放送史

シリーズ 初期“テレビ論”を再読する

【第3回】 制度論

~放送規制論議の変遷~

テレビ時代初期に議論されていた「テレビ論」を再読する本シリーズ。3回目は、制度論を取り上げる。

1950年代後半、テレビの普及を受けて「低俗番組」批判が起こり、それとともに放送制度の見直し論が広がった。議論の焦点は、ラジオ時代の制度にどのように手を加えれば、テレビ番組の質の向上につながるかという点であり、当初は、番組そのものに対する規制の強化を中心に検討が進んだ。そして、1959年の放送法改正では、番組準則に「善良な風俗」条項を加えるといった制度改正がなされた。

しかし、そうした対症療法的な規制強化に対しては、「表現の自由」との関係から問題が多いという批判や、実際に効果が上がるのかといった疑問が上がった。こうして、1960年代以降の議論を通じて、放送制度の専門家や郵政省事務当局、放送事業者の間では、番組内容の適正化を図るためには、行政による直接的な関与を避けつつ、番組に関する世論調査機関を設置して放送事業者の自主規制を促すなど、より間接的な手法をとる方が好ましいという考え方が広まっていった。

一方で、そうした認識は必ずしも幅広くは共有されず、放送事業者の不祥事などをきっかけに番組に対する直接的な規制を求める構図は、現在に至るまでしばしば繰り返されてきた。そうした意味で、テレビ放送初期の議論を振り返り、その成果と限界を確認しておくことは、放送制度をめぐる議論を行う上で踏まえておくべき前提になると考えられる。

メディア研究部 村上聖一