海外放送事情

ネット接続時代のテレビ

~CES2011と利用者調査から~

今年1月、アメリカ・ラスベガスで開かれたCES(国際家電展示会)2011では、ネット接続機能に加えて、多種多様なアプリケーションやソーシャルネットワーク機能の利用が可能な「スマートテレビ」が注目を集めた。また、スマートフォンなどとの連携も提案され、テレビのネット接続を前提とした映像視聴スタイルが、世界の主要家電業界共通の方向性として示された。

我が国においては、「アクトビラ」などのプラットフォーム事業者や「NHKオンデマンド」に代表される放送番組のVOD、さらに動画投稿サイトのユーチューブやヤフーが利用できるデジタルテレビの普及などにより、テレビのネット接続が徐々に広がっている。

日本国内でのテレビのネット接続は今後も進むのか、仮に進んだ場合、視聴者の番組視聴スタイルにどのような変化が予想されるのか。本稿では、海外での先進事例や、アメリカのネット接続テレビ利用者の声など現地調査の結果などから、ネット接続時代のテレビについて展望する。

CES2011では、薄型テレビの売上シェアトップの韓国2社が提案した「スマートテレビ」、そして「グーグルTV」などネット接続されたテレビ上で多様なアプリケーションの利用スタイルが提案された。メーカーや通信事業者などが様々なサービスを提案する一方で、利用者側からは、情報や映像を自由に入手したいとする強いニーズが感じられた。

1970年代のリモコンの登場によって、視聴者がザッピングに象徴される「チャンネル選択の自由」を手にしたように、テレビ周りのネット環境の進展は、さらに一歩踏み込んだ「コンテンツ選択の自由」を視聴者に与えることになる。米国のスマートテレビ利用者の「放送局側が決めたコンテンツに限定されない点が気に入っている」との発言や、若者インタビューで聞かれた「テレビニュースは眠くなるからネットで調べる」との発言が示唆するように、テレビ周りのネット接続は、主導権の視聴者側への移行を意味し、視聴者の自由度を高めることにつながると考えられる。

それはコンテンツ選択の自由とともに、端末選択の自由度をも高めることを意味しており、様々な「ボーダレス化」を引き起こすことにつながる。すなわち、チャンネルのボーダレス、コンテンツのボーダレス、視聴端末のボーダレス、視聴エリアのボーダレスなど、あらゆるボーダレス化の進行である。ネット接続時代の放送事業者に求められていることは、番組視聴の時間・場所・端末の自由をはじめとしたユーザーの自由度を高め、需要ある情報や選択肢を過不足なく提供することである。それは、ユーザーの声に真摯に向き合うことでのみ実現される。

メディア研究部(メディア動向)小川 浩司