海外放送事情

公共放送の説明責任

~約束と評価への進化~

公共放送は、その国の人々や社会が求める役割を果たすことを目的とし、受信料や政府交付金など何らかの公的資金を財源として運営されていることから、資金を負担する視聴者や国民に説明責任を負っています。これまでは、事業・会計報告書の義務づけや放送番組に関する視聴者からの苦情の取り扱い、放送番組審議会による視聴者の意向吸収等を通じて説明責任を果たしてきました。しかし、多メディア・多チャンネル化と有料放送の普及というメディア環境の変化のなかで、公共放送は政府と「業務契約」を結び、視聴者に「約束」を表明するなど、公共放送のサービスや財源保障について明確な取り決めが行われ、説明責任が制度上強化される方向にあります。そもそも説明責任の問題は、公共放送と視聴者との信頼の必要性がその根底にあり、どの国の公共放送もいま、信頼の再構築に歩みだしたと考えます。このテーマは、2007年3月に開催された研究発表でヨーロッパの公共放送を中心に「公共放送の説明責任~“約束と評価”の意義と課題」と題して報告しましたが、この稿では3年目を迎えたNHKの「視聴者への約束と評価」を分析対象に加えました。

構成

1.はじめに

2.なぜ、説明責任は強化されるのか

  • 2-1公共放送の相対的地位の低下
  • 2-2公共放送存在基盤の揺らぎ
  • 2-3 EU域内における公共放送の取り決め

3.公共放送のサービスと財源の透明性をいかに確保するか

4.各国の説明責任の取り組み

  • 4-1デンマーク
  • 4-2スウェーデン
  • 4-3イギリス

5.日本

6.考察と課題

  • 6-1公共放送による約束と評価
  • 6-2政府からの独立性
  • 6-3視聴者中心主義

主任研究員 中村 美子