建物の老朽化も進み、修繕工事の問題や、建て替えの問題など、課題が山積しています。そんな中、住民たち自らが新しいつながりをつくり、今までにない形のコミュニティが、全国各地に生まれはじめています。話し合い、ルールをつくって、みんながいられる「居場所」を守っていく。そんな取り組みを見ていきます。

マンションが 地域コミュニティの中心に

地域食堂やカフェ、参加型のさまざまなイベントなど。マンションのコミュニティスペースが、地元の人たちをつなぐ重要な拠点に生まれ変わっています。

朝ごはんが食べられるマンションの共同食堂

神奈川県相模原市にある共同食堂。一汁三菜の温かい朝ごはんが、たったの100円で食べられます。運営しているのは、地域でいくつかのマンションを経営する不動産会社。その会社のマンションに住む居住者限定のサービスです。出勤前の会社員や妻に先立たれた高齢者、1人暮らしの学生など、1日約40人が利用。バランスのとれた朝食をとることができるだけでなく、住民同士がいつの間にか顔見知りになり、自然に会話が生まれるなどの効果が生まれています。

NHKニュース おはよう日本
朝ごはんの現場 一汁三菜で100円 マンションの共同食堂 神奈川県相模原市
(2017年5月8日放送)

「隣人祭り」で都会に人々の絆を取り戻す

1999年、近所のお年寄りが孤独死したことに衝撃を受けたパリの青年が、同じアパートや地域に住む隣人たちに、「一緒に食事をしながら語り合おう!」とパーティをよびかけました。この「隣人祭り」はその後、世界29か国1000万人が参加する一大イベントとなりました。人の絆が薄れている日本の大都市・新宿でも、このお祭りを実現させようという取り組みが始まりました。お祭りをきっかけに、新しい出会いや助け合いの芽が生まれ始めています。

クローズアップ現代
ご近所と話してますか?~“隣人祭り”というアイディア~ 東京都新宿区
(2008年6月17日放送)

建物は古いままでも、楽しい居場所があれば

老朽化したマンション、建て替えには膨大な費用がかかります。多少古くても、その不便さを補うだけの人と人とのつながりがあれば、きっと大丈夫。そうした住民たちの前向きな選択の結果、魅力的な「居場所」が生まれました。

古いマンションでも、みんなで暮らしやすく

埼玉県狭山市の770世帯のマンション。老朽化が進み、世帯数も減りはじめて、空き家も目立つようになりました。どうしたら住み続けてもらえるのか……。悩み、話し合いを重ねた住民たちは、あえてマンションを新しく建て替えすることをせず、修繕しながら住み続ける道を選びました。団地に魅力を取り戻そうと、住民がともに楽しめる語らいの場をつくると、家にこもっていた高齢者も集まってくるようになりました。住民同士で助け合う関係に魅力を感じ、引っ越してくる若い世帯も増えています。

クローズアップ現代+
どうするマンショントラブル “新ルール”で住民激震!? 埼玉県狭山市
(2016年8月31日放送)

どんな人でも暮らしやすく 進化するマンション

建物の老朽化によって、空き部屋の増加に長年悩んできたマンションが、バリアフリーの高齢者住宅に変身。さらに、さまざまな世代が半共同生活をする「コレクティブハウス」も生まれています。マンションは、多様な進化をとげています。

リフォームで 高齢者が安心して暮らせるすまいに

都会で介護施設不足が深刻化するなか、住み慣れた地域で最期を迎えるための模索が始まっています。東京都日野市では、築50年の団地の空き部屋を高齢者向けにリフォーム。介護事業所も併設されているため、地域でつくり上げてきた人間関係を維持しつつ、安心して老後の生活を送ることができます。さらに、住民同士で買い物代行など暮らしを支え合う活動も始まりました。

クローズアップ現代
安心できますか?大都市での老後~在宅ケアの新たな取り組み 東京都日野市
(2015年10月14日放送)

住民同士が家族のように暮らすマンション

東京都多摩市に、マンションの住民同士がリビングをはじめとした共有スペースで交流しながら暮らす「コレクティブハウス」があります。ここには、赤ちゃんからお年寄りまで20世帯33人が入居。共同のリビングでは住民が当番制で食事をつくり、みんなで一緒に食事をとるなど、家族のような近所づきあいをしています。暮らしの中で問題が生じたときはそれぞれが意見を出し合い、共に考えることで、信頼関係を深めています。

「クローズアップ現代」
住まいを“シェア”してみませんか 東京都多摩市
(2010年11月9日放送)

おわりに

高齢化と老朽化というマンションの二つの「老い」。その問題に向き合ううち、大切なことは人と人とがつながることだと気づきます。そこに仲間がいて、仲間を大切にし、仲間からも大切にされれば、そこは誰にとっても安心できる居場所になり、ホームタウンになります。