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台湾,公共テレビ理事選出またも失敗

台湾では,2年余りにわたって空転している公共テレビ理事選出のための審査委員会が1月18日に開かれたが,今回も与野党双方の拒否権行使で大部分の候補が否決され,定員不足で新理事会を発足させることに失敗した。

公共テレビの理事は,行政院(内閣)が推薦した理事候補の審査の際,各党派が議席数に比例した形で推薦する審査委員計15人の4分の3以上が賛成した人物のみ選出される。ところが2008年に国民党の馬英九政権が発足した際,国民党は4分の3以上の審査委員を確保していたため,理事の定数を増やしたうえで自党に近い人物を次々と理事に送り込み,民進党政権時代の理事長や社長を更迭に追いやった。これに対し,その後の補選の相次ぐ勝利で4分の1を超す審査委員を確保した民進党は,国民党に近い人物を新規理事に承認しない方針を打ち出した。現在の理事定員は17人~21人だが,承認された人物は今回の5人を含め計13人にとどまっている。一方,前期の理事は暫定的に続投していたが,既に任期が切れて2年以上が経ち,現在は理事会も開かれていない。

こうした状況に対し,メディアNGOの媒体改造学社は,1月21日から連日行政院の門前で座り込みの抗議活動を実施,当面は理事の定数を減らしてでも,既に承認された理事を早急に就任させるべきと訴えた。一方与党国民党は,今回の選出で野党系の審査委員が5人の候補の承認を拒んだことを「少数の暴力」と批判,承認に必要な票数を審査委員全体の4分の3から2分の1に引き下げようとしており,少数派の尊重を基本理念とする公共放送の精神に反するとの声も出ている。

山田賢一