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放送・経営ともに評価点上昇 「視聴者視点によるNHK 評価委員会」

外部委員による「視聴者視点によるNHK評価委員会」(委員長・谷藤悦史早稲田大学教授)が2011年6月28日,2年目の評価報告書を発表した。同委員会はNHK会長の諮問機関で,視聴者がNHKにどのような期待を持ち,期待がどの程度実現されたかを,視聴者調査や視聴者グループインタビュー,有識者ヒアリングなどで調査し,評価結果をまとめた。

同委員会は「放送の信頼性」と「経営の信頼性」を2本の柱とし,「放送」に関しては「独立性・公正さ」「質の高さ」「役に立つ」「親しまれる」「社会への貢献」の5指標,「経営」に関しては「誠実さ・透明性」「経済性・効率性・効果性」「変化への対応力・柔軟性」の3指標を設定した。

評価は5点評価で,1点は「期待値を大きく下回る状態」,3点は「期待値にほぼ応えている状態」,5点は「期待値を超えた先導的状態」である。

評価によると「放送の信頼性」は3.8で,09年度の3.6より0.2上昇した。「経営の信頼性」は2.7で,09年度の2.5より0.2上昇したが,必要水準の3には達しなかった。

「放送の信頼性」では,5つの評価指標すべてで09年度より上昇しており,「質の高さ」「役に立つ」「社会への貢献」がいずれも4.0で, 緊急災害時の迅速・正確な情報提供,丁寧な取材・制作,放送技術の発展や芸術文化の発展への寄与などが高い評価の理由となっている。

一方「経営の信頼性」では,3つの評価指標のうち「経済性・効率性・効果性」は2.8,「変化への対応力・柔軟性」は2.6で,いずれも09年度より0.3上昇しているが,「誠実さ・透明性」に関しては2.6で09年度より0.1低下した。評価指標のうち,この項目だけが低下しているが,同委員会は「会長人事における経営委員会の対応が視聴者からの評価に影響した可能性がある」「不祥事が引き続き発生しており,様々な施策が再発防止につながっていない」などと指摘した。

同委員会は,市場で取引されていない有形・無形の財・サービスについて,それが市場で取引されると仮定して金銭的価値に換算して評価し,値段をつけるといくらかというCVM調査の結果に基づき,NHKの放送サービスに対する視聴者の支払い意思額(WTP)を試算している。それによると視聴者1人あたり,地上放送は月額1,964円,衛星放送は月額1,268円で,いずれも受信料月額の地上波1,345円,衛星波945円を上回っている。

同委員会は,東日本大震災にともない,公共放送の評価と役割について考察するために,発生から1か月半が経過した時期に,緊急アンケート調査を実施した。調査によれば,震災発生以降最も接触したメディアとしてNHKテレビをあげた視聴者は35.9%で,各メディアの中で最も多かったこと,NHKのテレビ・ラジオ放送やインターネットのポータルサイトや動画サイトに対する視聴者の信頼度に上昇傾向が見られたことなどから,「様々な状況におかれた視聴者に対してあらゆるメディアを活用して必要な情報を届けていくことがNHKの責務の一つである」「今後,緊急事態や災害がどの地域で発生しても報道が継続できるように万全の備えをしておくことが必要である」と指摘している。

奥田良胤