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JASRACの放送使用料包括徴収方式東京高裁が公取委審決を取り消し

音楽を大量に利用する放送での音楽著作権の円滑な処理に向けて,大多数の音楽著作権を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC)は,各放送事業者と締結する包括契約で,包括的な利用許諾,包括徴収による使用料の方式を採っている。JASRACの徴収方式は,放送事業収入の一定割合を毎年の使用料と定め,放送で使用する全音楽中の管理楽曲の割合が反映しない定額方式のため,JASRAC管理楽曲を使う限り放送事業者に追加負担が生じない。

この徴収方式が,放送事業者に追加負担のあるJASRAC以外の楽曲使用を躊躇させ,他事業者の事業活動を排除する独占禁止法2条5項の排除型私的独占行為にあたり,同法3条の私的独占禁止の違反となるか否かについて,2006年にイーライセンスが放送分野の管理事業に参入した際の経緯を巡り争われてきた。

公正取引委員会は,2009年2月, 独禁法違反だとしてJASRACに排除措置命令を出したが,JASRACの請求による審判手続きで,2012年6月,独禁法違反認定の1要件である「他事業活動への排除効果」を否定し,排除措置命令取消しの審決を行った。

これに対してイーライセンスが,審決の取り消し等を求めて,東京高等裁判所に訴えを提起していた。2013年11月1日,東京高裁は,個々の実質的証拠を検討のうえ「排除効果を有する」と認定,これを否定した公取委の審決を取り消し,独禁法違反認定の他の要件の認定判断を行うよう求める判決を行った。なお,本決は上告等されており,最高裁の判断が注目される。

山田 潔