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V-Lowマルチメディア放送への参入意向民放ラジオ局の35%が希望なしか未定

アナログテレビ終了後の空いた周波数を利用するマルチメディア放送のうち,V-Low帯を巡っては,基地局などの設備整備を担うハード事業者の姿が見えないまま,既に2011年から全国各地で実証実験が行われている。一方,ソフト事業者のうち現時点で姿が見えているのは,音声優先セグメントをアナログラジオの移行先とするとしてきた民放ラジオ局だが,1月に公表された民放連加盟99局の意向調査では,参入希望が65%という結果に留まった。

この調査を行うにあたっては,民放連が初めてハード整備の試算を提示した。一例をあげると,全国カバー率76%で総額400億円弱,うち民放ラジオ局負担分は約30億円という数字である。しかし,調査の締切り直前にエフエム東京が,ハード・ソフト分離を前提とした場合の伝送料金のみの試算を提示したことから,各局はこうした数字を両にらみで調査に答えることとなった。

また最近では,民放ラジオ局が必ずしもV-Lowにオールジャパンで参入するシナリオにこだわっているわけではない,という総務省情報流通行政局長の発言も鑑み,民放ラジオ局の中では,V-Low参入ではなくアナログFM 移転を模索する動きも出始めている。

一方,災害情報伝達に主眼が置かれた現在進行中の実証実験では,新たなソフト事業者の姿として市町村の姿も浮上してきている。

混迷を極めるV-Lowの絵姿は,今後どう描かれていくのか。今回の民放連の調査で,議論は一歩前に進むのかそれとも更に混迷が深まるのか,注視していきたい。

村上圭子