メディアフォーカス

災害情報伝達の多言語化とその課題

2020年の東京オリンピックと昨今の外国人観光客の急増を受け,災害情報を多言語化し,プッシュ伝達する試みが急速に広がっている。

NTTドコモは4月13日,エリアメールを英,中,韓,スペイン語,ポルトガル語に対応させたと発表した。伝達するのは緊急地震速報と津波警報で,端末の言語設定に応じてメッセージを表示する仕組み。NTTドコモは,(独)科学技術振興機構が公募した戦略的イノベーション創造プログラムで本システムを研究開発した。プログラムは5か年で,2年目の今年度は自治体が発表する情報の多言語化に取り組む。

また,2014年10月に訪日外国人向けに英語で緊急地震速報と津波警報をプッシュ伝達するアプリ「Safety tips」を発表した観光庁も近々に,特別警報や大雨・豪雪警報などを加え,言語も中,韓に対応する機能改善を行う予定だ。

ただ,NTTドコモのアプリはドコモが販売するAndroid OSのスマホのみで,かつ外国人の所持するドコモ以外のスマホは対応していないこと,また観光庁のアプリも,予めダウンロードしてもらうにはどう周知するかなどの課題がある。また,既に在留外国人や外国人観光客を多く抱える自治体では,独自にアプリや速報メールを開発する動きも増えており,同種のアプリが増え続けていくと混乱のもとにもなりかねない。

災害多発国の日本で外国人に安心して過ごしてもらうにはこうした試みは急務である。有事だけでなく観光等の平時にも併用出来る等,外国人により利便性の高いアプリの提供や情報伝達のあり方全体の戦略を検討する段階に来ていると思われる。

村上圭子