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なんでもありのバラエティーだが視聴率稼ぎの裏切りは放送倫理違反~BPO・放送倫理検証委員会~

放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は2012年10月4日,日本テレビが12年5月4日に放送したバラエティー番組『芸能★BANG ザ・ゴールデン』で,出演しない話題の占い師を,さも出演するかのように宣伝した問題で,放送倫理に違反するとの意見を公表した。

日本テレビはこの番組で,体調不良によるレギュラー番組の降板や家賃の滞納などで騒がれていたお笑いコンビ「オセロ」の中島知子氏が占い師と同居しており,マインドコントロールを受けているなどの話題を取り上げ,この占い師がさも出演するかのように宣伝した。ラテ欄では,中島氏と同居していた占い師が初めてスタジオ出演し同居生活の全貌を語ると告知。番組の冒頭で「今夜ついにスタジオへ。オセロ中島騒動の占い師が謎の同居生活全貌を激白」とナレーションで謳い,番組途中のCMまたぎのナレーションでも「このあと,オセロ中島騒動,同居占い師がついに登場。衝撃の告白に,スタジオ騒然」と煽りたてた。

ところが,占い師の出演は,はじめから予定されていなかった。代わりに出演したのは,かつてその占い師と同居したことがある別の女性占い師だった。

同委員会が日本テレビから事情を訊いたところ,ラテ欄については「本編を見れば違うことがわかるはずだから,あくまでラテ欄に関しては,このぐらいまでは許容範囲ではないか」との答えであった。占い師が出演しないにもかかわらず,出演するかのように宣伝したことについては,占い師がスタジオに登場すると誤解する人がいても番組を見れば受け入れてもらえると考えていた,一人でも多くの人に楽しんでもらおうとの思いが強すぎて行き過ぎた,など自分たちの過失を認めた。

同委員会は,番組はどうみても視聴者を誤解させるようにしか作られていない,視聴者は占い師が登場すると思いこまされたのは誤解ではなく制作者の狙いであり,故意にやったことを演出の行き過ぎであり過失であったという説明には納得できないとし,「自分たちは視聴者を故意に騙そうとしたのではないし,まさか多くの視聴者がそんなふうに誤解するとは思いもよらなかった,と過失や迂闊であったことを装い,ことの重大性を軽く考えようとしているのではないか」と指摘した。

同委員会は,視聴率アップを狙ったこのような演出は,激しい視聴率競争に直面している他局同業者への裏切りでもあると批判し,「衆目を集めている人物を主たるテーマにし,その人物が出演しないことがわかっていながら,出る出ると手を変え品を変えて煽っておいて,最後に何のオチも工夫もないままに,全然ちがう人物を登場させるのは,羊頭狗肉そのものである。いかに何でもありのバラエティーとはいえ,委員会はこれについては,わざわざ放送倫理を持ち出すまでもなく,非常識だと言わざるを得ない」とし,放送倫理に反したものと判断した。

日本テレビでは,2011年1月放送の「ペットビジネス最前線」報道,2012年4月放送の「食と放射能 飲み水の安全性」報道で,いずれも利害関係者を一般人のごとくに見せて出演させる不祥事を起こしている。

奥田良胤