海外放送事情

シリーズ 公共放送インタビュー

【第7回】 RIPE@2010(世界公共放送研究者会議)主宰者,グレッグ・ロー教授に聞く

ヨーロッパで、公共放送の理論研究とメディア政策立案の協働作業を促すイニシアティブが生まれている。フィンランドのタンペラ大学のグレッグ・ロー教授を中心とした活動で、各国の研究者が参加するRIPEである。RIPEとは、Re-Visionary Interpretations of Public Enterprises の頭文字をとったもので、メディア研究者や調査関係者が、公共サービスメディア企業内部の戦略的業務執行者と、電子メディアにおける公共の利益に関連する諸課題について共同で検討する、またその関係を強化することを目的としている。RIPEという名称の組織が実存するのではなく、ロー教授の呼びかけに応えた研究者が自発的に主催者となって会議を開催している。

その5回目の会議が2010年9月にロンドンで開催され、その機会に主宰者であるロー教授にインタビューを行った。ロー教授が、RIPEの運動を起こした原動力は、アメリカ人であるロー教授がフィンランド留学をきっかけに、ヨーロッパにおける公共放送の存在の重要性や必要性を強く感じたことにあり、それは 1980年代以後急速に商業化が進んだアメリカのメディア放送界への落胆との裏返しである。ロー教授は、公共放送の将来を考えた場合、公共放送が繁栄し続けるためには、業務範囲の適正規模を正確に認識することであり、それには何かを止める決断も必要となると述べている。

メディア研究部(海外メディア) 中村美子