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台湾,アナログ放送終了を半年前倒し

台湾の独立規制機関である国家通信放送委員会(NCC=National Communications Commission)は6月22日,これまで2012年内とされてきた地上アナログ放送の終了時期を,2012年6月末までと前倒しする方針を打ち出した。これは2012年7月末からロンドンオリンピックが始まるため,それまでに地上デジタルのHD放送を見られる環境を整えようとするものである。台湾では2010年のワールドカップサッカーで中継を行った国・地域の中で唯一HDの放送権を購入しなかったため,「テレビ亡国」との批判が出され,これを耳にした馬英九総統が危機感を強めたのが今回の措置の背景にあると言われる。

台湾ではケーブルテレビの普及率が違法受信も含め約85%と高いが,それでもこのままでは来年6月末のデジタル移行後,テレビを見られなくなる世帯数が業界の推計で30万戸以上にのぼる。こうした世帯への対策としてNCCは,行政院(内閣)の同意を得て,12万戸にのぼる低所得者層に対し,地上デジタルを受信できるセットトップボックス(STB)を無料で提供する方針である。しかしそれ以外の世帯は,1台1,000元~5,000元(約2,800円~1万4,000円)のSTBを購入する必要があり,特にHD対応の機器だと値段は高めになることから,政府の中には,一般家庭への補助を求める声もある。

また,地上デジタル放送の魅力を高めるため,メディアを管轄する行政院新聞局では,9億元(約25億円)の予算をかけ,質の高いHDのデジタルテレビ番組制作に補助する方針を示している。

山田賢一