ことばの研究

最初の放送用語基準

~1935年『放送用語の調査に関する一般方針』作成の背景~

放送用語の開発・調査を進めてゆくのにあたって、日本で最初に作られた規定である『放送用語の調査に関する一般方針』について、成立の背景を探る。

この資料は、現在までの日本語のあり方に少なからぬ影響を与えたものである。ここで定められた方法に従って、放送で用いることばが形作られていったのである。音声言語としての標準的な日本語のふさわしい姿を探るのにあたっての方向性を示したものであり、現代に連なる日本語の歴史を考える上で、重要な資料である。

音声を主体として日本全国に通用するような日本語を組織的・体系的に確立させる、ということは、放送の登場以前には日本人が経験したことのない作業であった。その成就にあたって、ある手続きに従った「調査・選定基準」が必要であると考えられた。この資料は、その基準を示したものである。

『放送用語の調査に関する一般方針』の成立の背景などに関して、以下のような特徴を指摘する。

1)草案と決定稿とを比較すると、草案では、ローカル放送における方言放送の構想や、方言アクセント調査の提案もされていた

2)決定稿において、日本語の語彙を豊富にするための源泉の一つとして方言を活用することが挙げられている

3)この方針を策定した組織(放送用語並発音改善調査委員会、現在の放送用語委員会の始祖)は英国BBCを範としており、BBCの影響が具体的にどのような面に表れているのか、それがどのように現在に連なっているのか、といったことを今後考察してゆく必要がある。

(メディア研究部・放送用語 塩田 雄大)