海外放送事情

ドイツの放送負担金制度導入から1年

~経過報告と論点~

ドイツでは、1923年以来、放送受信料の徴収が行われてきたが、2013年1月1日をもって、新しい放送負担金の制度に移行した。

従来の受信料制度は、発足当時から、受信機器があるか否かを受信料徴収の根拠としていたが、これに対して、放送負担金制度は、家族、あるいはコミュニティーとしての「住居」を徴収対象として括ることで、受信機器の有無とは関係なく全世帯と全事業所から徴収することになった。携帯電話やスマートフォンなど受信機器の爆発的な普及で、徴収対象を絞り込むことが物理的に不可能になったことと、受信料の不払いは公平の原則に反するという世論の高まりを受けたものだ。

新制度への移行から1年が経ったが、世帯レベルから大きな反発は出ていない。これに対して、従業員の数に応じて徴収額がランク分けされた事業所については、企業側から苦情や不満が出て、各地で州や連邦を相手取った違憲訴訟が起こされている。新制度では、放送負担金の収入が、公共放送の需要を上まわったり下回ったりした場合は、料額の見直しを行うことになっていて、公共放送の財源をめぐる議論は高まっている。制度移行から1年、論点を整理し課題を明らかにする。

メディア研究部  熊谷 洋