海外放送事情

シリーズ

南米における地上デジタル放送日本方式の普及②

~すべてはブラジルの決断から始まった~

南米各地での地上デジタル放送日本方式の普及状況や放送事情を紹介するシリーズ2回目は、ブラジル編である。そもそも南米で日本方式が広まったのは、南米で抜きんでた大国であるブラジルが日本方式を採用したことに端を発する。

ブラジルは2006年、地上デジタル放送に日本方式を採用することを決定した。この採用についてブラジルの放送局の中で最大かつ別格の存在であるRede Globo(Redeはネットワークの意)が果たした役割は大きい。ブラジルとの関係は、日本側が働きかけたというよりも、当時ブラジルで地上デジタル放送の採用方式を検討していた委員会が、日本側に委員会での説明を要請したことから始まった。そして、この委員会で中心的な役割を担ったのがRede Globoの技術者達である。ただ、この時期ブラジルはほとんど米国方式の採用に傾いており、日本方式については「そんなものがあるらしいから、ちょっと話を聞いてみるか」といった会議の添え物的な扱いで日本側に声をかけたようである。この時点では、選考の本格的な対象となっていなかった日本方式は、やがてブラジルの関心を掘り起こし、最後は次期放送方式として採用されることになる。このあたりの事情を、日本側の当事者であった元NHK技術研究所長の山田宰へのインタビューをもとに紹介する。

また、採用決定から1年半後の2007年12月に実際に放送が始まった地上デジタル放送の普及状況や、Rede Globoの巨大撮影所・プロジャックの概要についても紹介する。

メディア研究部(メディア動向) 小林憲一