海外放送事情

IPTVは救世主になるのか

世界中ではじまったIPTVブーム

昨年7月の情報通信審議会中間答申をきっかけに、IPTVの動きが日本でも急速に活発化してきた。IPTVとは、閉じたネットワークである電話会社のIP網などを利用し、相手先を特定してコンテンツを届けるビデオサービスである。

このIPTVに各国の電話会社も注目している。理由は、限界が見えた固定電話依存の体質を脱却し、携帯、インターネットにIPTVを加えた4事業をまとめて顧客に販売し、顧客あたりの収入(ARPU)を最大化させようというものである。

イタリアなどCATVが普及していない国々では、地上デジタル放送への移行の有力な担い手としてIPTVが期待されている。また有料放送の大半が衛星で行われているため、IPTVが有料放送市場に参入する余地が十分にあると考えられている。一方、CATVの強いアメリカでは、CATVの電話進出によって電話事業が脅かされており、それを奪い返し、かつビデオサービス事業に乗り出したいという電話事業者のねらいがある。日本ではYahooBB系のBBTVなど4社が、自主調達のコンテンツを使用した多チャンネルビデオサービスとVODを行っている。

現在、世界の巨大通信事業者はネットワークの全IP化に取り組んでおり、このネットワークの効果的な利用方法としてIPTVがブームを引き起こしている。ここで問題になるのは、膨大な投資に対する収益である。米国のCATVは無線の届かない地域からはじまったが、後に高所得者の住む、人口密度の高い都市に軸足をおくことによって急速な発展を遂げた。同じように収益性を考慮すれば条件不利地域に、こうしたサービスが届かないということも考えられる。すみやかな地上デジタル普及に向けてのIP再送信においては、こうした不安を払拭することが必要だろう。

研究主幹 三浦 基/主任研究員 小林憲一