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気象庁,緊急地震速報の精度9割目指す

気象庁は7月14日,緊急地震速報の精度を5年以内に,現在の6割程度から9割近くに改善させる目途がついたと発表した。

2004年に試験運用を始めて10年。予測した震度と実際の震度がほぼ一致する割合は,NHKがテレビやラジオを通じて一般への情報提供を始めた2007年以降70~80%だったものが,2011年度は28%にまで低下した。東日本大震災後,余震などが活発化し,同時に起きた小さな地震を大きな地震と判定するケースが多発したことなどが原因だ。気象庁はシステムの改善をすすめてきたが,2013年8月8日にも,和歌山県北部を震源とするM2.3の地震と,同時に発生した三重県沖の海底地震計のノイズを同じ地震の揺れと判断し,関東から九州の広い範囲に緊急地震速報(警報)を発表。NHKをはじめメディア各社は速報するとともに,「すわ!南海トラフ大地震か!」と緊張が走った。こういった状況では,いわゆる“オオカミ少年”となりかねず,防災情報として精度の改善が望まれていた。

気象庁は研究者の提案をうけ,同時に複数の地震が発生した場合でも地震波を分析して震源を精度よく決定できる手法と,巨大地震の際に強く揺れる地域を実際の観測震度からより適切に予測する手法を開発。順次システムに導入して,早ければ2016 年度末にも予報精度を9 割近くに改善できる目途がついたとしている。ただし,これらの改善が行われても,緊急地震速報の不適切な情報発表が全くなくなるわけではない。メディア側も,緊急地震速報の特性や技術的限界を合わせて伝えていく必要は変わらない。

山口 勝