海外放送事情

メディアの“行き過ぎ”を監視

~台湾のメディアNGOの取り組み~

台湾のメディア界がいま、揺れています。民主化で言論の自由が広がる一方、「国民党の宣伝機関」として教育を受けてきた記者たちの意識改革は進んでいないため、イデオロギー先行による報道が往々にして誤報を生んでいるのです。

野党に近い大手紙の中国時報は2002年12月に「陳水扁総統へのヤミ献金」という“特ダネ”を一面トップで書きましたが、総統府が全面否定すると翌日の一面でお詫びを出す始末です。またテレビ局は2004年3月の総統選挙の際の速報番組で、速さを競うあまり、9局が候補の総得票数を上回る“中間票”を報じてしまいました。こうした「イデオロギー偏重」と「過当競争」という台湾メディアの二大問題を何とか改善していこうと、最近学者やジャーナリスト出身者による「メディア監視NGO」が相次いで結成され、関係者の注目を集めています。こうしたNGOには、個々の報道を詳細に分析して問題点を具体的に指摘し、各メディアに改善を求める「告発型」と、商業主義の弊害を理由に公共放送の充実を求めたり、子供に良い番組の推薦を行ったりする「提言型」に大別されます。各NGOは定期的にメディアの問題を考える座談会を開いている他、報道で被害を受けたという人や組織にとっての「駆け込み寺」にもなっています。しかしまだ規模が小さく資金に限りがあるほか、各メディアがあまり批判に耳を傾けないという問題もあります。日本ではあまり見られない「メディア監視 NGO」の活動状況について、告発型である「新聞公害防治基金会」の盧世祥事務局長(写真1)と提言型である「台湾媒体観察教育基金会」の馮建三会長(写真2)へのインタビューを交えて紹介します。

メディア経営 山田賢一