メディアフォーカス

放送・通信融合時代の視聴覚メディア市場規制見直しで欧州委が公開ヒアリング

EUの行政執行機関である欧州委員会は,放送と通信の急速な融合に合わせて,視聴覚サービス市場に対するEUの枠組み規制を見直すため,利害関係者をはじめ一般公衆からも公開ヒアリングを行うとしたグリーンペーパー(緑書)を4月24日に採択した。

それによると,インターネットにも接続されたコネクテッドテレビがヨーロッパでは4,040万世帯に広がり,2016年には過半数の世帯に普及すると予測されるなど放送と通信の融合が急速に進展していると言う。そのうえで欧州委員会は,この融合がヨーロッパの経済発展やイノベーション,そして文化的多様性などにどのような影響を及ぼすのか調査したいとしている。

ヒアリングは5月から8月末まで実施される。欧州委員会では「EU経済界の国際的競争力の促進」や「メディアの自由の擁護」,「有害コンテンツからの未成年の保護」,「視聴覚障害者のメディア接触の促進」,「EUメンバー国間の技術環境の整備」,そして「メディアの多元性」などについて,視聴覚メディアサービス市場の利害関係者をはじめ広く一般からも意見や要望を募りたいとしている。

EU域内では1989年の「国境のないテレビ指令」や,2007年の「国境のない視聴覚メディアサービス指令」などによって,域内の視聴覚産業の発展と国境を越えた番組の自由な送受信を保障し,そのために域内共通のコンテンツ規制を設けている。欧州委員会は今回のヒアリングを受けてこの規制の枠組みなどを改めて見直すものと見られる。

新田哲郎