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「ネット中立性」を巡るFCC対ベライゾンの裁判始まる

インターネット上に提供されるコンテンツを平等に扱うべきか否かを巡るFCC(連邦通信委員会)と通信最大手ベライゾンとの裁判が9月9日,ワシントンのコロンビア特別区控訴裁判所で始まった。規制機関と通信事業者の“ヘビー級”同士の争いに注目が集まる。

「ネット中立性」を巡っては,ベライゾンなどネットサービス事業者が,特定のコンテンツやプロバイダーを優先的に扱う権利を持つと主張する一方で,FCCは,ネット上の全てのコンテンツを平等に扱うべきだとして恣意的な選別に反対している。訴えはFCCが2010年に出した「Open Internet Order(インターネット公開命令)」に対してベライゾンが起こしたもので,裁判初日は双方の弁護士が2時間にわたって,3人の判事の前でそれぞれの主張を展開した。この中でベライゾン側は,FCCはインターネット以前の時代の規制の考え方を事業者に強いており,自由な経済活動の障害になると訴えた。一方FCC側は,お金があるユーザーや企業が特権的にネットの恩恵を受けることは,平等というネット最大の特徴を損なうもので,新規や小規模な事業者の参入を阻むと主張した。

ネット中立性を巡って,FCCは2010年の同様の裁判でケーブル最大手のコムキャストに敗れており,今回の裁判の結果次第では,FCCのインターネット事業者への影響力が大きく削がれることも予想される。ネット時代の規制の在り方を巡る裁判はこのあと数ヶ月続き,判決は来年になるとみられる。

柴田 厚