メディア利用に関する調査研究

首都直下地震を想定した在日外国人の情報ニーズ

~4か国の外国人を対象にしたグループインタビューより~

大災害が発生した時、日本にいる外国人に防災情報をどう適切に提供するのか」。災害時の情報伝達に関して繰り返し指摘されている課題である。NHK放送文化研究所が東日本大震災後に実施した電話アンケートでも、必要な情報が得られない「情報の空白」を経験したり、不正確な情報に振り回された外国人の姿が浮かび上がった。

外国人への防災情報提供に関する改善点を探るため、当研究所では2014年3月、在日外国人の情報ニーズを聞くグループインタビューを実施した。対象は、首都圏在住の中国人、韓国人、日系ブラジル人、フィリピン人の計50人。首都直下地震が起き自分たちが被災者になることを想定して、メディア利用と情報行動、今後に向けたメディアに対する要望を聞いた。その結果、初動段階では、「どう行動していいのかわからない」、「避難所の場所がわからない」など、具体的な避難行動がイメージできない不安を共通して抱えていることがわかった。また、外国人は、「日本を出る方法が知りたい」「仕事を探すため、日本の他の地域にいく方法を考える」と答えるなど、帰国、あるいは国内移動を検討する傾向が日本人より強く、交通情報は他のライフライン情報よりニーズが高いことがうかがえた。一方、近年、スマートフォンの所有率が一気に上がり、日本国内の情報源だけでなく、外国メディアや、祖国の家族・知人を含む多様な情報源を使う外国人が増えており、多メディア環境をふまえて外国人への防災情報提供を考える事が今後の課題となる。

メディア研究部 田中孝宜