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台風18号の大雨で初の「特別警報」

2013年9月16日,台風18号の接近に伴い,京都府,滋賀県,福井県は,数十年に1度の記録的な豪雨となった。気象庁は,これら3府県の62の市と町に「重大な災害が起こる可能性が著しく高まっている」として,同日午前5時5分,大雨特別警報を出し,「ただちに命を守る行動をとって下さい」と最大級の警戒を呼びかけた。前月末から運用がスタートした特別警報が発表されたのは,これが初めてで,放送各社が速報した。

このうち,NHKテレビは,特別警報の発表直後の午前5時5分,大阪放送局が近畿地方向けに,総合テレビとEテレの画面に「特別警報発表 数十年に一度の災害の危険性」,「特別警報[大雨]市町名」の字幕で速報した。午前5時6分には福井放送局が,やはり総合テレビとEテレで福井県向けに「特別警報発表 数十年に一度の災害の危険性」,「特別警報[大雨]福井県全域」と伝えた。さらに,発表から2分後の午前5時7分,今度は東京の放送センターが総合・Eテレ・BS2波で字幕速報した。全国放送の字幕は,「大雨特別警報 最大級の警戒を 滋賀県・京都府・福井県」と「大雨特別警報 直ちに安全確保 滋賀県・京都府・福井県」の2種類で,これを数秒間隔で交互に繰り返し,2分以上にわたって速報の字幕を出し続けた。テレビの速報に際しては,いずれもチャイム音を鳴らした。

一方,NHKのラジオも,大阪放送局と福井放送局がそれぞれの地域向けにラジオ第1とFMで通常番組を中断して,大雨特別警報を速報した。また,午前5時7分には,東京のラジオセンターから第1と第2,FMで全国向けに第1報を伝えた。

NHKの場合,気象警報は,各地の放送局がそれぞれの地域向けに速報している。しかし,特別警報は,警報発表の基準をはるかに超える異常な自然現象によって,比較的広い地域で大規模災害の危険性が迫っている事態を伝える情報である。そのため,NHKでは,地域放送とともに全国放送でも速報した。NHKでは,大雨特別警報の第一報を速報した後も,特別警報の意味や必要とされる行動を分かりやすく,丁寧に伝えようと努めた。

総合テレビでは,気象災害担当の記者や気象予報士が,特別警報が出された地域では,自治体の情報に従って直ちに安全な場所に避難するか,周囲の状況を確認して,外に出るのが危険な場合には,家の2 階以上に上がったり,がけから少しでも離れた部屋に移動したりして,安全を確保することなどを繰り返し呼びかけた。また,「特別警報は災害の危険を伝える上で,言わば“最後の警報”で,特別警報が出ていない地域であっても,まだ警報の段階だから大丈夫と考えるのは危険です」などと伝え続けた。

16日未明以降は,特別警報が出される前から,京都市を流れる桂川や宇治川,福知山市の由良川,福井県小浜市の北川などが「はん濫危険水位」を次々と超え,流域に避難の指示や勧告が出されていた。特別警報の発表後には,桂川や由良川,北川が,堤防から越流するなどしてはん濫し,多数の住宅が水に浸かる甚大な被害が出た。

重大な危機を伝える特別警報を住民はどのように受けとめ,行動したのか,また,自治体やメディアの対応はどうであったのか,防災・減災のための地道な検証が必要である。

福長秀彦