海外放送事情

<世界の公共放送 デジタル時代の課題と財源>

第4回 フランス 地上デジタル放送への意欲と財政難のジレンマ

フランスでは地上デジタル放送が2005年3月に開始されます。公共放送のフランス・テレビジョンは2000年3月、ニュース、スポーツなどの新しい専門チャンネル、合計6チャンネルの具体的な計画を発表して、地上デジタル放送の準備を進めてきました。しかしこれらの計画は縮小され、既存チャンネルのみでのスタートとなります。理由は、政府が計画を縮小させたからです。

フランス・テレビジョンは株式会社で、その株式はすべて政府が所有しています。従って、会社の財源も支出もすべて政府がコントロールしています。こうした中で近年財政難に陥っていた政府は、地上デジタル放送に割り当てる財源を大幅に削減したのです。

フランス・テレビジョンは毎年、翌年の予算について政府に予算要求をしますが、政府予算法という法律によってこの予算も、文化・コミュニケーション省の予算の一部に組み込まれています。従って、公共放送の予算は政府から厳しく査定されます。

また2000年の放送法改正で、目標手段契約という制度が導入されました。この契約は政府が各公共放送機関と締結するもので、3~5年間にわたる各機関の予算規模や戦略的な事業計画について定め、各機関の事業運営の骨格を方向づけています。

さらに2003年には政府出資企業監理庁(APE)が設立されました。フランス・テレコムなどでの経営の失敗を機に、政府が出資する企業の監視を強化するためです。そしてフランス・テレコムやエール・フランスなどと並んでフランス・テレビジョンやラジオ・フランスも監視対象となっています。

このように、フランスの公共放送は政府の厳しいコントロールの下にあるのです。このような公共放送制度の特徴と課題について『放送研究と調査』の11月号で報告します。

メディア経営 豊田一夫