海外放送事情

メディアとしての検索エンジン

検索エンジンは、いまや私たちの情報入手にとって欠かせない手段となっている。検索エンジンが、今後、マスメディアのような影響力を持ちうるとすれば、検索エンジンをメディアとしてとらえることが必要となる。

検索エンジンは全世界で数社が寡占している状態にあり、最も多くのユーザーに使われているGoogleは、検索結果の表示順位付けでページランクという独特の判断基準を適応している。 検索結果の順位付けは検索エンジン各社の独自の編集アルゴリズムに基づいており、検索エンジンの種類によって検索結果が違う。 したがって、検索結果は「事実の表示」では無く「意見の表明」である。 同一検索語を入れた場合に、同一の結果を多数の人々に同時に表示すること、そして表示は意見の表明であることから、検索エンジンはメディアそのものであるといえる。そのことから、特定の検索エンジンが独占的シェアを占めた場合に、メディアに求められる言論の多様性が保証されずに、損なわれるのではないかという疑問が導き出される。 戦後、言論法に対する取組みが熱心に行われてきたドイツでは、検索エンジンはドイツ基本法(憲法)の「公共的コミュニケーション」条項の適用範囲に存在することになる。放送とインターネットサービスを同じものとして扱うことができるのかどうか、まだ多くの検討を行う必要があるが、ドイツの戦後言論法の到達点を考えるならば、言論法制からの検索エンジン問題への取り組みが、検討課題としてあがってくることは充分考えられる。 放送におけるような規制は直ちには可能ではない。しかしながらマスメディアに適用されてきたようなルールを、情報技術やエンジニアリングに直ちに適用することを視野に入れる必要が急激に生じているとの主張も見られる。 検索エンジンがどのような実態を持っているのか、またどのような社会的存在となるかについて、さらに検討を推し進めなければならない。

研究主幹 三浦 基/主任研究員 小林憲一