海外放送事情

公共サービス放送のガバナンスと説明責任

~デジタル時代のBBCの未来~

イギリス政府は,今年3月14日に放送白書「すべての人に公共サービスを~デジタル時代のBBC」を発表し、3年近くにわたって続いたBBCの特許状更新議論に結論を下しました。

この白書は,BBCの存立を規定する現行特許状の有効期限が満了となる2007年以後のBBCのあり方を定めたものです。デジタル技術の急速な発達が,メディアの将来予測をますます困難にする中で,政府は公共サービス放送BBCの確実な未来を保障しました。それは,(1) 2007年から2016年までの10年間有効の特許状を付与することで制度的保障を与える,(2) 特許状有効期間中を通じて,BBCの財源を受信許可料とする,(3) BBCの現行サービスの規模と範囲を維持する,(4) BBCのガバナンス・システムを改革する,という4つの条件によって実現します。今回の白書の特徴は,4つの基本条件の中でも,時代にあったBBCの目的を明確にし,受信許可料支払い者である視聴者と、放送業界におけるBBCの潜在的競争相手に対する説明責任の強化をいかに図るかというガバナンスと説明責任の課題に力点が置かれています。政府は,ガバナンスについては,現在の経営委員会を廃止し,監督・規制の役割を果たす「BBCトラスト」とサービスを提供するという執行責任を負う「執行役員会(Executive Board)」という2つのボード(役員会)による制度的システム変更を決定しました。そして,視聴者や業界関係者に対する説明責任を保障する方法として,(1) BBCトラストがBBCの各サービスについて「サービス免許」を発行する,(2) BBCのコンテンツが他の放送事業者と異なる特徴を明らかにすること,(3) 新たに「公共的価値のテスト」を導入することをあげ,この3つを最高水準の説明責任を保障する三重の安全装置と呼んでいます。特許状更新の議論と放送白書や,新しい特許状と協定書の草案を基に,BBCの新しいガバナンス・システムと説明責任のあり方を中心に報告します。

主任研究員 中村美子